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私とオリヴァーお兄ちゃんは気分転換にでもと外へ出る。
昨日のことで少し荒らされていた庭もオリヴァーお兄ちゃんが魔法ですぐにきれいにする。いつ見てもこれには驚く。一体どのような原理なのだろうか。
そして、最近は少し肌寒くなってきた。夕方だからというのもあるだろう。しかし、上着も着ずに出るのは少しまずかった。風がとても冷たい。
「これを着ろ」
寒さに震えていると、不意に後ろから少し大きめの服が被せられる。
「えっ」
「寒いんだろ」
「あ、ありがとう」
後ろから被せられた服をギュっとする。
『オリヴァーお兄ちゃんの香りだ』
気持ち悪いとは言わないでくれ。わかっている。これが変態のやることだって。しかし、好きな人の服の匂いを嗅いで何が悪い。それにオリヴァーお兄ちゃんだったらこのくらいのことは許してくれる...はず。
最近はあまり暴走せずに、このような細かいことに気を配ってくれる。こちらの方が私としてはキュンとくる。いつの時代でも細かいことに気を配れる男性は、女性に人気があると思う。
「怖いか?」
後ろからオリヴァーお兄ちゃんが声をかけてくる。夕日に照らされている顔はいつもより5割り増しで美しく見える。
「怖...い、のかな?」
まだ実感がわかない。戦いか。乙女ゲームではこの年では魔王化したオリヴァーお兄ちゃんと戦ってたけど。でもあれはゲームの中だから...。戦いなんて無縁な所で生きていたから、どうすればよいかもわからない。
「絶対、足引っ張っちゃうよ」
コートにうずくまり、ポツリともらす。しかし、その声は風でかき消える。いや、消えてくれてよかった。
「絶対に勝とうね」
笑顔を作り、オリヴァーお兄ちゃんに微笑みかける。私の自慢の作り笑顔。しかし、
「そんな笑顔で私をごまかすのか?」
作り笑顔は慣れていたが、最近作ってないからかうまく出来なかったのだろうか?
「本当は怖いのだろう」
「怖いというか、なんというか」
「足を引っ張るのでは、と考えているのか」
「え」
図星。まんまと読まれている。もうオリヴァーお兄ちゃんの前では演技なんて通用しない。図星が恥ずかしいため、何か言い訳を考えていたら不意に抱き締められる。
「怖がらなくてもいい。絶対に私は勝つ」
「うん」
「君を守る」
「うん」
「勝ったら...ちゃんと婚約を結び直さないとな」
頬がカッと赤くなるのを感じる。
『婚約...かぁ』
幸せになりたいな、次こそは。前世では体験しなかった結婚。方式は違うが、他人が家族になるというのは同じ。前世から少し憧れていたもの。
そう、こんな婚約なんて言葉で浮わついているからこそ考えなかった。いや、この世界そんなことないと思ってた。
オリヴァーお兄ちゃんの『絶対に勝つ』という言葉がフラグになるだなんて。
お読みいただきありがとうございます。
更新が遅くて本当に申し訳ありません。
前のような一週間に一度投稿は難しくなりました。でも、暇なときにコツコツ書いて、頑張って投稿します。
ブックマーク登録本当にありがとうございます。
心からの感謝を皆様に!




