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「さ、ここの部屋をどうぞお使いください」


 ルシアンに案内された部屋は埃っぽい廊下や他の部屋からは想像できないくらいにきれいだった。つい先ほどまでいた自分の部屋と変わらない位だ。ここにセシルがいて部屋を変えましたと言われても違和感はない。


「ご親切にありがとうございます」


「いいよ。そんなに堅苦しくしなくて、そういうこと苦手だから。疲れたでしょう紅茶、淹れとくね」


 そう言って彼は部屋にある備え付けの小さなキッチンで紅茶を淹れはじめる。私はソファに座って一息ついたところでルシアンが紅茶をもって向かいの席に座る。


「いただきます」


「どうぞ。君が元いたところの紅茶よりかは不味いかも知れないけどまぁ我慢して」


 正直、あまり紅茶の味には期待せずにただ喉を潤すためにと飲んだが口に含んだ瞬間、上品な味が口いっぱいに広がる。


『こいつ、なかなかやりよる...』


 今まで私が飲んできた紅茶、第2位だ。もちろん1位はセシルの紅茶だが。


「とても美味しいです」


「ありがとう。それで、この部屋の物は自由に使っていいよ。タンスの中とかには最低限の服とかは入ってるだろうし」


「何から何までありがとうございます。明日から精一杯頑張らせていただきます」


「君があそこまで言うし料理、期待しとくね」


「任せてください。あっそれで今日の夕食は...」


「すっかり忘れてた。今日は僕の当番だから、明日からは君が毎日用意してね。でも明日の朝食は僕が用意するし君はゆっくり寝てていいよ。それじゃ僕は行くね、まだ夕食の用意が終わってないしできたら呼びにいかせるよ」


「わかりました」


「じゃあまた後でね」


 彼はそう言うと部屋から出ていった。紅茶があそこまで美味しかったんだから夕食も期待しておこう。そして私は少しこの部屋をまわってみた。いたってシンプルな部屋だった(シンプルといっても王族からしたらであって、普通の人が見たらとても豪華な部屋だ)。部屋を一通り見て、またもう一度ソファに座る。残りの紅茶を飲んでると、誰かが部屋をノックする音が聞こえた。


「はーい、今あけます。」


 そう言って私は扉に向かい、開けてみるが誰もいなかった。


「誰かのいたずらかな?」


 そしてまたソファに行こうとして後ろを振り向いたら...


「キャァァァ!な、なな、なんで」


 そこに立っていたのは魔王だった。正直、あの美しい顔が近くにあると、とてもびっくりする。よく考えてなかったがよくよく考えて見ると超絶イケメンだ。切れ長の黒目にスッと整った鼻、雪のように白い滑らかな肌...。元王族の私は今までたくさんのいい人を見てきたが、この人はさらにその上をいく。


「いきなり大声で叫ぶな。それに何をぼーっと見てる。私の顔に何かついているか?」


「ええ、きれいな目と鼻と唇がついてます」


「それは君にもついているが」


「私にも目と鼻と唇がついていますが、きれいではありません」


「まぁいい。今は挨拶と他の部屋の説明などをしにきた」


「魔王直々にですか」


「何か文句でも?」


「いいえ、全く」


「そうか。とりあえず立ち話もなんだし座ろう。」


 そう言って彼は先ほどルシアンが座っていた席に座る。勝手に部屋の中に入ってきたけどここ、私の部屋になったはずなんだよな。まぁこの城は魔王様の所有物だし、住まわせてもらってる立場だからとかく言うつもりはないが。


「改めて、私はオリヴァーだ。()()魔王をやってる」


()()ですか?」


「まぁな。」


「私はレティア・エナ・サヴィニアです。サヴィニア国の第一王女です。どうぞレティアと気軽に呼んでください。」


「ではレティア、何故この城に来たか、説明してくれるか?」


 私は今まであったことを話はじめた。


「そうか。なかなか大変だったな」


「本当にそうですよ。あの()()()とかいう男のせいで...」


 私の人生めちゃくちゃよ、と言おうとしたところで話をさえぎられた。


「今、()()()と言ったか?」


「ええ、言いました」


「そのリックとはリック・サジアータのことか?」


 驚いた、まさかリックを知ってるとは。やっぱりあの性格の悪さ、いんちきさはさすがの魔王でも知っているのか、そう思ったがどうも違うらしい。リックと言った瞬間、彼の顔が一瞬、ものすごく険しい顔になった。あれはただ事じゃなさそうだ。これはなかなか攻略は難しいかもしれない。


「オリヴァー様もリックのことを知っているのですか?」


「いや、名前を少し聞いたことがあっただけだ。特に何もない」


 嘘おっしゃい。絶対嘘だろ、と思っても言わないでおく。もし、オリヴァー様の怒りにでもふれてここを追い出されたらたまったもんじゃない。


「さ、そろそろ夕食ができる頃だろう。まだ食堂の場所は知らないだろう、ついてこい」


「あ、はい」


 オリヴァー様につられて私も部屋から出る。夕食、そう考えたらものすごくお腹がすいてきた。そういえば転移してからまだ何も食べてない。私はオリヴァー様について食堂へと向かった。






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