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今回もオリヴァー視点となります。

 

 薄暗く、狭い通路を進んでいく。父の持っているランタンの光だけが頼りだ。

 しばらくすると父が止まる。どうやらここから先は行き止まりみたいだ。


「ここになにかあるのですか?」


 すると父は行き止まりの壁に手をかざし、なにやら魔法を唱え始める。


 ガガガッ ガコン


 なにやら大きな音がしたと思い、父の方を見ると―――


「すごーい!開いた」


 壁がなくなり、出たのは、城の後ろに広がる森だった。どうやら森の方は被害がないらしい。

 先程まで寝ぼけてフラフラしながら歩いていたロゼッタが興味深々に森を見ている。昔からあまり外では遊ばせておらず、森で遊ぶだなんてもってのほかだったため、とても新鮮なのだろう。かくいう私はよくこの森で遊んでいたが。


「すごいか?ロゼッタ」


「うん!森って城の窓からしか見てなかったからおもしろい」


 このような状況なのにニコニコ笑っている彼女は今この場では異端だ。しかし、このような状況だからこそ逆に笑っていた方がいいのかもしれない。張りつめていた空気が少し和らぐ。


「この森を進むと小屋があるはずだ。小屋には非常食などもたくさん用意してある。それに今は使われていない馬車も実はそこに残っているのだ。とりあえず今日はその小屋まで進もう」


 先ほど通っていた秘密通路も知らなかったのに、まだこんなものまであったのか。さすが王族だと思う。

 そして私たちは父の言っていた小屋へと向かう。




「ここだ」


 着いた先、目の前には古びた小さな小屋があった。そして確かに隣に馬車と馬が数匹いた。しばらく隠れる場所としてはいいだろう。


「我々がまず先に中を見てきます」


 使用人2人が安全確認のために小屋へ向かうと言う。


「頼んだぞ」


 父の短い返事の後、2人はコクりと頷き、足音を立てずにこっそり小屋に近づいている。

 そして小屋の扉を少し開ける。しばらく中を見ていたと思ったら、顔をこちらに向け、手で大きな丸を作り合図を出してくれた。

 どうやら大丈夫だったようだ。


 私たちも小屋に近づく。そして先ほど、確認をしてくれた使用人が小屋の中へと入った瞬間――――


「グハァ」


 呻き声があがる。まさか中に敵は隠れていたと言うのだろうか。他の使用人たちは私たち家族を囲むようにたっている。


 そして小屋の中から声が聞こえてくる。


「はぁ疲れましたよ。こんなところに隠れようだなんて。城にいてくれたら簡単だったのに」


「誰だ!」


 父が小屋の中にいるであろう人物に向かって叫ぶ。コツ、コツと靴音をたてながら小屋から出てくる。

 出てきた人物はとても見覚えのある、とある国の神官長。私が留学に行っている間に私に魔法をたくさん教えてくれた人物。リックの姿がそこにはあった。


「何故あなたが」


 信じられなかった。とても優しくしてくれた彼が何故このようなことを。


「彼のことを知っているのか?」


「彼は...サヴィニアの神官長です」


「そのような人が何故...」


「お兄ちゃん...」


 私たちは混乱している。ロゼッタは私の服を掴み、震えている。


「何が目的だ」


「目的...決まっているでしょう。オリヴァー、あなたですよ」


「では、私だけを殺してくれ」


「お兄ちゃん!?」


 だってそうだろう。相手の目的が私一人なのだ。だったら私だけを殺せばよい。そして家族を見逃してくれればよい。

 そう思って、家族の前に出ようとした時だった。


「それでも私は息子を易々と敵に渡しはしない」


「父上」


 父が私の前に立ちふさがる。服に閉まっておいた短剣を取り出し、リックに向かって構えている。


「それなら私も。せめて少しでも母らしく」


「母上まで」


「それなら私たちも」


 母や他の使用人も私の前に立ちふさがる。そこにはロゼッタの侍女もいる。


「私にそこまで...」


「あのー茶番終わらせてもらっていいっすか?現実にこんなの見て感動なんて今更ないんっすよ」


 家族や周りの使用人の人たちに感動していたら、いつもと違う口調のリックに遮られてしまった。


「さぁ、リック殿。私たちが相手だ」


「いいでしょう。まとめてかかってきてください」


 皆が構え、戦闘1秒前みたいな雰囲気の時、母が私たちの方を振り返った。


「オリヴァー、あなたはロゼッタをつれて城の方へ逃げなさい」


「母上」


「お兄ちゃん...」


 私も皆が戦ってくれるならせめて魔法で少しサポートでもと思ったがそうもいかないらしい。母は私にロゼッタをつれて城へ逃げてくれと言ってきた。確かにロゼッタは戦うことなんてできない。だからこそせめて城にいた方が発見されやすい。


「でも...」


 でも家族や他の使用人が心配だった。そう言うと母は困ったように笑い、私とロゼッタを抱き締めてくる。


「ごめんね。でも絶対にこの悪い人を倒してくるから。待っててね」


「お母さん...」


 ロゼッタも不安そうだ。私がしっかりしなければ。


「じゃあ、行って。あいつが来る前に」


「わかりました。母上もどうぞご無事で」


「嫌だ、嫌だよ」


「ロゼッタ」


「ロゼッタ様...」


 ロゼッタは泣き出してしまった。すると母はハンカチを出して、ロゼッタの涙を丁寧に拭いてくる。


「ごめんね。ロゼッタ。また会えるから」


「本当に?」


「本当よ」


「絶対に絶対?」


「絶対に」


 そう言うとロゼッタはあまり見たことない強気な顔になった。どうやらロゼッタも決意したらしい。


「オリヴァー頼んだわよ」


 母は私たちを後ろに突き飛ばす。そして魔法で私と家族の間に壁を作った。


「ごめんね。二人とも愛してる」


 母はそう言い残し、次の瞬間戦いが始まった。不安だが、ここで振り返ったところで父と母の願いを無視してしまうことになる。それに、今は戦う術を何も知らない妹、ロゼッタを守ることが最優先である。


「ロゼッタ行こう」


 私はロゼッタと手を繋ぎ、城の方へ向かって走り出した。





本日もお読みいただきありがとうございます。

更新が少し遅くなってしまいました。

本当に申し訳ございません。

次回でやっとオリヴァー視点終わらせられそうです。皆様どうかお付き合いお願いします。

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