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前回に引き続き、オリヴァー視点となります。
あれからどのくらい時間がたったのだろうか。少なくとも1時間以上はたっているだろう。ロゼッタは泣きつかれたのか、今は侍女の膝の上で眠っている。いつもより寝顔が苦しそうなのは見てわかる。
扉の外からはまだ兵士の声が聞こえる。しかし、はじめよりも声が小さくなっているのは聞いていてわかる。何故そうなってしまったのかは考えたくない。
「グハァ」
突然、一際大きな声が聞こえたと思うとすぐにバタリと音がする。あの声は多分―――――――
「エド...」
この国の事をいつも第一に考え、尽くしてくれた近衛騎士団団長エドワードの声だろう。この国最強と言われていた彼。私も昔、今もだが彼によく剣を教えてもらっていた。血の滲むような努力で団長にまで上り詰めた彼。彼の教え方が上手だったため、この国の兵士は皆優秀だった。 だったのだが、それも誰かのせいによって皆―――――――――
殺されてしまったのだろうか?
「ここがバレるのも時間の問題だろうか」
あれからずっと黙っていた父が口を開く。いつまでも強気で、自分の勝利を信じていた父がここまで弱々しくなるとは。
「いつもの父上らしくないです。もっと気をしっかりしてください」
いつもの自信に溢れた、若々しさのあった顔が、年相応のやつれたおじさんの顔に見える。
悔しかった。もっと自分が次期王太子としてしっかりとしなくてはいけなかったのに、父の補佐を立派にしなくてはいけないのに。
「オリヴァー、ロゼッタ、シャール...お前たちは逃げなさい。そして君達、3人と共に逃げてくれ」
「そんな、父上!」
「そうよ、あなた。何を言っているの?」
「殿下、お止めください」
父の発言には正直賛成ではない。無茶だ。せめて、ロゼッタと母は逃げるにしても、私は一緒に戦わせてほしい。周りの使用人だって、母だって賛成してないではないか。
「王として、家族の父親として私は責任を果たさなくてはならない」
「でしたら私だって次期王として」
「それを言ったら私は王妃として」
「私たちは殿下に仕える使用人として」
皆、口々に言い始める。ここは父に折れてもらって全員で逃げなければ、後味が悪くなるだけだ。
「責任なんてどうでもいい。最後くらい私の願いを聞いてください、父上」
今までわがままのひとつ言ってこなかった。父としての責任があるなら、息子の願いを聞くべきだ。
「...」
「父上」
「そうよ、私からもお願い」
母も私に続いて言ってくる。
「私たち、オリヴァーからわがままなんて聞いたことないわ。ここは私たちはオリヴァーの親として願いを聞くべきよ」
「シャール...。そうか私たちはずっとオリヴァーに我慢をさせてたのだな。よし、ここは全員で無事に逃げよう。そしていつかまたやり直せばいい」
「あなた...」
「父上」
久しぶりに両親としっかり話した気がする。和解できて良かった。もし、父がここに残ると言って譲らなかったらケンカになっていたかもしれない。そう、これで良かったのだ。
「こうなったら敵がここを嗅ぎ付ける前に早くこの国から出た方が良さそうだな」
「でも、どうするの?ここから出たら敵にバレてしまうわ」
確かにそうだ。外には敵がいる。レティアみたいに気配遮断魔法が使えればよいが、今私たちの中にその魔法を使える人はいない。
「私しかしらない特別な通路があるのだ。ついて来てくれ」
そんな通路があったのか。とりあえず私たちは父についていく。部屋の奥は行き止まりだ。
「?行き止まりではありませんか」
そう言うと、父はこちらを見てニヤリとする。どういうことだ?父はある壁の一点を指で軽く押した。すると―――
「さらに通路が」
父の触れた壁が横にスライドし、奥に通路が現れる。
「さぁ、進もうか」
父はランタンに火を灯すと、それを持って通路の奥へと進んでいった。そして私たちもそれについて行った。
この時、奥で誰かが待ち受けているかなど私たちは知るよしもなかった。
本日もお読みいただき、ありがとうございます。
1話に長い文章を詰め込むのが苦手なので、オリヴァー視点の話が3話目になってしまいました。
恐らくはあと2話ほどオリヴァー視点の話となります。
もうしばらくお付き合いお願いします(・・;)




