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今回はオリヴァー視点の回想となります。

 

 暗闇の中である人が自分を呼ぶ。


「お兄ちゃん!起きて!」


 留学から帰って1日目。3つ下の妹、ロゼッタは私を起こしにきた。女性らしからぬ力でぐいぐいと引っ張ってくる。


「ねぇ、ロゼッタに魔法教えてよ」


 どうやら、魔法を教えてもらいに来たらしい。教えてあげたい気持ちは山々だが、今はとりあえず眠い。これでも留学中は毎日8時間は寝たのだが、体的には相当疲れていたのだろう。体を起こそうとしても全身が重くて持ち上がらない。

 それよりも今、一体何時だ?


「ロゼッタ様、お止めください。まだ4時ですよ」


 4時...嘘だろ。いつの間にロゼッタはこんなに早起きになったのだ?まだ父と母でも起きてない時間だというのに。いつもなら8時に起こそうとしてもまだ眠いとベッドでうだうだしているではないか。


「なんで?だってお兄ちゃん、留学から帰ったらいくらでも教えてくれるって言ってたもん」


「ですから、まだ暗いので。それに朝食もとられていないようですので、先に朝食を」


 確かに私は留学から帰ったら教えると言ったが、さすがにこんなに早く来るとは思わなかった。それに起きてすぐにこちらに来たのか、どこにそんな体力があるのか。いつもの寝坊助はどこへやら。


「うー、お兄ちゃんの嘘つき」


 膨れっ面をしてこちらを睨んでくる。しかし、元の可愛い顔故か全く怖く思えない。小動物がこちらを見てくる感じだ。それでも自分が騙される分の力はあった。


「わかった、教えよう。しかし、ロゼッタ。まずは朝食とあとあれを忘れてないか?」


 そう言うとロゼッタは、はっとした顔になり


「おはよう、お兄ちゃん」


 と睨むのをやめ、笑顔で言ってくる。この国では挨拶は基本だ。

 ロゼッタは私に挨拶をすると、侍女につられて食堂へ向かう。私も着替えるとすぐに食堂へと向かった。



 ※※※


「今日はここまでな」


「うん」


 朝からみっちりと、かなりの時間、魔法を教えていた。そろそろ疲れてくる。まさか、留学から帰って早々にこんなハードな日だとは。しかし、ロゼッタは全く疲れた様子を見せない。むしろ、教える前よりも生き生きとしている。何故だ。年齢だって3つしか離れていないというのに。


「オリヴァー様、ロゼッタ様、紅茶の用意ができましたよ」


 城の方から使用人が声をかけてくる。うん、今日はこの後グダグダと過ごすことにしよう。父と母にはバレないようにしなければ。時には休息も大事だと、年下のレティアに教わった。幼いながらも意志をしっかりと持ち、ゆとりをもって考えられるレティアは素敵だと思う。そういうところにも私はレティアに惚れたのかもしれない。


「お兄ちゃん、早く行こうよ」


 色々と思い出していたら、ロゼッタによって現実に引き戻される。こちらの顔を覗きこんで少し心配そうに見てくる。


「そうだな、紅茶が冷めないうちに早く行こう」


 ロゼッタにそう話しかけると、嬉しそうに笑う。

 そして、私たちは手を繋ぎ、部屋まで向かった。


 ※※※


 留学から2ヶ月ほどたった。

 あれからほぼ毎日、私はロゼッタに魔法を教えている。そのおかげか、彼女の魔法は日に日に上手くなっていっている。ロゼッタの魔力はそこまで多くないが、上手くセーブしながら使っている。我が妹ながらこの子は天才だと思う。


 そういえば、レティアとの婚約が決まった。どうやら向こうから婚約をしないかと持ちかけてきたらしく、こちらも断る理由がないので、すぐに決まった。これほどうれしいことはない。次にレティアに会えるのはいつだろう。またあの笑顔で笑ってほしいと思う。


 そして、今日も1日はあれよあれよと言う間に過ぎていった。また明日も少しの幸せがあれば充分だと、町の人も幸せに暮らせればいいと、そう思って寝ようとした時だった。


「オリヴァー...様、早く...お...に...げ...」


 一人の兵士が私の部屋に飛び込んでくる。私の部屋に入ってきた兵士は血まみれで、私に逃げるよう伝えると、その場にばたりと倒れこむ。


「どうした、一体何があった」


 ベッドから飛び起き、慌てて倒れた兵士の元へと向かう。まだうっすら意識はあるのか、私が近くに行くと彼は震えた血まみれの手で窓の方を指差した。私は窓へ向かい、外を見てみる。次の瞬間、私の眼下に飛び込んできたのは――――――――




本日も読んでいただき、ありがとうございます!

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