20
「どうしよう」
とりあえず部屋から出る。そして、前回オリヴァーお兄ちゃんと隠れた秘密部屋に行こうと応接室に行く。しかし―――――
「本棚が動かない」
私一人の力じゃ本棚はピクリとも1ミリも動かない。私があわてふためいていると外で大きな音がした。
「兵士を全員配置しろ、この城を捜索するぞ」
どうやら、玄関の扉を突き破ったらしい。
「どうしよう、どうしよう」
どんどん心臓の音は大きくなる。胸に手を当てなくてもわかるぐらいにドクドクいっている。
「なんか...魔法...気配遮断魔法!」
私は落ち着いて気配遮断魔法を唱え始める。そしてちょうど兵士が応接室に来る頃に発動させることができた。
『ギリギリセーフ』
ひとまず安心するが、まだ心臓の鼓動は早いまま。
「隊長。この部屋にはいません」
「わかった」
兵士が2,3人入ってきたが、応接室に隠れる場所もそんなにないため、すぐに捜索は終わった。
『とりあえず、兵士たちがこの城から出るまで待とう』
何分たっただろうか?体感時間では約3時間くらいあった気がする。一旦、外の様子を見ようと扉を開けた時だった。
『リックが何で...ここに?』
シーネスト国を滅ぼしたかもしれない人が何故ここに。それにまさかリックがいるだなんて思わなかった。そこまでして私を殺したいのか。一旦落ち着いた鼓動がまた早く鳴り始める。そしてやっとわかった。朝からの不快感はこれが原因だったと。
「神官長様、特に形跡はありません」
「そうですか。しかし、私も調べたいので、少し周りをみてまわってよろしいでしょうか?」
「大丈夫です。では私も神官長様について...」
「一人で大丈夫だ」
「い、いえ。しかし...」
「私は神官長だ。何かあっても太刀打ちはできる」
「そうですか...では何かあればお知らせください」
外から兵士隊長とリックの話し声が聞こえる。リックがこの城をくまなく探すだろう...。でも、気配遮断魔法があるので大丈夫だと信じたい。それに、気配遮断魔法は使い慣れているため、長い時間使うことができる。それでも一応、バレた用に近くに立て掛けてあった剣をとる。
そしてついにリックが入ってきた。ゴクリと唾を呑む。彼はこの部屋に入ると何故か鍵をしめ、なにやら魔法をかけた。彼の顔は今まで見たことがないくらいに怖かった。悪魔でも泣いて逃げ出すような怖い顔。
『ヒッ』
バレてないはずなのにどうしてか後ろに一歩、一歩と下がってしまう。それと同時に彼は一歩、一歩とこちらに近づいてくる。
「どこまで私を困らせる気ですか?レティア王女」
『バレ...てる?』
いや、おかしい。気配遮断魔法は消えてはいないのに。
「もうすべて知っていますよ。この間もサヴィニアの城に来てましたよね。あなたの初恋の相手、そしてあなたを今匿っているオリヴァー・シーネストと共にね」
『な、何故』
ついに私の目の前まできたリックはなにやら魔法を唱えると気配遮断魔法が消えてしまう。
「そんな...」
「そんなことも知らないのですか?ハァだからバカは嫌いなのだ。私は人の魔法を無効化する魔法を使える」
「それってダメなやつじゃ」
「私は神官長ですよ。これくらい許されます」
「だけど...」
まさか、彼もこんなに数多くの魔法が使えるとは。もうここまで来てしまったら私のなす術なんてない。一方彼は私の考えてる合間にすぐ目の前まで来てしまったら。私の考えてることなどお構いなしに不敵に笑う。
「さぁ、レティア王女。あなたは悪役なのです。さっさと平和のために死んでくださいな」
『悪役って。やっぱり彼は乙女ゲームの事を知ってて』
彼は私を殺そうとなにやら魔法を唱え始める。気持ち悪いものが私にまとわりついてくる。もう私は死ぬのだろうか、そう思った時だった。
「剣...」
私の足元には先程とった剣が置いてあった。なんという幸運だろうか。
『もうこうなったら一か八か』
今までオリヴァーお兄ちゃんに教わった技術を生かし、リックの懐に入る。そして―――――
「クッ」
私の剣は彼の手を切りつけた。
二人のイチャイチャをもっと書くつもりが、全然かけてない...(゜ロ゜)
おかしい...こんなはずでは。




