閑話
今回は閑話なのでまったりとした話です。
時系列は剣術を初めたくらいの時です。
「すもも?」
オリヴァーお兄ちゃんは不思議そうな顔でこちらを見てくる。オリヴァーお兄ちゃんの視線は私の腕の中に注がれている。そして私の腕の中には子猫が1匹いた。
城で飼うことが許可されたので名前をつけようと悩んでいる途中であった。私は少しでも長くオリヴァーお兄ちゃんと会話をしようと少し変わった名前をつけようと考えていた。それでなぜか思い浮かんだ名前はすももだったのだ。
「そう、かわいいでしょ?」
腕の中でくるまっている子猫を持ち上げ、オリヴァーお兄ちゃんにぐいと差し出した。子猫はまわりをキョロキョロしている。
「すももってなんだい?」
すももとは何かと聞かれ、ギクリとする。この国にはそんな果物は存在しない。私は急いで理由を考える。
そもそもこの子猫はすもものような色ではない。ピンクっぽい色であったのならすももとつけられるがこの子猫はオレンジ、黄色っぽい色をしている。だったらあんずの方が色が近いからいいかもしれない。
「じゃあやっぱり、あんずにする」
「あんず?」
もちろん、あんずもこの国には存在しない。
「あんずって言うのはオレンジと黄色の混ざった感じの色の果物のことで、前にどこかの人がくれたの」
王族となれば他国との交流で様々な食べ物や文化等が入ってくる。その内のひとつにあんずがあったと言ってもおかしくはないだろう。
「じゃあすももも果物の一種?」
「そう、ピンクっぽいやつ」
「いいね、いつか私も食べてみたいよ」
『ごめんね、その果物はいつ食べれるかわからないし、多分生きてる間には見ないと思う...』
前世では食べていたのでまた食べたいと思うが、そもそも種がない。そして育て方もまったくわからない。唯一栽培できるものと言ったらミニトマトくらいだ。しかし、ミニトマトはこの国にも似たようなものがあるので意味がない。
「これからよろしくね、あんず」
「え、名前あんずでいいの?」
オリヴァーお兄ちゃんが子猫をあんずと呼びだしたので驚いた。気をひくために名前を変なのにしてたのであって本当につける気はなかったのだ。そう、他の名前は例えばイエローだとか...。いや、だって黄色だし。
「いいよ、なんか愛着わいてきたし」
そう言ってオリヴァーお兄ちゃんが腕を伸ばし、私の腕の中にいる子猫を撫ではじめた。子猫は気持ちよさそうに喉をゴロゴロならしている。
「あんず、これからよろしくね」
こうして、子猫のあんずがこの城で暮らすことになった。
しかし、一週間後―――――――
「もう一匹子猫拾ったの」
私の腕の中にはまた違う、赤っぽい毛の子猫がいた。家族に話したらまた城で飼うことに許可をもらえた。
「名前は?」
「次はオリヴァーお兄ちゃんが決めていいよ」
前回のあんずは私の案なので次はオリヴァーお兄ちゃんに決めてもらう。多分、私は薄々気づいてたけどネーミングセンスないし。
「じゃあすももで」
「え?」
「すももってピンクっぽいんでしょ。この子赤っぽい色してるけどいいと思う」
「本当に?」
そう言うとオリヴァーお兄ちゃんは私を見てニッコリと笑う。
この城にもう一匹、子猫が増えたのだった。
※※※
「何を見ているんだい?」
振り向くと後ろにオリヴァーお兄ちゃんが立っていた。不思議そうにこちらを見てくる。
「猫がいるの」
そう言って私が指を指した方向には茶色の毛の猫がいた。
「本当だ」
「懐かしいよね。昔、オリヴァーお兄ちゃんがうちに来たときにすももとあんずが来たんだもんね」
「2匹ともまだ元気?」
「私がいたときはまだ元気だったし、今も元気だと思うよ」
あれから2匹ともすっかり年をとったが、まだまだ元気だ。たまーに料理人が料理で余った魚のはしくれをあげているのを私は知っている。なんだかんだみんな猫を可愛がっているのだ。
「この猫に名前をつけるなら?」
オリヴァーお兄ちゃんがニヤニヤしながら聞いてくる。これはなんて答えるのが正解なのだろうか?
「うーん、チョコとか?」
「チョコ?チョコは私でも知っているな」
ちょっと簡単すぎたか。オリヴァーお兄ちゃんはちょっと不満そうに言ってくる。なんだ、そんなにヘンテコな名前を期待していたのか。
「じゃあキウイ」
「それでこそレティアだね」
話している最中に猫はどこかに行ってしまったようだ。ちょっと触りたかったけど仕方ない。変な虫とかもくっついてるかもしれないし。
「さ、剣術の練習はじめようか」
そう言われて私たちは剣術の練習をはじめた。
書いてて意外と楽しかったので、またちょこちょこ書いていきたいと思います。




