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△月◻️日
今日から隣国、シーネスト国の王太子が留学のため、この城で数ケ月過ごすことになった。名はオリヴァー・シーネスト。年齢は9歳。レティアの2つ上、ルチアの4つ上だ。とても礼儀正しくしっかりとした子だった。魔法の才能にとても優れており、魔力量も誰よりもずば抜けて高かった。ルチアは人見知りなので近づかなかったが、レティアとは仲良くやっていきそうな感じがした。何せ、会ってから数十分後には2人で手を繋いで遊んでいた。シーネスト国の王太子であるオリヴァーとうちのサヴィニア国のレティアが婚約したら2国間の繋がりはさらによくなるのではないだろうか?2人の仲がいいからそれも良いかもしれない。
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△月◯日
オリヴァーが来て2日目。昨日来たばかりだったのに、もうレティアと打ち解けたらしい。今日は朝からレティアと庭で遊んでいたらしい。子供とはすごいものだ。一緒に遊んでいてレティアも彼を嫌っていないようだから、これは本当に婚約するかもしれない。シーネスト国の鉱石はとても貴重で美しい物だから是非とも交流をもっと盛んにして我が国にも取り入れたい。
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△月☆日
今日は朝から神官長になったばかりであるリックに大事な話があると言われた。聞いてみると近いうちにシーネストは滅びる運命にあると言うらしい。本当だろうか?それに我がサヴィニア国も10年少し先くらいにシーネスト国の王太子であるオリヴァーに滅ぼされるらしい。どういうことだ?今のうちにオリヴァーを殺しておけばサヴィニア国が滅びることはないらしい。全くふざけた話だ。そんな話、信じる訳がない。神官長になってリックは舞い上がっているのだろう。とりあえず、今日の事は聞かなかったふりをしよう。
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×月◻️日
ついにオリヴァーが留学を終え、シーネスト国に帰る日となった。彼を門まで見送りに行こうと城から出た時、庭の影からレティアのドレスが見えた。近づいて行くとなにやら話声が聞こえた。レティアとオリヴァーの声だ。子供同士の秘密の約束でもしているのだろう。私はそっとそばから離れた。オリヴァーを見送ったあと、レティアはポロポロと涙をこぼして泣いていた。それほどにオリヴァーになついていたのだろう。2つ上の少しお兄ちゃんのような彼はレティアにとって、とても善き相手になっただろう。近いうちにシーネスト国へ婚約の話をもちかけようか?図々しいだろうか。
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×月△日
オリヴァーが帰って1日目。レティアはとても悲しがっていた。話を聞くと、オリヴァーと婚約したいと言ってきた。私の予想は外れていなかった。近いうちに婚約させるつもりだったと言うと、彼女はパァと顔を明るくさせ、すぐにプイッとそっぽを向いてしまった。顔が真っ赤だ。とてもかわいい。もう立派なレディなのだな。こんなにも早く婚約が決まってしまうとは。とても嬉しいが、ちょっぴり寂しい気がする。これが親心なのだろうか。
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◻️月☆日
オリヴァーが国へ帰って2ヶ月ほど。シーネスト国がとある誰かによって町ごとすべて滅ぼされた。今日のまだ日が上らぬ時間に急ぎの知らせとして受けたが、まさかこんなことをだったとは。あまりの衝撃に言葉が出ない。リックの言っていた話が本当に起きてしまうとは。それではまさかこの国も...と思ったが、その心配はいらないとリックに言われた。本当に大丈夫だろうか?シーネスト国が滅びたとき、シーネスト国の王族も殺されたらしい。ただ、唯一オリヴァーの死体だけは見つかっていないらしい。うまく逃げ切ったのだろうか?それかまだ見つかってないだけなのか。どちらにしろもうレティアとの婚約は無くなるだろう。レティアに伝えるのはまた今度にしよう。
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◻️月◻️日
レティアにシーネスト国が滅びて、オリヴァーとの婚約が無くなったことを伝えに行こうとするとリックに止められた。何故かと聞くと、レティアはそれを伝えられたら悲しくなるから彼女の中のオリヴァーの記憶を消そうと言うのだ。レティアにはその方がいいのだろうか?でも、この先、他の人と婚約するときにこの記憶はきっと邪魔になるだろうと。私はしぶしぶ了解をしてしまった。後にレティアにオリヴァーを覚えているかと聞いたら『お父様、その方は誰の事ですか?』と返された。オリヴァーには申し訳ないがきっとこれがよかったのだろう。この時、レティアの髪からオリヴァーからプレゼントされた髪飾りが消えた。
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今回は国王の日記の回でした