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プロローグ

 




 今、とある王宮の会議室であることについて話されていた。


「わかった。レティアを明日、暗殺しよう」


「あなた、いくらなんでも!!」


「そうですよお父様!お姉様が一体何をしたって言うんですか?」


「みなさん、落ち着いて聞いてください。先日の神のお告げでレティア様が将来この国を滅ぼす悪になっていると、そしてルチア様を殺すと聞きました。間違っていると信じたいでしょうが今まで私の神のお告げが外れたことはありません。」


「あなたがわざと嘘を言っているという可能性は?」


「そんな!私はただこの国の将来を思って…。私だってあんなに心優しいレティア様がそんなことをするとは信じられません!」


「もうこれ以上はやめてくれ。リーリャ、お前だって知っているだろうリックが言ってきた神のお告げが外れたことがないと。レティアを暗殺することはもう決定した。おい、料理長を呼べ!今日の夕食はレティアの好きなものばかりを作らせよう。」


「っ!そんな!あなたはレティアを愛しているのではなかったの!?」


「愛してはいるがこの国を考えるとそれが一番だ」


「あなたは王族失格よ。自分の家族に情がないだなんて。そんな人に国王はつとまらないわ!」


「私だってつらい。でもこのようにする以外に方法はない」


「いや、嫌よ...嫌よ」


「お母様...」


 扉の向こうでそんな話し声が聴こえる。今、私は部屋の前の扉に張り付いている。しかし、たくさんの兵士がいるため気配遮断能力を使っています。どうやら私は明日暗殺されるらしい。薄々とヤバい気はしていたけど...あれ?乙女ゲームの中ではそんなことなかったけど...え?どうして...?


 ―――――――――――――――――――――――


「お前はここで死ぬべきだ!レティア!」


「何をいってるの?私はこの国の第一王女であり、今はこの国の救世主よ。私に歯向かうことがどうゆうことかわかってるの?」


「お姉様もトウマ様もやめてください。私はなんともありませんから!!」


「ええい!うるさい、うるさい!こうなったらあなたの愛しいルチアと共に死んでやりますよ!」


 一目で王族だとわかるきらびやかな服に身をつつんだプラチナブロンドの髪の女が禁忌の魔法を発動させる。その瞬間おぞましい音と共に爆発がおきる。そして周りの木々をなぎ倒していく。


「ルチアーーーーー!!」


 トウマと呼ばれたその少年は爆発に巻き込まれてぼろぼろになりながらも倒れているルチアのもとに駆け寄る。


「トウマ様...す...みません。私の...せいで、こんな...こと...に、本当に...すみま...せん」


最後の言葉は最愛の告白ではなく、トウマへの謝罪。そしてルチアはゆっくりと目を閉じ終には動かなくなった。


「ルチア、ルチアお前が謝ることはない。悪いのはすべてレティアだ。俺がもっとしっかりしていれば...。ルチア、こんなときに言うのは間違ってると思うが俺はお前を愛していた。もっとはやくこの気持ちにに気づいていれば」


そう言ってトウマすすり泣きながら白雪姫の王子のようにルチアに優しくキスをした。その瞬間パッとまぶしくひかる。


「な、なんだ?」


「...トウマ様?」


「ル、ルチアなのか?」


「はい」


「生き返ったのか?」


  するとルチアは微笑み、小さくうなずいた。

  月の光に照らされながら二人はキスをした。


 ~The end~


 (あーー!やっぱり最高!!最後のキスのスチル最高!!)

これは今流行ってる乙女ゲーム『聖なる乙女とキスの魔法』。異世界からきた勇者トウマと共に聖なる力を持つヒロインが魔王を倒しにいくゲームで、旅の途中で二人は愛を育んでいくのだ。その二人と共に魔王を倒すのはルチアの姉妹である第一王女レティアと、王国の騎士団団長。レティアは勇者として召還されたトウマが好きだが、妹のルチアと仲がよいことを知るとレティアはもとからルチアが嫌いだったのでルチアを邪魔しようとするのだ。そして魔王を倒した時に一緒にルチアを殺そうとする。でもトウマに阻止され自爆して死ぬ。そしてルチアとトウマは幸せに暮らすのだ。乙女ゲームではよくある話である。


「さぁ、終わったしお風呂入ろう」


そう言ってベッドから重たい腰を持ち上げ立ち上がろうとした。しかしその瞬間...


「あっ...」


床に散らばっているプリントを踏んでしまい、足を滑らせ後ろに転ぶ…

(危ない!!)

そう思ったが時は既に遅く、テーブルの角に頭を強く打ちつけ意識が遠退いた。

 ―――――――――――――――――――――――


前世の記憶で覚えているのは乙女ゲームの内容と死ぬ直前の記憶だけだ。物心ついたときから記憶はあったから頑張って悪役にならないようにと努力してきたのに。家族だって私を認めてくれたのに。お父様はあっさりと私を切り捨てた。大好きな家族に裏切られた。心にはその思いが深く沈みこんだ。足がいつもより重く感じ、動悸が激しくなる。こぼれ落ちそうになる涙を私は必死にこらえるしかなかった。

 何でこうなったの?神のお告げって何よ。お前、リックって誰よ!乙女ゲームでは出てこなかったでしょ!とりあえず、ある人に相談しようと重い足を引きずりながら自分の部屋へと向かった。

 

「レティア様、おかえりなさいませ。そろそろ夕食のお時間ですよ。なんでも今日はレティア様のお好きなものばかりだとか」

 

  部屋に戻ると私の専属の侍女であるセシルが微笑みながら迎えてくれた。


「聞いてちょうだいセシル。私、明日暗殺されるらしいの...。せっかく頑張ったのに...お父様やお母様に認められたはずだったのに。私は裏切られたの...?」


 自分で言葉にだしてみるとさらに、裏切られたかもという思いがつのる。今までこらえてきた涙がポロポロと出てくる。


「国王様はともかくまさかお優しい王妃様まで...?」


「お母様やルチアは反対してた。でも...多分もうどうしようもできない」


「そもそも何故、暗殺されそうになったのか教えてくださいませんか?」


 セシルは私を落ち着かせようと紅茶をいれ、ソファに座るように促す。私は一旦悲しい気持ちを切り替えて話しだした。


「あの神官長のリックとかいう男よ。今まで怪しいと思ってたのよ。乙女ゲームにはあんなキャラいなかったし。私が頑張って乙女ゲームに出てくる行動を起こさせないようにしようとしても、何故か乙女ゲームに出てきた行動を起こそうとするし。今まで私をどうにかしてお城から追い出そうとしてたけど、とうとう強行手段にでたの」


「あぁリックですね。私も何故あんなにレティア様に悪いことを擦り付けようとしていたのか不思議に思っていました。多分ですけどリックは…」


「そうね、リックは…」


「「前世の記憶持ち!」」


「そういうことだったら今までの行動にも納得がいくわね」


「ですね。しかし、どうしますか?明日、暗殺されては今までの努力が無駄になってしまいますよ」


「でも、勝手に逃げる訳にもいかないわよね」


「では、隠しルートである魔王ルートでもたどってみますか?」


「魔王ルート?何それ?」


「その名の通り攻略相手が魔王なのです。トウマ様とルチア様が協力して倒されるあの魔王です!というかあの一番キュンキュンする魔王ルート、してないのですか!?」


「魔王ルート!!!なんですって!?キュンキュンするところを教えて...じゃなくて、そのルートの話を詳しく聞かせてくれるかしら?」


「あぁやっていなかったのですね...。可哀そ...ゴホン。ご説明いたします。そのルートの初めはルチア様がレティア様にお城から追い出されるところから始まります。ルチア様は路頭に迷いお城のバラ園に隠れます。しかし、いきなり魔方陣が現れルチア様は魔王城に転移してしまって...」


「何それ!?いきなり魔方陣が現れるんだったら私の時、現れなかったらどうするの!私死んじゃうよ!」


「まぁまぁ最後まで聞いてください。魔方陣を出現させる方法はバラ園の中心で″我らの神よ、私をどうかお救いください″とそう言うだけです」


「うーん、なんかキリスト教みたいね。でも何でこんな言葉で魔王の城に繋がるようになってるんだろう?」


「それは...私にもわかりません。ゲームでよくあるご都合主義って訳ですよ。どうしても魔方陣が現れなかったら私がなんとかするので安心してください。こう見えて色々な所に繋がりがありますから」


「ありがとう、セシル。"我らの神よ、私をどうかお救いください"ね。覚えたわ。それじゃ早速準備しますか。セシルも手伝って...て、どうしたの?」


「あ、わわわ。レ、レティア様...」


「え?私がどうかした?」


「ま、ままま、魔方陣が...」


「魔方陣って...うわっ!何これ!」


「な、何故かいきなり出てきて...じ、時間がない!」


「ちょっ、ちょ、どうしよう???」


「もう時間がありません。このノートを持っていってください。私の乙女ゲームの知識、すべてが書いてあります。あと、魔王様は...」


「えっ...何て言ったの?」


 次の瞬間、私は魔方陣に吸い込まれてしまった。


「しまった...間違えて私の料理本を渡してしまった。せっかくこっちで作れる日本料理考えて一生懸命作ったのに...。まぁレティア様に喜んでもらうために考えたものだからいいんだけど、レティア様、料理作れるっけ?」


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