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16章 インテ実習棟 秘密の出来事

学校には特別教室としてインテリア製図室の他に

インテリア実習棟が在った。


学校敷地の東北に位置し一般校舎とは完全に独立した 

ある種の「治外法権」でインテリア科の教師と生徒だけの

「聖域」でもあった。オマケに一般教師は近づけないから天敵の

生活指導の鬼「K森」が乱入する危険もなく安全で居心地の良い場所。


実習棟は 中央の広い廊下の左右に普通教室が3室ぐらいの

合計6室分ぐらいのスペースがインテリア実習棟だ。


ここにインテリアに関する資料が置かれ 

他に実験や家具がモデルルームのように展示されたり 

カーテンやソファーの生地見本に布地や革が大量に保管してあったり 

ナゼか不明だが暗室までもが存在する。


インテリアと暗室なんて関連付け難いが照明器具と

カーテンの関係を実験するためのものらしい。

併せて室内音響を体感するためだろうか完全な防音状態になっている。


この部屋には お世話になった。


遮音と吸音がしっかりしているから多少の音は外部に漏れない 

ヒロユキと実習を抜け出し「音楽活動」をさせてもらった。


音楽以外にN美を外してのファンクラブの秘密会議?

やギャグのネタ合わせにも勝手に使っていた。


しかし ・・・ある日 別の利用方法で楽しんでいる奴を見かけた。

いや奴等と言った方が正しいのかも知れないが・・・・・


オレとヒロユキは誰にも気付かれずに この防音暗室を使っていたから 

他に誰も使っていない前提で いつものように その部屋に入った。


と その瞬間暗闇の中に うごめくモノがある 

開いた扉からの 灯りでそれが「人」いや「2人の人間」

であるのがなんとなく解った。


扉の脇にある照明のスイッチを手探りで見付けると照明が点いた。

明るく映し出された部屋の隅に同じクラスのカップルで「S」と

「E子」が慌てて身を離して背を向けた。


Sは軟体オタク男だ 1年の英語のテストで13点を取ったことから

「サーティーン」と呼ばれていた。対するE子はお子ちゃまとして有名だ。

どちらかというとパッとしないカップルという位置付けの2人だ。


暗くてハッキリ見えなかったが 2人だけの世界で確かに重なり合っていた。

ヒロユキと無言で外に出て 沈黙を守りながら足早に別の小部屋へ移動する


「おぃ見たかよぉ」「もしかして真っ最中?」

「なんの?」「一歩手前のかぁ?」

「でも脱いでないがぁ」「終わったアトぉ?」

「一部接触かぁ」「どっちの?」

「じゃ やっぱ▲▲▲かぁ!」

「逆に▼▼▼だったかも!」・・・・・・

2人とも「最中?」の2人より興奮しているのは確かで 

他人の秘密を独占した時って こんな快感だとは・・・


将来は芸能レポーターなんかイイかもって考えているオレって 

やっぱりおバカな高校生か。


同じクラスのカップルって一緒にいられる反面 

噂の対象になりやすいうえに破局した時の後味の悪さは想像したくないし 

ましてヘンなトコを目撃された

となると お互いに気まずい。



実習棟の入り口付近にインテリア科だけの職員室があり

実習の時などは割りと自由に出入りが出来た。

一般職員室と違い教師も6人程度と少人数だから

実習の時間帯は留守がちだ・・・


こっそり忍び込んでは 勝手にインスタントコーヒーを飲んだり 

もらい物のお菓子なんかを強奪していた。


立派な「建造物侵入罪」と「窃盗罪」の前科者になっていた 

その「罪」のせいで教師達のブラックリストに堂々と

名を連ねるダーティーなオレだった。


その職員室の奥に資料保管室がある。職員室もそうだが 

保管室も施錠されていないから 

生徒は比較的自由に出入りしていた。


資料保管室には代々の卒業生の作成した建築やインテリアに関する

図面 完成予想パース 設計主旨説明文が保管されていて 

アイディアをパクリ・・・・いや参考にさせてもらった。


偉大なる先輩諸氏に敬意を表しないといけない。


実際この学校の卒業生は業界では重鎮としての地位を

確立している場合が多く 学閥と呼んでも恥ずかしくない 

先輩後輩の絆は あくまでも強固だ。


さすが「百年の歴史」の重みを感じずにはいられない。



資料保管室には代々の「卒業アルバム」も ナゼか保管してある。


制服や髪型の変遷や 誰が「ダサィ」だの「イケてる」だの

時間つぶしには うってつけの資料の宝庫だ。


そして明らかに周囲の展示物とは一線を博す「異様な姿」を

さらけ出している モノがある。「ガイコツ」だ。


学校ではおなじみの理科室に展示してある「骨」の標本だ。

学校で怪談物をやると必ず主役級で登場する「夜の人気者」。


インテリアに骸骨?・・家具 テーブル イスなんかを設計

するのに人体寸法や関節の位置や動きは重要なファクターなのは

言うまでもない。


ヒザやヒジの位置と座ったときの目線の位置から設計は始まり

視覚的に捉えられる要素 そして それら総てが

インテリア設計となるからだ。


このガイコツをアイディア溢れるデザイナーの卵達が放置しておく訳はない

それにいち早く着目したのが「T美」だった。


クラスで「闇の情報部員」的存在としての地位を築いていて 

街を歩いていても絶対に女子高生と認められないぐらいの風格と

ケバさ?を兼ね備えている 陽気なおばちゃんタイプだ。


ヒロユキやオレとも仲が良く 女子の「マル秘」情報は彼女から

もたらされる場合がほとんどだった。


実際「経験」も豊富らしい・・・


以前 保健体育の授業「フリーセックスについて」

で正々堂々と自分の意見をよどみなく 

しかも理路整然と語る彼女に「大人の女」を見る思いがした。


そのT美が密かなブームにしたのが

「ガイコツのオートクチュール」だ。


資料室には数限りない布地や皮革生地が有るのだから 

使わない手はない。


オレとT美は実習中に目で合図を飛ばしてはコソッと抜け出し

「秘密の部屋」で危険な情事を重ねた・・・・・


何度も何度も・・・・


「インテリアデザインもファッションデザインも同じとばかりに 

アイディアをひねり出すのだが 実際のファッションじゃないから 


飛ばしに飛ばす!!

さぞやガイコツ本人は迷惑顔かと思いきや 


表情がない分 より一層 哀れだ。


帽子やスカーフも布地を曲げてピンで留めて 


T市先生風の寂しい頭部を飾り立てる・・・・


スカートも同じ要領で仕立ていく。


実に手際よいしカラフルだ。オレも脇から

「ノーパンじゃヤバィっしょ〜」とか

「外にでたらホラーやネ」などと助言?しつつ作業は続く。


2人とも吹き上げる笑いをこらえるのに必死だった。

ここは防音がしてないから声を上げて笑えない 

それが逆に笑えて笑えて仕方ないその着飾り自体も楽しいのだが 

それ以上の楽しみがある・・・それは・・・


そのまま着飾ったガイコツを放置し立ち去る。

他の生徒や教師達が大騒ぎになり 

その騒ぎ自体と同時に「作品評」の声が密かに気になる・・・・・


当然 教師達も犯人探しに尽力する。 

犯行現場を押さえる以外に方法は無いのだが 

生徒達は少人数グループであちこちの部屋へ移動しながら実習を行う。


入り乱れた生徒達の群れは 誰がどこで何をしているのかさえ

掴めなくなるし教師が実習中に抜け出すことも出来ず

「事件捜査」は難航を極める。


それに気を良くした犯人達の犯行はエスカレートするばかりで 

もう 誰にも止められそうにもない勢いだから始末が悪く

オプションでトッピングまでもが登場してくる。


どこから持ってきたのか カツラやアクセサリーを

持参してドレスアップ 。もう誰もT美を止められない!!


T美が「これ イイでしょぉ」と持ってきたのが

ダルマ形状の「人形」。


「そんなん どこにあったん?」のオレの問い掛けに軽く

片目でウインクして 黙ってガイコツの骨盤の上にその人形を乗せ 


彼女はイタズラな瞳で こう言った「妊娠中!!!」


もう笑いを我慢することなんて不可能。

ガイコツの妊娠に2人して大爆笑!!!


我慢しても 笑いも涙も全然止まらない 

お腹が痛くなっても止まらない・・・


この「持ち込モノ」もブームとなって実習棟の外にも飛び火した。


どこから持ち込まれたのか 元々有ったのか不明だが「シビン」

までもがこの資料保管室に有った。病院などで「尿」を採取する

ガラス製のビンで 取っ手がついているヤツだ。


このシビンを帰り際に誰かのカバンに入れるのだが

入れられた方はたまらない


帰宅してカバンを開くと その異物が顔を出すのだから 

本人もそうだが家族も驚愕と同時にあきれかえり 

失笑するしかないだろう と想像する。


楽しみなのは 翌日の被害者がどんな顔で登校してくるか? 

に集中した。


本当に趣味の悪いイタズラだったが その被害に1番多く

遭っているのが発案した張本人 ヒロユキ その人だった。


理由は簡単に笑って許してくれそうなキャラの持ち主だったのと 

カバンが当時流行していた「マディソンバッグ」だったから開口が広く 

仕込みやすかったからだ。

加害者に1番近いヤツが 1番の被害者だったから 

ヒロユキ本人も笑い飛ばすしかない・・・・


今現在 陽転思考の持ち主になれたのも どんな題材でも 

笑いのネタにしてしまえる特技が身についたのも 

この頃のイタズラ顔の仲間達との切磋琢磨?から培われた。


人生の羅針盤とか処世術という意味で

唯一自慢できる オレの「財産」だ。





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