夏の落雁
雨風に
散らばった花弁は
辺り一面
染め返し
地面の上で
最後を全うする
茶色の干からびた何かに
変化するのを待ちながら
気丈に
その色を主張し続ける
それは良い時間か
それがあるのが当たり前か
白鷺が飛んで
野良猫は笑った
蒸し返しながら
とどまる色は
鼓動を盗むには
簡単な物で
人間の繰り返しなんかよりも
非常に有益な物だった
湿り気
含んだ地面の蒸気は
眠ることを拒んだ人には分からず
差し込む
雲の間から見える光は
他力本願を助長した
苛立ちまでは
持っては帰れぬ
そう言われた
知った顔ぶれ
ぬるま湯に浸かった時間は
決して悪い物では無いが
浸り続ける場所でも無い
夢に出て来た
祖父さんの話は
傷口に塗り薬を広げながら
頭を撫でられる
毎年来る優しさは
夏の落雁