2 死神と呼ばれる少女
生活費分残して…ギリギリか…。
稼いだ金を確認していたが…武器を買う金がないのだ。
「ふむ…やはり作るしかないか…」
自作武器…ワクワクするよね!
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冒険者ギルドを道で挟んだ向かい側。
宿泊所〈ルテホ〉の2階にある一室に、俺は泊まっている。
部屋の中で俺は、ベッドの上であぐらをかいて座り
両手を前に突き出して水をすくうかのような器を作っている。
そこに魔力を集め、集中する。
「転生者の恐ろしさ…見せてやるぜ
《製造》」
俺が造るのは…ハンドガンだ!
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「フッフッフ。ハーハッハッハ!
完璧だ!完璧すぎるぞ俺!」
初めての割に上手くできたと思う。
〈製造〉
これが俺が今回の転生で貰えたチートだ。
最初から順に言っていくと
〈魔力発火強化〉
〈超回復〉
〈製造〉
だ。
〈超回復〉は、その通り
瀕死からでも物凄い速度で回復するチートだ。
魔力リソースはヤバいが…。
〈製造〉は、見たことがある物を造りだす能力だ。
それでハンドガンを造ったが…まぁ、試験運用してみよう。
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ということで、俺は街から北に4km離れた山のふもとにある洞窟にきた。
殲滅クエスト:山賊の全滅
これを受注したのだ。
「俺のハンドガン…うーむ
名前…どうしようかな…。地球で見た銃をモデルにしたけど、改造しすぎたせいで原型止めてないしな…」
困ったものである。
浅はかだが、いろんな銃のいいとこ取りをしたせいだが…外見は変わってない。
変わっていったのは中身だけ。
まるで転生し続けて、元の自分を見失った俺みたいだ。
「転生…リンカーネーション。
これでいいや」
銃に名前をつけて、俺は洞窟に突入した。
…したんだが…。
「なんじゃこりゃ…」
そこは、血溜まりと肉片に満ちた
地獄と化していた。
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「ま、ちょ…山賊同士の争いか?
とにかく急ぐか」
風の向きや、元の反響で大体の構図を把握しながら、広い空間に繋がりそうな道を選び走ってきた。
「ここか!」
そこには…黒い天使がいた。
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「…あなたも山賊の味方…?」
高いトーンで発せられた可愛らしい声。
しかし、その声音には敵意。
目には警戒が浮かんでいた。
黒いパーカーに黒いショートパンツ。
そこから覗く白く細い綺麗な足で女性…とはわかる。
しかし、右手に大剣、腰の両サイトに2本の片手剣、両足の太もものベルトに収められてる計4本のナイフ。
背中には折りたたみ式の大鎌を背負っている。
「いや、俺は山賊の討伐クエストを受けた冒険者───」
「助けにきてくれたか!なかま!」
突如響く男性の声。
どうやら山賊の生き残りらしい。
(仲間…増援が来るのか…ん?)
その山賊はどう見ても俺を見て……いや、ちょいまて。
「誰が仲間だ!俺は冒険者だ!」
「な、何言ってるんだよ!この前も一緒に飲み明かした仲間じゃないか!」
「ちょ、おま、ふざけんなよ!?山賊になった覚えねえよ!」
「嘘つくんじゃ───」
その瞬間、少女の手から投げられたナイフが男の脳を貫いた。
「とりあえず、君も山賊でおっけー?」
「・・・ノーオッケー」
と、言いつつ
右足を半歩後ろに下げ体を捻る。
瞬間、1秒前まで右目が存在していた場所を投げナイフが通過した。
「驚いた・・・今の避けるんだ」
「君の露骨な視線誘導と右手の筋肉の緩み、あとは直感でね」
転生し続けていたら、何人もの暗殺者に出会う。
そうした中で見つけたのさ・・・嘘です、ごめんなさい。
〈魔眼〉で警戒してたからです。
カッコつけました。
・・・ん?あれ?
なんか、あの子怒ってるような・・・。
「へぇ、私に嫌味ったらしく指導どうもアリガトウゴザイマスゥ?」
あ、お怒りのようで。
「〈死神〉の2つ名持ちの私にそこまで言う人、なかなか居ないから褒めてあげる」
「わ、わーい」
よ、喜べねぇ!
「そして喜びに震えて死ね!」
「いやだ!」
と、叫んでいる間に
少女の大剣の間合いに入られていた。
「〈魔力発火強化〉30%!
っぶねぇ!」
強化された身体能力で離れた・・・はずが、なんと回避先に既に大剣を捨てて腰の2本の黒い片手剣で襲いかかってきていた。
俺はあえて下がらずに懐に飛び込み、少女の両手を弾くことで軌道を逸らした。
「なっ!」
「くらえ!」
俺は右手を大きく振り上げ
「〈なんかすごく痛いチョップ〉!」
技名がダサい?
知らんな(ドヤ)
俺のチョップは綺麗に少女の脳天を打ち、少女は倒れた。
気絶・・・を願おう。
最後まで読んでいただきありがとうございます