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冒険者ギルド


俺とルーシーはアルカディアに入ると、すぐ様冒険者ギルドに向かった。

理由?そんな大したものは無いが、情報が集まりそうな所と言えば、冒険者ギルドか酒場しか選択肢が無かったからだ。

しかし今の見た目はただのガキ兄弟なので、酒場は却下ということになり、冒険者ギルドへ行く事になったと言うわけだ。


「なぁ、ルー冒険者ギルドに入ったら絶対絡まれると思うけど、殺すなよ。いくらうざい奴でも殺せば目立つからな」


そうこれはもうお約束なのだ、新人冒険者に絡んで来る古株冒険者…ファンタジー小説にありがちな展開だ。


「むぅ、分かってるよ!」


心底心外だ!というような顔でこちらを見て来るが、ルーシーが手加減してデコピンしても、並みの冒険者など粉々になるのだ、心配するなと言う方が無理な話である。


まぁこんな話実際に体験しなきゃ理解できないけど。


そんなやり取りをしているうちに、冒険者ギルドへ到着した。

冒険者ギルドは聞いた通り、物凄く大きかった、周りの建物が小屋に見えるほどに。

日本にあった高層ビル並みだ、この世界の文明レベルでどうやって建てたのかという疑問は残ったが、異世界には魔法があるんだ、使い方さえ考えれば可能かもしれないと考え、思考を打ち切った。


「じゃ入るか、ルーさっきの約束絶対守れよな」


「分かっているよ、早く入って情報を集めよう!」


冒険者ギルドを目にして少しご機嫌なルーシーに連れられ俺たちは中に入った。


扉を開けて中に入ると、ロビーには如何にもと言う風貌の男女が行き交い、端には簡易的な酒場があった、そこでは昼間にもかかわらず酒に溺れている間抜けが溢れていた。


その他には依頼書が貼ってあるクエストボードや受付嬢が対応してくれる受付所があった、特にその2箇所は冒険者が多く集まっていた。


「日本にいた時読んでいたファンタジー小説や、RPGゲームの場面そのままだな」


「そうなのかい?だからあんまり驚いていないんだね」


「あぁ、そうだ、召喚されて間もない頃の俺なら浮かれてはしゃぎ回っていただろうがな」


俺は拳から血が滲み出るくらい、力強く握りしめ、あの時の事を思い出す。

異世界に浮かれ、勇者だと浮かれ、魔法だと浮かれ、魔王を倒すという壮大な物語に浮かれ…散々な目にあった。

今の俺にあるのは殺意だけだ、そんな浮かれた糞みたいな思いは必要ない。


「十六夜君、ダメだよ自分を大事にしなきゃ、さっその目的の為にも情報収集行くよ!」


「はっ…!うっ、すまないな」


俺はルーシーの言葉を聞き殺意を鎮める、本当に敵わないなと改めて思う、ルーシーがいなければ俺は壊れていただろう。


俺はルーシーに手を引かれながら、他の受付と比べて圧倒的に列が少ない受付へ向かった。

圧倒的にというか、誰一人並んでいない閑散とした受付だ。


そこにいたのは、俺とあまり変わらないであろう年齢の女の子だった。その女の子は月の光の様な綺麗な金髪を後ろで1つに纏め、髪と同じ金色の瞳を輝かせながら、ニコニコと笑いこちらを見つめてきた。


目の前の女の子が放つ不思議な感じに俺が首を傾げると、それに合わせる様に女の子も首を傾げる、その動作に合わせ髪が揺れると人間より長い特徴的な耳が姿を見せた。


そうエルフだ、これもファンタジー小説で必ずと言っていいほど出てくる、おきまりの種族だ。


男女問わずに整った綺麗な顔、その中性的な顔は人形めいた物を感じる。

それともう一つエルフには特徴がある、そうぺったんこなのだ…目の前の女の子もエルフのお約束通り、平らな胸をしていた。


俺がそんな失礼な事を考えているとエルフの女の子が話しかけてきた。


「本日はどの様な御用でしょうか?」


「えぇっと、俺たちはちょっと聞きたいことがあってね」


「聞きたいこと?ですか、どの様な要件についてですか?」


「今この国で話題になってる勇者?について、何か知っている事があれば教えてほしい」


そう、勇者召喚からかなり時間が経っているにもかかわらず、未だに国中勇者の話で持ちきりなのだ、胸糞が悪い。


「勇者様についてですか?」


「あぁ、何か知っていれば教えてほしい、些細な事でも構わない」


「何処にいるかとか分かれば1番いいんだけどね!」


「そうですね、少しお待ち頂けますか?」


「大丈夫だ」「大丈夫だよ」


「それでは少しお待ち下さいね」


そう言ってエルフの女の子は受付を離れ奥に向かっていった。


だがその時俺とルーシーは見逃さなかった、あの女の子が迫害にあっている場面を。


「どけよ!邪魔なんだよ森の雑種が!」


「本当なんで、人間の様な姿をしているんだか、気持ち悪くて仕方ないぜ」


「亜人の癖に、私達より綺麗なんて、ふざけた話だよね」


「人間様みたいに生きてんじゃねぇよ、全く」


余りにもふざけた罵詈雑言や暴力がエルフ少女に降りかかる。

それでもエルフ少女は歩みを止めず奥へ歩いていった。


「ちっ…胸糞の悪いもの見せやがって…」


「落ち着いて、十六夜君」


何故俺はここまでイライラしているのだろうか…



そうか、あの時の俺の姿をあの子に重ねて見ているのか。

それでこんなにも、怒りが湧いて出てくるのか、あぁ!碌でもないな!この国は!屑しかいないのか!



だが同時に不思議に思う、何故こんなにも辛い思いをするのにこんな国で受付嬢なんてやってるんだ?それに何故こんな忌み嫌われてるのに受付嬢になれたんだ?


考えれば考えるほど、疑問が出てくるが、考えていても仕方がない、俺には関係のない事だ。



「お待たせしました、こちらが勇者様たちの情報になります」


俺が勝手に憤っていると、エルフ少女が戻ってきた。


「済まないな、ありがとう」


俺は礼を言いながら渡された資料を読む。

ルーシーも背伸びをしながら頑張って覗き見ている。


「桜花……」


俺はその中で1番殺したいと望んでいた奴の写真を発見する。

そう桜花 康人だ、有栖を辱め嬲り殺しにしやがったクソ野郎、俺は顔を見るだけでどうにかなりそうだった。


「ふぅ…落ち着け俺…」


そうだ、こんな事をしてもあいつを殺せるわけじゃないんだ、今すべき事を見失うな。


「なぁ、これはなんの資料なんだ?」


「これは、召喚された勇者様が冒険者になってから、達成たれた偉業の数々を記述した資料になります」


俺はそう説明され、もう一度資料を読み返す、そこには確かにあいつらが達成した偉業とやらが記述されていた。


曰くーーードラゴンを一刀で斬り伏せた

曰くーーー1人の魔法で迷宮の階層主を消し炭にした

曰くーーー数万の魔物を引き連れ魔族の本拠地を壊滅させた

曰くーー死んだ土地を一瞬で豊かな土地に変えた


など馬鹿げた話が事細かく記載されていた、まぁ勇者の恩恵があれば可能だろうが。

正直言ってどうでもいい、俺には全く関係のない話だ。


そんな事を思いながら、ページをめくっていると1人の男が多数の女に囲まれている写真が目に入った。


「こいつは、確か…喜持きもち悪忌わるいだったか?」


ふざけた名前通り、こいつはかなり気持ち悪い、オークの様に肥えふとり、春夏秋冬汗まみれ、頭は17歳にして禿げ散らかし、大きな眼鏡をかけ、萌えオタでイジメの対象だった。


こいつは俺が兵士に連れて行かれる時、嗤っていやがった糞だ、あの見下した目…嘲笑を貼り付けた醜い顔…忘れるわけもない。


「なぁ、この勇者の後ろに写っているのは家か?」


「はい、勇者キモチ様は、アルカディアの一等地に居を構えております、それと周りにいるのは奥様方だそうです」


「はっ?奥様方?冗談だろ?」


俺は素っ頓狂な声を出しそう問いかける。


「いえ、なんでも奥様方から惚れられ、娶ったそうです、奴隷の方もいらっしゃいますが」


「奴隷だと?」


奴隷。そのなんて事のない一言で俺は顔を顰め、自然に言葉も強くなる。


まぁ確かにあんな気持ち悪い奴に付き従うなんて奴隷で拒否権のないやつぐらいだろう。

それに相手から惚れて結婚ってのもかなり怪しいな、しかも相手の女は狙ったかの様に美人ばかり、それにまだ年端もいかない少女までいやがる、幼女趣味ロリコンか?いやそれなら大人の女を娶ったりしないか…

まぁ糞野郎ってのは確定だが。


思考の泉に浸っているとルーシーに話しかけられ、現実に引き上げられる。


「ねぇ、お兄ちゃん、手始めにここ行ってみよ?前菜は不味そうな見た目だね、気持ち悪いし」


喜持の気持ち悪さは世界共通らしいな。


「そうだな、とりあえず行ってみるか」


「お待ち下さい、これからキモチ様のお屋敷に行かれるのですか?」


情報も手に入ったので冒険者ギルドを去ろうとすると、エルフ少女に呼び止められる。


「ん?そうだけど?なんか問題あんの?」


「いえ…ただ面倒事に巻き込まれたく無ければあまり近づかない方が賢明ですよ…」


そう語る、眉目秀麗なエルフ少女の表情は暗い。


「何故面倒事になると分かるんだ?」


「そ、それは、」


エルフ少女が何か言いかけた瞬間、背後から殺気を感じその場から飛び退く。


距離を取ると、俺はナイフを投げてきた男に視線を向ける。

男はどうやら冒険者の様だ、革の鎧を纏い腰に刺したナイフに手を置いている。まさかギルド内で攻撃してくるとはな、俺は何もしていないと言うのに。


「なんの真似だ?いきなり殺そうとするなんてやけに物騒な奴だな」


「あぁ?お前誰に口聞いてる?自分の立場が分かってないのか?」


男の口調は俺が悪いと断言している様な口ぶりだった。


「は?何言って、」


「やめてください!もうやめてください!この人達は関係ないでしょ!」


俺が言い返そうとすると、俺の声以上の大きさで遮られる。

声の主はエルフ少女だ、今にも泣き出しそうな顔でこちらを見据えている。

最初に見た時の不思議な感じはなりを潜めていた。


「ケハハハハ、おいおい、アーシャ、お前の意見は関係ない、俺はそこにいる男と女に言ってんだよ、それ以上口を挟むな、もし口出しするなら、今すぐにワルイの旦那を呼んでもいいぜ?ケハハハハ」


「そ、それは…」


どうやらエルフ少女の名前はアーシャと言うらしい、それと同時に意味のわからないことまで目の前の中年男は口ずさんだ。

ワルイとは、喜持で間違いないだろう、あの糞とアーシャになんの関係がある?


「おいそこのお前、今なら許してやらんでもないぞ、そうだな〜土下座して、隣の女を差し出せば命は助けてやってもいいぞ?ケハハハハ、俺は優しいからなぁ?あひゃひゃひゃ」


俺が黙ってアーシャと喜持の関係を考えていると、中年男は下卑た笑みを浮かべ血迷ったことを抜かしてきた。


ルーシーを渡せって?死にたいのか?はぁこんな馬鹿ばかりだと流石に疲れるぞ…

あとお前らは女に飢えすぎじゃないか?猿でもそこまで積極的じゃないだろ。


「僕がお前みたいな屑になびくわけないだろ?死にたいの?」


ルーシーはかなりご立腹のご様子、このままやらせればあいつは確実に死ぬだろな…だがここで殺して目立つのは面倒だ、今も十分に目立っているけどな。


「ルー俺がやるから我慢しろ、ルーが手加減しても絶対に粉微塵になる」


俺はお怒りのルーシーを後ろに下げ、俺は一歩前に出る。


「ちっ、糞ガキが、言うことを聞いていれば気持ちよくしてやったのによ、せっかくの上玉だったのに勿体ねぇ、はぁ殺すか、死ねヤァァァァ!」


男はあろうことか真正面から俺に襲いかかってきた、隙だらけにも程がある、この瞬間だけで俺はこいつを100回は殺せる。


「はぁ、1割の半分くらいでいいかな?」


俺はそう独り言を呟きながら、中指を親指にかけ引き絞り、デコピンの用意をする。

何故デコピンなんだって?俺が拳で殴れば絶対に死んでしまうからに決まっているだろう。


「喰らえ!俺のナイフ捌き!」


俺は男のナイフによる斬撃を全て受けるが傷一つ付かない、そしてそのまま俺は引き絞った中指を男の下腹部目掛けて解き放った。


その瞬間ーーー


「がぼげばらたざばが」


言葉にもならぬ声をあげ吹き飛んでいった、男はギルドの壁を突き破り民家の壁を幾重にも巻き込み破壊し尽くした後、白目を剥き泡を吹いて動かなくなった。


【魔眼】で確認したので確実だろう。


下腹部に受けた衝撃で恐らく股にぶら下がってるあれはもう使い物にならないだろうな、いい気味だ、死なないだけ感謝してほしいよ。


「よし、ルー行くぞ」


「はーい!」


俺たちが去ったギルド内は静まりかえっていた、野次馬の冒険者も受付をしていた受付嬢も依頼にきていた商人も皆等しく黙りこみ、顔を蒼ざめさせ2人の人物の後ろ姿を見送っていた。

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