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訓練?2


16日目


その夜俺は1人花園で黄昏れていた、そんな俺を空に浮かぶ綺麗な月が照らす。


「くそ、今日も結局ダメだった…また俺の手足が切られて終わってしまったな、はぁこんな調子でいいのか?」


俺は自分に問いかける、それでいいのか?と。

勿論いい訳がない…だが、さすがに力の差を感じてしまう、比べる相手が悪いのは理解している筈なんだ、だけど納得できていない。

この調子だと明日も今日と大して変わらないだろうな。

1人月を見ながら自虐的な笑みを浮かべていると、後ろから手を回され抱きしめられた。

そんなことをするのは1人しかいない、ルーシーだ。いきなりの事に驚いているとルーシーが耳元で囁いてきた。


「十六夜君、悩んでいるね?僕にまだ一太刀も入れてないからかい?」


「あぁ、流石にくるものがあってな」


「そうか、なら君はどうしたいんだい?もうやめるかい?逃げ出すかい?復讐を……諦めるかい?」


その言葉を聞いた瞬間俺の中で何かが切れる音がした。

そして俺は気づいたら叫んでいた、自分に言い聞かせる様に。


「ふざけるな!諦める訳ないだろうが!あんな事をされておいて今更諦められるほど、俺は人間ができちゃいないんだよ!絶対に復讐は果たす…俺は絶対にお前の訓練を終わらせて、あいつらを殺す!」


その言葉を聞きルーシーは満足そうに笑う。


「ふふふ、そうそう、それでいい、その気持ちを糧に頑張ってくれ、そして誓うんだよ?絶対に成功させるってね?」


「あぁ、分かっているさ」


俺は短く返事を返し、ルーシーに後ろから抱きつかれたまま、暫くの間月を眺めていた。







19日目


あの夜から三日が経過した、俺はあの夜に再確認した復讐心を静かに燃やし、無我夢中でルーシーに攻撃を仕掛けている。

よく復讐は刃を鈍らせるなんて言うが、俺はそうとは思わない、何故ならーーー


「いいよぉ、十六夜君、随分と剣筋が鋭くなってる、そろそろ僕のスピードにも目が慣れてきたかな?うんうん、これなら今日中にでもこの訓練は終わりそうだね」


ルーシーは満足そうに俺の一挙手一投足を見て頷いている。

だがまだルーシーの余裕を剥がすことはできていない。悔しいが俺はルーシーには勝てない、これは変えようのない事実だ、だが一矢報いる事は出来る。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


俺は体の底から雄叫びを上げる、目の前の少女に一太刀を入れるために。


「あははは、おいで!十六夜君!」





どれくらい時間が経っただろうか、どれだけ俺の手足が無くなっただろうか、朝から数える事も億劫になるくらい、ルーシーと闘った。

辺りは既に真っ暗になっている、普通なら眠くなる時間だろうが俺に眠気はやってこない、今の俺は腹に風穴が空いており、その痛みで気がおかしくなりそうだからだ。


「がぁぁ、がっは、ごっほ」


俺は喉から込み上げてくる血を苦しげに吐き出す。


「やっど、グリァで、ぎ、だ、な」


「そうだね、おめでとう十六夜君、この訓練は終了さ、あとごめんよ、まさかあんな事になるとは思わなくて、一瞬本気を出してしまったよ」


そう俺の腹に風穴が空いているのは勿論ルーシーのせいだ、俺は遂にルーシーに一太刀入れる事に成功したが…ルーシーの本気の反撃を受け腹に1発食らってしまい、地面に蹲っている。


俺は【剣聖】と話し合いある方法に出た、それは俺のステータスで耐え得る限界の肉体使用で最速の突きを放つ事だった。

今までのやり方では絶対に無理だと思った俺は、体が潰れることを覚悟して挑んだ。


俺はルーシーとひたすら打ち合い、隙を探った、だがあのルーシーに隙などそうそうない、だから俺はわざと隙を作らせた、方法は簡単だ打ち合っている時に木刀を手放したのだ、そこでコンマ0.1秒程の隙が生まれる、そんな物は普通捉えられないがそこは【剣聖】の技量を信じる、発生した隙を狙いまだ空中にある木刀を掴み腕が壊れる覚悟で突きを行った。

それに意表を突かれたルーシーは防御を行おうとするがこの間合いでは間に合わない、だが絶対に鳩尾に当たる筈だった突きは軌道をそれルーシーの右腕に吸い込まれる、そして残った左腕が俺の腹部を撃ち抜いた、その拳はルーシーのユニークスキル【破壊】を纏っており、少し触れただけで俺の腹に風穴を穿った。


そして今に至るーーー


『よかったですね、死ななくて、それにやっと一撃入れれましたが、随分と狙いが逸らされました、本当に化け物ですね』


【剣聖】の言いたい事も尤もだが、ルーシーにはあの突きが見えていたんだろう、文句を言っても仕方がないさ、今は素直に喜ぼう。


こうして俺は遂にルーシーに一太刀を浴びせ、大量の血液を流し気を失った。今までよく持った方だ。







★★★



「あははは、僕にユニークスキルを使わせるなんてな〜、本当に面白いよ十六夜君は、これからが楽しみだな〜」


そう言いながら艶めかしく微笑むのは大魔王ことルーシーだ、彼女は今気を失った十六夜を自分の膝に乗せている、所謂膝枕だ。


「これなら、僕のあれにも耐えられるかな?あははは、目を覚ましたら試してみようかな〜、十六夜君といればもっと面白いものが見れそうだ」


ルーシーは十六夜の頬を撫でながら怪しく笑い、妄想に思いを馳せる。


「うんうん、そうしよう!これでもっと強くなれるね?十六夜君?ふふふふ」


ルーシーの笑い声だけが無人の浮遊島に木霊する。

こうしてまた夜が更けていく。

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