歪な在り方
やはり語り口調は苦手なのです……
生暖かい目で見てください、お願いします(´⊙ω⊙`)
俺、椎名 達海は『普通』に順応できなかった。
そんな俺が社会というルールから爪弾きにされるのは当然の事だと思う。
初めて俺が普通ではないと感じたのは小学三年生の夏休み。
その日俺は隣に住む幼馴染の女の子と公園に遊びに行っていた、なんて事のない楽しい時間だ、遊具で遊び、鬼ごっこをして、隠れんぼをする。
活発な小学生なら当然の行動、実際に俺もその女の子と遊ぶのは楽しかった。
そして夕暮れ、まだ門限のある俺たちは家への帰路に就いた、手を繋ぎ今日の夜ご飯を予想しながら。
もう少しで家に着くと言うところで、一台の軽自動車が俺たちに向かって突っ込んできた、俺は繋いでいた手を引き女の子を守ろうとした…だが小学生の矮小な力では引ききれなかった。
あと数センチの所で俺は女の子を守りきれず、車の餌食にしてしまったのだ、自分だけがのうのうと生きながらえて。
俺は笑った、笑い続けた、血溜まりに沈みピクリとも動かない女の子を見て。
なんだこれは?と何度も自分に聞いて見たがなんの答えもでなかった、ただわかる事はこの世は弱ければ淘汰されるということだけだった。
普通ならここで泣き喚くだろう、だが俺は笑った、自分の中の歪みを認めるかの様に。
そうして笑い続ける俺に居眠りしていた運転手が駆け寄ってきたが、その時はどんな音も俺の耳には入ってこなかった。
俺は半ば無意識のうちに近くにあったゴミ置場に赴き、捨てられていた包丁を拾い、運転手に走り出していた、ただ殺すという明確な目的を持って。
俺は笑いながら錆びた包丁を運転手の左胸に突き刺していた、何度も何度も何度も繰り返し突き刺した、死んでからも繰り返し突き刺した。
そこからは記憶が曖昧だが、騒ぎをききつけ近寄ってきた野次馬に取り押さえられたのは覚えている。
俺は取り抑えられている最中も笑い続けていたみたいだ、まぁその辺は又聞きしただけでよくは分からないが。
幼馴染の女の子を失ってからの俺は荒んでいった、指針を失ったコンパスの様に。
葬式には出なかった、出る気になれなかった、今思えば俺はあの女の子が好きだったんだろうな。
周りの人たちは俺を憐れみの目で見てきたが鬱陶しいだけだった、どんな言葉を尽くそうと俺が女の子を守りきれず殺した事に変わりは無いのだから。
そして年月が経ち、俺は高校に入った。
中学まで結局友達はできなかった、まぁ当然だろう俺という存在は醜さの塊なんだから。
同族はいなかった、みんな社会というルールに馴染める奴らばかりだった。
そんな中で俺が馴染める筈がない、周りの奴らは俺を悉く避けていた、幼馴染の女の子が死んだ時に笑い続けていたという噂が流れて気味悪がられていたからな。
それに小学生三年生で人を殺したのだ、そんな奴に近づく奴は皆無だった。
だが高校に入って俺の生活は一転。
俺のクラスの奴らは何故かみんな気があったのだ、そして直ぐに友達と呼べるまでになった。
理由は明白だろう、こいつらも俺と同じく中に歪みを持っている。
そして一人の女と出逢った、唯我 桔梗だ、俺の彼女にして全幅の信頼を置けるただ一人の存在。
互いに惹かれ合うまでそう時間はかからなかった、俺と桔梗はクラスのカースト最上位に位置して常に主導権を握れる様な存在になった、それが凄く心地よかった、俺は強いそう思える程に。
昔女の子を守れなかった矮小な存在ではない、今はクラスの誰よりも上の存在、誰にも俺と桔梗には逆らえない。
そう思っていた、こんな事になるまでは。
ある日俺たちのクラスは異世界に召喚された、ふざけた話だと思っていたが、異世界は素晴らしい場所だった、法も無いこの場所は勇者のやりたい放題だったのだ。
強姦、実験、拷問、etc.
何をしても勇者という肩書きで許される無法地帯。
俺と桔梗は歓喜した、この場所ならば俺らの歪んだ欲望が満たされると、そして俺ら以外の奴らも早速好き勝手にやり始めた。
魔王討伐の為に力をつける必要があったが、それよりも優先して俺らは自分の欲望を満たした。
屑?言いたい奴には言わせておけ状態だったが、それも既に言える立場じゃない。
今の俺はただのモルモットなのだから。
今まで語った事は俺が今見ている走馬灯の様なものの一部だ、今の俺の心境と合わさって醜い自分がよく映る。
「いぎゃぁぁぁぁぁぃだぁぁぁあがばぁが」
今俺は切り刻まれている、手足から順番に細々と。
痛い痛い、正気を失いそうな痛みの嵐だ。
あぁ、俺はここで死ぬのか、何故こんな死に方に?
そうか、これは天罰なのか?歪んだ俺への?
女の子を見て笑っていた屑への?
喜持もこんな風に殺されていったのだろうか……
死が近づいてくる、死神の鎌の音がする。
ごめんな桔梗、守ってあげられなくて…
俺はあの時と同じ過ちを犯しながら死んでいく、俺の方がよっぽど屑じゃないか、クククク、アハハハハハ。
★★★
俺が右手に持つ剣が椎名の手の皮を破り肉を裂き骨を割る度に悲鳴があがる。
常人なら聞くに堪えない悲鳴だが、今の俺には最高の歌声に聞こえる。
悲鳴を聞くたびに俺の心が高鳴る、今にも踊り出しそうになる。
素晴らしいBGMだ、刻む作業が捗って仕方がない。
右足と右手は既に刻み終わった、地面にはケルベロスの肉片と混ざった椎名の手足が散らばっている。
次は左足と左手だ、っとその前に唯我を起こしてやる事がある。
「アンク、そいつをここに連れてこい」
「……分かった」
俺はアンクに縛らせた唯我を椎名の隣まで運ばせると、魔法で水を作り顔にぶっかけ強制的に意識を覚醒させる。
「ぶはっ、なっなにがっ?」
先程顔面を蹴ったせいで、少し記憶が混濁しているみたいだな。
「唯我、隣を見てみろ、お前の愛しい椎名がバラバラになってるぞ?」
「えっ?」
俺の声を聞いた唯我は言われるがままに隣に目を向ける。
そこには右足と右手をバラバラにされた椎名の体が横たわっている、まだ死んではいないが顔は絶望に打ちひしがれ髪は抜け落ち、色々と酷いことになっている、恐らく恐怖と絶望そして痛みによるストレスで一気に老けたんだろう。
その姿を見た唯我は絶叫する。
「いやああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!どうしてぇ、どうしてこんな事にぃ」
因果応報だろう、勇者様よ。
「お前らの日頃の行いだろう、屑どもが!なんでお前らみたいなのがのうのう生きて、罪のない人達が死ななければいけない」
今更被害者ぶるのはよせ、お前らは有罪だ。
その命を持って贖罪しろ。
そして地獄に堕ち永遠の拷問にかけられるがいい。
この痛みは死ぬ前の俺からのプレゼントだ、復讐を兼ねたな。
「今からお前の目の前で椎名の残りを刻む、よく見ておけ、大事な人が目の前で惨たらしく殺される様を」
そう言い俺は既に瀕死の椎名の左側に陣取り、勢い良く剣を振り下げていく。
剣術を使う訳ではないので【剣聖】は使っていないが、ルーシーとの訓練で動きが体に染み付いており、そのおかげで無駄なく斬り落とせる。
椎名の悲鳴と唯我の啜り泣く声が耳朶を打つ。
あぁ!なんて素晴らしいハーモニーなんだ。
復讐に取り憑かれた俺には普通なんてなんの価値もない、価値があるのは憎い奴らの絶望だけだ。




