新しい標的〜2
ルーシーとアーシャから勇者の詳しい話を聞くと、必然と新しい標的の名前が分かった。
男女2人組という情報の時点である程度予想はしていた。
俺がいたクラスで唯一のカップルだった、唯我 桔梗と椎名 達海で間違い無いだろう。
教室の中でいつもイチャイチャイチャイチャ目障りな奴等だったな。
2人とも性格は最悪だったが、クラスのカーストランク最上位に位置していた。
そして、俺が衛兵に捕まる前に奴等はこう言っていたな。
『ははっ、ざまぁないねぇ、まっあんな空気みたいな奴どうなってもいいんだけどさぁ』
『あんな、ゴミ以下の奴居なくても何とかなるっしょ、寧ろ捕まってよかったんじゃねぇか?クククク』
あの時は動揺していて、気にする暇も無かったが…今となっては鮮明に思い出せる、あの屑どもの顔と俺に向けて吐き捨てた罵詈雑言を。
「さて、標的は分かった、後はどう殺すかだな」
ーー普通に殺す事は有り得ない。
ーー誰一人として、楽には死なせない。
ーー絶望の底に落としてから、舐る様に殺す。
ーー彼奴らに安寧の死など与えない。
「十六夜君、凄まじい殺気が漏れ出てるよ?」
ルーシーの声で我にかえる。
「あぁ、すまない」
やはり、ダメだ…奴等の事を思い出すとどうしても抑えられない。
こればっかりは、慣れる気がしないな。
「全然大丈夫だよっ、精々街の住人が泡を吹いて倒れるぐらいだろうし」
「……そうか」
初耳だ…喜持の時もそうなっていたのだろうか。
まっ、アルカディアの塵がどうなろうと構わないが。
「十六夜さん、それで今回の計画はどうされるのですか?」
アーシャは特に気にすることもなく、俺に話しかけてくる。
「ん?あぁ、そうだな…」
計画ねぇ…喜持を殺した時に練習した刃物を使いたいな。
足の先から刻んでいくか?いや、手の先か?
カップルなんて言っても赤の他人、死に直面した時の2人の反応が楽しみだ。
「ふふっあははは」
口から不意に笑みが零れる、ルーシーの加護の補正もあって残虐思考に磨きがかかってるな。
「どうやら決まったみたいですね」
「どんな事になるかなぁ、楽しだなぁ」
「あぁ、決まったよ、今回も楽しくなりそうだ。とりあえず彼奴らの動向を監視しよう」
俺らが行ってもいいが、復讐の舞台の準備もある、どうしたものか…
白雪と黒王に頼むか、まだ王城の情報取集の結果を聞いてはいないが。
「白雪、黒王」
俺が名前を呼ぶと同時に2人は俺の前に姿を現わす。
「お呼びですか、ご主人様」
「どうした、主よ」
「お前達にまた仕事を与えたい。勇者2人の動向の監視だ、つまらない仕事だが頼む。あと王城の情報も今回の件と併せて報告してほしい」
俺みたいなガキが、こんな立場になるとは思ってもみなかったな。
日本で普通に高校生やってただけなのに。
「私の使命は、ご主人様の命令を命に変えても遂行する事、どんな命令でもこなします」
「我の忠誠は主に捧げている、なんなりと」
忠誠…ね、俺が魔法で召喚したのだから当然だが。
「では、頼む」
「はっ!」
「了解した」
その言葉を最後に、白雪と黒王は消えた。
やはり、便利な能力だな、俺も使えたら良いんだが。
「さて、準備を始めよう」
2回目の復讐、1回目よりも凄惨に残酷に殺してやろうじゃないか、残りの短い人生を好き勝手に過ごすといい、憐れな勇者達。