新しい標的
少し修正致しました。
アーシャが目を覚ましたのは俺がベッドに運んでから、三時間後の事だった。
「ご迷惑をおかけしました…」
アーシャは俺とルーシーに向かって頭を下げる。
「謝る事はないさ、ルーシーもそのお陰で逃げられたんだし」
「そうだよ、アーシャ気にすることないよ」
俺は気休めで言ってるわけではない、アーシャには心の底から感謝している。
もし聞いた通りの状況でルーシーが逃げていたら間違いなく俺の標的まで死んでいた。
それ程までに勇者とルーシーの力は隔絶している。
「アーシャ、俺は謝らなければいけない」
そう、精霊魔法についてだ。
今言う事ではないかもしれないが…
「アーシャ、君は俺のせいで精霊魔法を失ってしまった…本当にすまない」
俺はアーシャに何と言われようが受け止める所存だ、エルフにとって精霊魔法がどれほどのモノかは分からないが、精霊魔法はエルフにしか使えないのだ、かなり重要なモノである事は容易に想像がつく。
「……十六夜さん、顔を上げて下さい。私はもう気にしていません、私には新しい力があります、それに森の精霊は消えてませんから…私の命が助かったのは十六夜さんのおかげですし」
新しい力…か、精霊魔法の変わりに手に入った新しい魔法。
時空魔法…聞いただけではパッとしないが汎用性が高く恐ろしい魔法だ。
それに命を助けたのは俺の勝手なのに…ルーシーといいアーシャといい俺は本当に恵まれた仲間に出逢えた。
「そうか…ありがとう。アーシャ」
「いえ、こちらこそですよ、十六夜さんっ」
アーシャは少し悪戯っぽく微笑んだ。
「2人でいい感じのところわ!る!い!け!ど!ギルドで起きた話をするよ」
何故かルーシーが少し不機嫌になってしまった、ふむ、女子というのは本当に分からない。
「あっ、その前に、これを」
俺はアーシャに先程まで改造していた銃を渡す。
「俺が【大賢者】と改造した武器だ、あのゴミが使ったものなど使いたくないだろうから、全て作り直している」
「これは、どうやって使うのでしょうか?」
「おぉ、凄いねこれ」
ルーシーとアーシャは不思議そうに俺が渡した銃を見つめている。
「今は使えないが、ここをこう引いて、引き金を引くと、中に装填されてるいる銃弾が弾き出される、詳しい使い方は銃本体に聞いてくれ、魔力を込めると使い手が認定され、使い方を教えてくれる」
ルーシー達が帰って来る少し前に近くの山に試射しに行ったが…辺り一帯を吹き飛ばしてしまった。
想像以上の威力過ぎて驚いたが、アーシャの火力不足を補ってくれる良い武器になってくれるだろう。
火力不足と言っても俺やルーシーと比べると、だ。
普通ならば時空魔法だけで充分な火力がある、まぁ俺とルーシーの復讐対象は勇者と神だ、生半可な火力じゃ厳しい事もあるかもしれん。
「ありがとうございます、大事に使います」
「さて、そろそろいいかな?」
「あぁ、大丈夫だ、さて次の復讐についての会議を始めよう」
★★★
〈ハゲリア邸〉一室
その部屋には昼間変装したアーシャとルーシーに喧嘩を売り、まんまと逃げられた、ハゲリアと勇者である男女2人が話し合っていた。
「おい貴様ら、何のために私が高い金を払って雇ってると思ってるんだっ!このままでは許さんぞ、必ず昼間の女2人を捕まえてこい」
「へいへい、分かったよハゲリア」
「うるさいね、ハゲおじさん」
2人は雇い主に対して舐めた口を聞くが、ハゲリアは言い返せない。
相手は腐っても勇者なのだから。
「絶対に捕らえろ、もし次も失敗すれば、金は払わんぞ」
ハゲリアは睨みを効かせるが勇者2人は特に気にした様子を見せず、部屋を出て行く。
「ちくしょうがぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
ハゲリアしか居なくなった部屋には、ハゲリアの怒りが込められた雄叫びが響き渡っていた。
★★★
〈ハゲリア邸〉玄関
「なぁ、ハゲリア調子に乗ってないか?」
「ハゲおじさんはいつもあんな感じじゃん」
会話しているのは先程ハゲリアの部屋から出てきたばかりの勇者二人組だ。
「まっ、あんな屑でも名前だけは有名だからな」
「そうだよぉ、だから私達も好き勝手にできるんだからっ」
「せいぜい俺達の役に立ってもらおうか、この国に残ってる勇者はもう俺ら以外いないからな」
「うんうん、私達の天下だよねぇ、こんな充実した日々を送れるなんて王様に感謝だよ」
そう語る2人の顔は欲に塗れ、穢れきっていた。