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復讐へ〜喜持編〜

たくさんの人に見て頂けて嬉しい限りです、ありがとうございます。


翌朝、まだ薄暗い時間に起きた俺たちは早々に宿を出て、街中を縦横無尽に走り回り、一枚のビラをばら撒いていた。


内容はこうだーーー


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


勇者キモチは自分の我欲の為に、なんの罪もない少女や女性を脅迫し自分のものにして、毎日毎日快楽に溺れた自堕落な生活を過ごしている。


奴隷も複数所持しており、その資金はアルカディア王家から出ている、つまり国庫から渡されたもので、市民から徴収した税を無駄に消費し、勇者に無駄金を使っているという事。

それは我々市民の働きに対する冒涜だ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


この様に記載した、これを読んだ人はどう思うだろうか?

必然とアルカディア王家と勇者が信じられなくなる、それは当然だろう、自分達の税金が国を良くする為ではなく奴隷購入に使われているのだから。


余程のお人好しでも無ければ必ず暴動が起きるだろうな。


この世界の住人は基本的にあまり裕福ではない、自由に生活できているのは王族と貴族や大商人くらいだ。

そんな境遇でこの案件、不満が溜まっていい感じに荒れるだろう。


「ルーシー、そろそろ紙が無くなる、次のステップだ」


「了解だよ!」


俺とルーシーはビラを全て撒き散らし終えると、姿を変えギルドに乗り込んだ。

こんな物では喜持の悪評は大して広がらないだろうからな、もう一押しだ。




バタンっと勢いよくギルドの扉を開けわざと息を切らせながら、ロビーに倒れこむ。


「た、助けてくれ!妹が、襲われたんだ!」


「お兄ちゃーーん、うっうぁぁぁぁ」


俺から言わせれば三文芝居も良いところだが、他の奴らは信じきっている様子だ。

ギルドの中はビラの件で凄く盛り上がっており、たくさんの冒険者や受付嬢が話し合っていた。

因みに今の俺達は2人とも青色の髪に碧眼だ、見た目だけ弄って体型はいじっていない。


「だ、大丈夫ですか!何があったんです!?」


茶番を続けていると1人の受付嬢が歩み寄ってきた、そうアーシャだ。

昨日戻った時には姿が見えなかったが、今日は居たみたいだ。


金のポニーテールを揺らしながら俺たちを心配してくる、その顔は哀愁が漂っており、何故か凄く惹きつけられてしまった。


「い、妹が!あの勇者に襲われたんだ!体を差し出せって!それで俺は無我夢中で…」


俺は野次馬の冒険者や受付嬢に聞こえるように大きな声で叫ぶ。


「そ、そうでしたか…やはり最低な人ですね…」


アーシャは小声で言っていたが、俺にはバッチリと聞こえていた、やはりアーシャと喜持にはただならぬ何かがある様だ。


「とりあえず落ち着くまで奥の部屋へどうぞ」


そう言ってアーシャは俺とルーシーをギルドの奥にある休憩所に連れて行ってくれた。


「ここは使っていても大丈夫なので、何かあれば呼んでください」


「ありがとう」「ありがとう、お姉さん」


「いえ、お気になさらず」


アーシャはルーシーに微笑み、部屋を後にした。


「よし、これで下準備は終わりだな、後は事実関係を発表される前にあいつを殺して、証拠を出せば、いよいよ、クククク、アハハハハ」


「楽しそうだね十六夜君」


「当たり前だろ、遂に復讐の第一歩を踏み出すんだ、楽しくない訳が無いだろ、それにこれから死んでいくあいつは、死後ただの下衆として歴史に名を刻むんだ、想像しただけで、笑いが止まらない」


そう、今喜持の評判は0を振り切り−になっている、この状況を少し突いてやれば、もうどうなるか分かるだろう。


「さて、そろそろ時間だな、ここには分身体を置いて、俺達は屋敷に行こう」


「了解だよ、えい!よしこれでいいね、なら行こう」


ルーシーは魔力を練り上げ今の俺達と寸分違わない緻密な分身を作り出した。

これで、俺らが居なくなっても不審には思われないだろう。


こうして俺達は部屋の窓から外に飛び出し、ギルドを後にした。




「なぁ、ルーシー、街の様子はどんな感じだ?」


「そうだね、ちょっと待って」


今俺とルーシーは家の屋根を並走している、この方が早く移動できるし、人目に付かないから楽なのだ。


「ふむふむ、良い感じに負の感情が溜まっているね、これは面白い事になりそうだよ」


「そうか、それは楽し、み、ん?あれはアーシャか?」


ルーシーと喋っている時にふと視線を下に下ろすと、ギルドの制服を着たまま一心不乱に走っているアーシャの姿が目に入った。


「この先は…いや、まさかな」


俺は余計な思考を振り払い、目的地に向かって走り続けた。








★★★


アルカディア一等地 〈喜持の屋敷〉


「おい!誰かいないのか!」


「なんでしょうか、ご主人様」


喜持の呼びかけに応えたのは、喜持が所持している獣人の戦闘奴隷だった。


「このビラはなんだ!なんなのだ!誰が俺をこんな風に書きやがった!」


「分かりません、私にはどうする事もできません」


獣人の少女は一切の感情が見えない顔で喜持の顔を見つめ、抑揚のない声で返事をする。


「クソガァ!この役立たずが!クソ!クソ!クソ!」


激昂した喜持は獣人の少女を殴り蹴り、体のあちこちに青痣を作った。

その間少女は虚ろな目で地面を見つめているだけだった。


「はぁ…はぁ…はぁ…なんだってんだよ…もういいぞお前は下がれ、執事長を呼んでこい」


「かしこまりました」


数分暴行した後喜持は獣人の少女に執事長を呼ぶように命令し下がらせ、顔を腫れ上がらせた少女は恭しく礼をし、部屋を後にした。


少女が去った後の部屋では。


「誰がこんなことするんだ…クラスの誰かが?クソ!誰だってんだよぉ!こんな噂が流れれば、もうこの国には居られないか…計画を前倒しにして、アーシャを手に入れ、さっさと出ていくか」


喜持が独り言を呟いていると、部屋の扉がノックされる。


「執事長でございます」


「入れ」


「失礼致します」


優雅な所作で入ってきたのは、白髪のダンディなおじいさんだった。

だがその身のこなしには一切の隙がなく、強者独特の覇気を纏っていた。


「計画を前倒しにする、アーシャの家族を使って早々にアーシャを手に入れろ、手に入り次第、この国を出る、皆にもそう伝えろ」


「かしこまりました」











★★★


アルカディア一等地へ続く一本道、そこを私は無我夢中で走っていた。


その途中、先程ギルドに駆け込んできた兄弟を思い出していた。

あの兄弟は怯えていた、勇者という皮を被った化け物に、オークの様なあの男に…


私が終わらさねばならない、あの男の所業に。


私の中に流れる高貴なエルフの血が熱くなる、使命を前にして熱く滾っている。


「私は、高潔な血を持つ誇り高きエルフ!あの様な人間に屈してなどいられない!」


そう言って自分を奮い立たせていると。


「ん?視線?」


一瞬視線の様なものを上から感じたが直ぐに消えた。直ぐに気のせいだと思い直し、また前へ前へ走り続ける。


その時ふと、先日の金髪の兄弟を思い出した。何故今なのか分からなかったが、あの2人を見ていると凄く優しい気持ちになれた…


「今どこで何をしているのでしょうか、また会えるかな」


その言葉は誰にも聞かれることはなく空に消えた。

少しでも面白いと思って頂けたら、評価やブクマお願いします!

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