復讐計画〜喜持編〜
俺とルーシーは冒険者ギルドを去った後、喜持の屋敷に向かいながら喜持についての情報を集めていた。
そして得られた情報は全て糞みたいな物ばかりだった。
曰くーーー奴隷を買い漁り、家で弄んでいる
曰くーーー気に入った女は非合法な手を使い手に入れている
曰くーーー喜持の屋敷からは毎晩女の嬌声が聞こえてくる
曰くーーー戦闘は全て奴隷に任せている癖に、威張り散らかしている
などなど、碌な噂がなかった、喜持の評判は最悪と言っていいだろう。
勇者の癖に人望が無さすぎる、まぁ糞にはお似合いの評価だよな、モテないからって奴隷を買い漁るってどうなんだ?
度し難いよな本当に…奴隷の女の子達だって、非合法な手で奴隷にされた子ばかりらしいし…
アルカディアは糞の掃き溜めの様だ、一刻も早く消滅させよう。
「ねぇ、十六夜君?今すぐに屋敷に乗り込んだらダメなのかい?」
「確かに今すぐに乗り込んで殺すのは容易い、だが俺は復讐に「潔い死」なんて求めてない、求めているのは絶対的な絶望だけだ、それ以外はダメだ」
「さすが十六夜君だね、なら僕もその意見を支持するよ!」
「ははっ、そうか、まぁ精々苦しめて殺す事にするよ」
俺はニヤリと口角を最大まで引き裂き、これから行う復讐に想いを馳せる。
「さて行こうか、先ずは準備からだ、決行はそうだな…明日の夜にしよう、それまでは復讐の準備と他の勇者やアルカディアの重鎮の情報を集めよう」
「了解だよ!なら早速買い物に行こう!」
「あぁ、そうだな、って待て!ルーシー待ってくれ!今思い出したんだが…」
「どうしたんだい?何か忘れ物でもしたのかい?」
「違う、もっと重要な事だ……俺たち金がない!」
「あぁぁぁぁぁ!本当だ!どうしよう」
俺たちはアルカディアに戻ってくるまで、浮遊島でひたすら訓練していただけなので、金など一銭も持っていないのだ…
くっ…1ヶ月以上もサバイバルしてたからな、金の存在を忘れていた。
「手取り早く稼げる方法は……冒険者ギルド!ってまた戻るのかあんな出方したばかりなのに」
俺は頭を抱えたくなった。
「仕方がないよ!背に腹は変えられないでしょ!」
「あぁ、そうだな、さっさと行って帰ってこよう、準備の時間が無くなってしまう」
「よし!行こう!」
こうして俺とルーシーは冒険者ギルドにとんぼ返りする事になった。
30秒後、俺たちは冒険者ギルドに到着した、少し加減して抑えていた為遅くなったが、本当ならもっと早く走れる。
俺とルーシーはさっさと扉を開け冒険者ギルドに入る、入った瞬間俺たちに視線が集中するが、今は気にしている暇はない。
俺は報酬が高いと思わられる依頼を適当に剥がし、受付に持っていく。
「依頼受領の為に冒険者カードの提示をお願いします」
アーシャがいなかったので他の受付に行くと、こんな事を言われてしまう、もちろん俺たちは冒険者カードなんか持っていない訳で…
「すいません、俺たち冒険者じゃないんですよ」
「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」」」
受付嬢とギルドにいる全冒険者の声が同時に響き渡る、何をそんなに驚いているのだろうか?
「えっと、貴方方はまだ冒険者登録をしていないのですか?」
「えぇ、まぁそうですね、冒険者ギルドに来たのも今日が初めてですし」
「そ、そうなんですか、ではこちらの依頼は受けることができません、こちらの依頼はAランク依頼です、ランクBは無ければ受領できません」
ランクランクってめんどくさいな!倒せるんだから別にいいだろ…
これも異世界物小説に出てくる定番要素だが、冒険者ランクと言うのは実際に体験するとただただ面倒だな…
「そうですか、なら依頼は受けなくていいので、その魔物を狩ってきて、素材だけを買い取りしてもらいます、それじゃ行くぞルー」
「了解だよ!お兄ちゃん!」
「ちょっ!ちょっと!、」
後ろで受付嬢が何か言いかけていたが、俺とルーシーは直ぐにギルドを出て、アルカディアの外へ出る為、最初に入ってきた門に向かった。
門に向かうとそこは兵士で溢れかえっていた、恐らくあの死体の件だろう、まぁ俺たちには関係ないので走って素通りした、俺たちが少し早めに走るだけで一般人や木っ端兵士などには知覚できない。
そして俺とルーシーは数分走ると、依頼書に書いてあった草原へと辿り着いた、そこには依頼の標的である、馬鹿でかい亀が横たわっていた。
「寝てるのか?こんなのイージー過ぎるだろ」
「本当だよね〜、これは僕がやってもいいかい?少しストレスを発散したいんだよ」
アルカディアに入ってからストレス溜まり続きだもんな、それも仕方ないだろう。
「いいぞ、だけど粉々にはするなよ、素材が売れなくなるからな、出来るだけ綺麗に殺してくれ」
「あぁ!任せてくれ、ほいっ!」
「GUGAAAAAAAaAAAAAAAAAAAA」
ルーシーのその一言で巨大な亀は断末魔の悲鳴を上げ生き絶えた、実に呆気ない終わり方だったな、まぁ相手がルーシーならそれも仕方がない。
ルーシーはユニークスキルの【破壊】を使い体の中の組織をズタボロにして殺した様だ、外は一切傷付けず中身だけを破壊する、すごい技量だな、多分俺が【破壊】を使うと全て消し去ってしまうだろう、年の功ってやつかな?
俺は亀に近づき、下から持ち上げる、全くと言っていい程に重さを感じない。
カンストステータスバンザイ。
そんなふざけた事を考えながら俺たちはまた本気を出しアルカディアに向かい走り出した。
帰りは亀を何回か落としたりして、ペースが少し落ちてしまったが、それでも10分もかからずアルカディアに到着した。
亀をそのまま持っていたせいで門では一悶着あったが、冒険者ギルドに納品すると言うとすぐに通してくれた、どうやら魔物の素材は凄く重宝されている様だな。
俺は冒険者ギルドの前に亀を置き、中に入り受付嬢を呼ぶ。
「すいません、外にある亀鑑定お願いします」
「はぁ?何言ってるんですか?さっき出て言ったばかりじゃないですか、それにジャイアントタートルを貴方達見たいな子供が倒してくるなんて無理ですよ」
と文句を垂れながらも、渋々付いてきた受付嬢は外に出た瞬間腰を抜かしその場にへたり込んだ。
「なっ…なっ…本当に、討伐してきたのですか?」
「だからそう言っているでしょ、早く鑑定して下さい、今すぐお金がいるんで」
俺は受付嬢を立たせると、さっさと鑑定しろと急かす、時間は有限なのだ、無駄遣いはできない。
「わ、分かりました、では裏手にある解体場まで運んでください、解体職人の方には話を通しておきますから」
「分かった、ルー行くぞ」
俺は亀を見て怯えている野次馬達を無視して、言われた通りに、亀を担ぎ裏手にある建物に亀を運び込んだ。
この亀はジャイアントと名前に付くだけあってかなり、デカイが解体場と言われたこの建物には余裕で入ってしまった。
そしてそこには解体職人であろう、おっさんがいた、傷だらけの顔や体は歴戦の冒険者って感じがする、恐らく冒険者家業を辞めた後このポストに落ち着いたんだろうな。
「おい、坊主これおめぇがやったのか?」
「いや、運んだのは俺だが、倒したのはこの子だ」
「へぇ、そうかい、いい腕してんな、ジャイアントタートルは外側がかなり硬くて全く攻撃が効かない、内側だけズタズタにして始末するなんて、並みの腕じゃ無理だぜ、アッハハハハハ」
倒したのがルーシーと聞いて解体職人のおっさんは豪快に笑った。
「どれくらいで解体できるんだ?」
「そうだな、5分そこで待ってろ」
「了解だ、ルー大人しく待ってよう」
「わかったよ!」
流石職人だなこんなデカブツ5分で解体すると言い切るとは…相当腕に自信があるんだろう。
俺も解体は覚えていた方がいいか?やり方さえ覚えれば刃物を使わなくても魔法で簡単に出来るかもしれないし。
まぁ、いつ使うかは分からないが…
「よし、終わったぜ」
くだらない事を考えていると、いつのまにかおっさんは亀を解体し終え、俺たちの前に立っていた。
「おぉ、凄ぇな」
俺は綺麗にバラされ、並べられた亀の部位を素直に賞賛した、無駄なく切られた部位は傷一つ無く、おっさんの技量がよく分かった。
「たりめぇよ、これくらい出来なきゃ、解体なんて出来ないぜ、アッハハハハハ」
「そうかい、それで、買い取り額は?俺たちは素材なんか一切要らないからな」
「気になる気になる〜!」
ルーシーも自分で狩った魔物がいくらぐらいになるのか興味があるみたいだ。
「そうだな、金貨50枚って言ったところか?」
金貨50枚と言われても全く価値が分からない…金貨は日本円で言うところの一万円くらいか?
まぁ細かいことはいい、これだけあれば当分は大丈夫だろ。
「そうか、ならさっさとくれ、俺たちは急いでいる」
「おいおい、俺がそんな物持ってると思うか?それはギルドに戻って受付で貰え、じゃあな」
「そうか、それはすまんな、戻るぞルー」
「はーい!」
そうして俺とルーシーは冒険者ギルドへ戻り、先程の受付嬢の所へ向かう。
「お待ちしておりました、こちらが買い取り額である金貨50枚になります、ご確認ください」
「どうも、これで足りれば良いけどな」
「何か仰いましたか?」
「いや、なんでもない、じゃあな、世話になった」
「お気をつけて」
こうして俺たちは2度目のギルドを後にした。
復讐の為の資金も手に入った!後は準備を整えて時を待つだけだ!




