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碧い伝説  作者: パピオカパ
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大航海時代3

艦隊戦の騒ぎが収まってくると次第に状況が分かってきた。

軍港に停泊していたヘレンシア艦隊を襲撃したのは隣国ノグールの艦隊であり、ナグクの駐留軍に常にちょっかいを出しているそうだ。

兵力は少ないものの名将、カールゼン・ネマールヘイム将軍の才によって全く侮れない強敵と化しているそうだ。

実際、兵力で圧倒しているヘレンシア艦隊を手玉に取って見せている。

この時は一難去ったことで世の中豪胆な人もいるもんだなと楽観視したものの、後々とんでもないの存在になってくることには気付かなかった。


自分たちが乗船する船が無事か確認するために埠頭に行くと大勢の人でごった返していて怪我人が抱えられ、死人は馬車に積まれている。

そんな中で大きな声で言い争いが起きている。

今回の派遣軍の表向きの司令官で門閥貴族のローベルと実質的な司令官であるルーベンスである。

話し合いの場には若い男女2人も見える。


「貴様、ここまでコケにされてまだ奴らを放置するか!」

「奴らの根城を叩き潰し、後顧の憂いを払ってから新天地へ出発しようという考えの何処がおかしい!


「確かに一理あります。しかし相手はあのネマールヘイムです。一筋縄では行くはずがない。」

「しかもサンゴ諸島の列強軍は他にもいます。この機にパワーバランスが崩壊し他勢力も参戦し乱戦になる可能性もあります。時間をかけてしまえば尚更です。」

「皆牽制し合ってるのです。元からいる艦隊だけで対処できます。」

「当初の目的通り我々調査艦隊は西へ向かうべきだと私は考えます。」


「ぐぅ、国王陛下直々の指名で無ければ貴様を解任してやれたものを。」

苛立ちながらローベルは馬車に乗る。


若い男性が話し始める

「よろしいので? あーゆう輩は何か企む可能性があります。」

「構うか。今はな。」

「それより迅速な再編成を頼む、ジャンヌ・オヴェルーヌ君。ネマールヘイムがちょっかいを出さぬとも限らぬ。」

「はっ。」

会話はこれで終わるが門閥貴族のローベルは本国で噂になってる通りの人物だった。

一方の司令官はまともで安心した。

もう一方の男女は後々聞いた話しだとナグク総督のオヴェルーヌ公爵の子息らしい。

長男がジャン・ド・オヴェルーヌ、長女がジャンヌ・ド・オヴェルーヌ。

オヴェルーヌ公爵は病で実務退いており、長男が総督府を、長女が駐留軍を仕切っているそうだ。

ただ、気になるのはジャンヌ女史だ。

彼女はヘレンシアで多数派でなおかつ支配層である中性的外見と白色肌、尖った耳を持つエルフーン族ではなく猫の様な特徴を持つルン族であり、長男とは種族が異なるのだ。

独善と差別が当たり前の時代において彼女の存在は興味深かった


そうこうしているとアーネスがやってきた。

話を聞くとどうやら自分たちの船は無事らしい。

アーネスは医学にも明るく負傷者の手当をしていたそうだ。

騒ぎもだいぶ落ち着いて来た頃、調査艦隊の出港が襲撃で2日の遅れがでることが知らされる。

兵隊が魚右往左往する中、私はアーネスとふたりでナグクを回ることにした。


まずは冷めた辛口の食べ物が有名なナグクの料理が食べてみたかった。

ワインやパンや肉を食べ慣れ者にとって全く知らない調味料と食材を使った食べものは、食べていて楽しい反面不安で一杯の複雑な気分にさせるのでいい経験だと思う。


その後、ナガト市街中央にある協会に向かう。

もちろん祈りをやっておこうというのもあるが元々この協会はナグクの民の聖地であるテコルグスカという神殿を破壊して建てられている。

ナグクの民にも改宗したものがこの教会に訪れが、旧来の神を信じる者も教会の端に残った小さい神殿に集まり共に祈りを捧げるなど他宗教施設になっている。

彼らの信仰を考古学的観点で見てみたかったのだ。

アーネスと話してナグクの書物があまりないことから考古学や科学、文学も含めたナグクの本をともに書いて第一人者になってしまおうということだ。

ナグクの民は西の青い光からやって来る神が自分たちに幸福をもたらし、見守りから再び降臨した際に捧げる玉座とも言うべき神殿を作り神を敬い待っているそうだ。


実は世界各地の神話や神の実像は似通っている所があり、神が世界を見守っている点や西もしくは東からやって来るという点がちらほら見られるのだ。

ただ、考古学が本業ではない私は更に深く考察するまでには至らなかった。


そうこうしていると昨日あった女性ルナが祈りを捧げているのを発見する。

祈りが終わり次第声をかける。

彼女もこっちに気づき合流した。

アーネスとルナが自己紹介する。

ルナはこのまま集落に帰るそうなので荷物を肩代わりすると申し出るとアーネスも申し出た。

何も持たなくてよくなったルナは少し手持ち無沙そうだった。

道中アーネスがグイグイ話題を振るのを見てルナの不思議な雰囲気を感じ取ったのか気が出たことに気づく。

負けじと話題を振った時自分も気があることを自覚した。

ルナは二人を見ながらいつになく楽しい旨と言う。


夕暮れ時に集落に着いく。

着くなり集落の見張り番をしている者が「やはり異教徒と気が合うんだな」と言い放つ。

どうやら集落ではルナは異端視されているらしい。

やはりルナは普通のナグク人とは違うようだ。


その後、事情を聞いた彼女の母親が夕食を用意してくれた。

彼女の母親はナグク人だった。

夕食の席で母親が我々がルナに親切にしてくれたことを感謝した。

話の中でルナが捨て子であることを聞かされる。

ルナを発見した母親が集落の反対を押し切り引き取ったという。

ただ話を進めると母親はルナが大陸の民の子かと思っていたらしいが自分達も見たことがない種族だったことからルナ本人含めて不思議がることになる。

真っ白な肌に薄い青緑の髪、特徴のない身体。

全く聞いたことがなかった。

本国に戻り次第調べて手紙で伝えることを約束した。


その後は夕食を交えて会話が弾む。

夕食後は絵が得意なアーネスがルナをスケッチした。

画家なんじゃないかと思えるくらい上手くて笑えた。

母親の好意で泊めてもらうことになった。

真夜中、皆が眠る中起きて用を足して戻る時外にルナがいることに気づく。

出て見ると遠くを見つめていた。

初めて出会ったときと同じだった。

こっちに気づいたルナが声をかける。

「起こしちゃた?」

「全然。」

「そう」

少し間を置いて続ける。

「ありがとう、ここまで親しくしてくれたのはあなた達が初めてだった。」

「うちらは差別には疎いくてね、それに君魅力的だったから。特にアーネスには気をつけろよ。」

彼女はキョトンとした顔をしたあとニコッとした。

「前にも見たけど瞑想のようにも見えるが、何か思うところがあるのかな?」

更に間を置く。

「夜になると誰かがずっと遠くから何かを語りかけてくるように感じるの、時に楽しそうだったり悲しそうだったり…。でも弱くて聞き取れない。」

「どんな声?」

「声というより意思が伝わる感じ…。それに耳を傾けているの。」

不思議な人だとは思っていたがここまで不思議な人だとは思わかなった。

ただ、彼女は真剣そうだった。

「方角はわかる?」

するとルナは淡い青く光る地平線を指差す。

「やっぱり西なのか。」

「実は僕ら、これからあの光る地平線の先を探検しに行くんだ。」

「もし語りかけてくる人を見つけたら紹介するよ」

それを聞いたルナは驚いた表情を見せたあとにこやかに

「ありがとう」

と言った。

そして眠りに着く。

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