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碧い伝説  作者: パピオカパ
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大航海時代(前書き)

この世界には様々な種族の知的生命体が住んでいる。

獣の耳と尾をもつ者、とがったサルの耳をした者、身長が低いもの、角をもつ者、動物のような身体をした者など形態は多種多様である。

中には有史以前の生存競争に敗れたり、民族浄化で絶滅した種族も存在する。

基本的にそれぞれの種族は交配することができず、形態が似ている者同士で稀に子を授かるものもいるがその子が子孫を残せた事例はない。

それぞれの種族は基本的に固まって国やコニュニティーを形成して、互いに交流ことはあまりない。

しかし、種族、部族、民族がモザイク国家を形成したり、複数の種族が集落を形成し、互いの長所を生かし合って糧を得ている者たちも中にはおり、種族間の関係はそこまで殺伐としてはいない。

これらの知的生命体はこの世界が誕生した創世記に神によって作られたと言われる。

世界的に多くの信者を持つ聖協会の基礎、聖書にそれが記載されていて、人々の多くがそれを信じ信仰している。

創世記の内容はこうだ。


青き太陽に住まう神々は汚れ、痩せたこの大地を浄化し、草木を植え、生物を作り、この世界を楽園に作り変え、そこに生きる生命の営みを見守ることを至福にした。

神々は大地に汚れをもたらしていた毒を岩に封じ込め、海岸に捨て、その岩から染み出る毒によって海岸は汚れ、赤く染め上げられた。

神々は人を最後に作り、知恵を授け、人をこの大地の主に据えた。

役目を終えた神々は青き太陽へ帰るも、時折星の箱舟である月に乗り込み、そこからこの大地の生き物の行く末を見守ることにした。


この創世記は、英雄ヨシュアの話を元に書かれていると言われる。

ヨシュアは古代の戦闘国家アクィカの軍神的な大将軍で、西に広がる珊瑚海の国々を攻め滅ぼそうと大艦隊を率いて海渡ろうとしたそうだ。

それが神々の怒りを買い、神風でうち滅ぼされたと言われる。

現在の学説では珊瑚海中央は2月中旬から3月初旬まで断続的に強い東風が吹き、恒常的に流れる強力な海流と合わさって船を果てのない大洋へとさらっていくことがわかっている。(この世界の月は1年で4周する)

ヨシュアの無敵艦隊は、大艦隊だったことが災いし、機敏に対応できずにこの天災をもろに受けてしまったのだ。

ヨシュアの座乗する大戦艦は大洋に流され、そこで神と対面したと言われる。

神はヨシュアに正義を説き、犯した罪に対する罰を受け入れたヨシュアに艦隊と人生を引き換えとして本国に送り返したと言われる。

そして本国に戻ってこれたのは、神の説法が刻まれた黄金板を携え小さないかだに乗ったヨシュアだけであった。

その後悔い改めたヨシュアは聖人の如く民に尽くし、晩年は修道会を開き恵まれぬ者たちを導いたそうだ。

この修道会は後に聖教会の元となり、ヨシュアが伝えた神の思し召しは聖書となった。

特に、ヨシュアを後世有名にし、、聖協会が世に広まった要因は神に与えられた奇跡の御業だと言われる。

その御業は病に伏せた人々をたちまち治し、修道会を危険視したアクィカの大王が放った大軍勢を一瞬で葬ったと伝承にある。

ただ、ヨシュアは神やこの世の成り立ちついてほとんど語ろうとはしなかったらしく、創世記はヨシュアが断片的に語ったことを綱き合わせて書かれてたものと今では考えられている。


それらの逸話が本当なのかどうか定かではなく、私は素直に受け入れることことはできなかった。

私以外の大勢は聖書に書かれた伝説が事実だと受け入れ深く考えはしなかったが、それは言い伝えであって証拠が何一つ存在しなかったからだ。

だからこの世界はどのようにして成り立っているのか、そんことを私は小さい頃から今に至るまで考え続けてきた。


実際、聖書と事実がくいちがっていることがある。

1つ目が神が毒を封ず込めたと言われる岩は世界のほぼすべての海岸から沖合まで無数にころがっている。

人々は悪魔岩と呼び近寄ろうとしないが学者はこれを貝層岩と呼んでいる。

この岩は積層構造をした岩で毒素などは含まれておらず、私はこの岩を砕いて鉢植えの土にして植物を育ててみたが、普通の土と同じように植物は育った。

表面には藻が付着しており、年に数ミリ程度大きくなることから藻がこの岩を生成していると考えられる。

また、積層の年輪から有史以前の時代は今よりもはるかに速いペースで貝層岩が成長したことも分かっている。

2つ目に沖合数十キロまで広がる赤く澱んだ海だがいかにも毒々しく、とても生き物が住んでいるようには見えない。

実際、海岸沿いに生物はほとんどいない。

やっぱり毒なのかと言われればそれとも違う。

この赤い色素の正体は海岸から沖合まで続いて沈殿している、鉄の原料になる赤錆で、人々は魔赤泥と呼んでいる。

あまりにも大量に海中を浮遊しているため、生物が生きるには過酷過ぎるだけなのだ。

その規模は最大で300メートル以上もの厚さがあるが、なぜ海岸に赤錆が沈殿しているのかは、今の科学でも詳しく分かっておらず、貝層岩と関連性があるかも今のところはっきりしていない。

ただ、この赤錆の泥は極めて良質な鉄原料であり、世界の鉄鉱生産のほとんどはこの赤錆の採集で成り立っている。

火山周辺の地下や河川周辺にも鉄鉱石や砂鉄も存在するが、純度やコストに雲泥の差があり、ほとんど利用されることはない。

聖書で毒と罵られる割には生活必需品てしてなくてはならない存在になっているのは皮肉なことだ。

好奇心旺盛な私は科学を探求し続ける傍ら、それらが正しいのか検証し、新しい事実を見つけ世界を塗り替えることを夢見続けている。


そして時に紀元1581年、果てがない思われていた大洋の遠方において巨大な青い太陽が水平線から現れる現象を目撃したという噂を耳にする。

この世界はハルキニア大陸とクァンガ大陸、大小様々の島々からなる珊瑚諸島が内海を囲むように構成されている。

その周りにはとても広い大洋があり、一説には果てがないのではないかと言われていた。

今まで大勢の冒険家がそれを確かめるべく航海に乗り出し、挫折するか行方不明になってきた。

しかし、近年の物理学の発展によってこの大地が太陽のように丸い球体の形をしていることが確実視されるようになってきた。

三角法を用いることで、どこで測ってもこの惑星の半径がおよそ6400km程度であることを導くことができるのだ。

となるとこの大地の広さは有限なので、メソス大陸やサンゴ諸島を西に進んでいけば、いずれはメソス大陸の東海岸に出られるわけである。

ただ計算上、その航路は最大で27000kmもの長さを誇り、今の技術ではとても無謀な航海になってしまうことは簡単に想像出来た。

だが、ここで一つの可能性が出てきた。

27000kmもあるならば、その間に誰も知らない陸地が存在するのではないかという疑問である。

その疑問に答えを出すべく、多くの冒険家が海に繰り出した。

近年、帆船技術が大きく向上してきたことで何千kmもの航海に耐えられる船が作られるようになり、今までより遠方に行って戻って来ることができるようになった。

そこで、冒険家たちは巨大な青い太陽が水平線から顔を出すことを発見したというのだ。

人々はすぐにそれが神々の住まう青い太陽なのではないかと考え始めるようになった。

かくいう私もその青い太陽の正体を知りたくて堪らなくなった。

自然哲学者を目指す私はすぐにでも航海に乗り出したいと思ったものの、危険性、費用を勘案しなければならず、まずは機会やパトロン探しに奔走することになった。

そんな中、操船技術を実習を通して学んでいたところ、国王アルメネス14世が調査艦隊を編成して大規模な航路開拓に乗り出すという報を受けた。

私は航路開拓に何かしらの目処がついただろうことを察し、大学学部長を通してエメバッハ子爵の推薦状を頂いてこの調査に参加することを決めた。

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