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7話:移動型商店

「よし、完成だ」


そう呟きながらフェイトは、自分の手で作り上げた目の前の物体を見上げた。

そしてその堂々たる姿を見て、急いで作った割には中々の出来をしている、と満足する。


今から二週間前、店を買ったはいいが親方達の作業が遅れると聞いて呆然としていたフェイトは、帰り道ある店を見つけた。


木材店だ。

その名の通り木材が売っているその店を見つけた時フェイトは閃いた。



これで小さな商店を作って物を売ればよくないか?

しかも移動ができる奴。



此奴は良い事を思いついたぜっ!と考えたフェイトはテンションの赴くままほいほい木材を買い、商品作りと並行して簡易店作りを始めた。

所詮臨時的な物だから大きくするつもりはないし、簡単なもので良く、だからこそテキパキと簡単に作り進めることができた。


そして二週間が経った現在、それはようやく完成した。


むふー、と息を吐きながらフェイトはこの移動型商店を眺める。

この移動型商店は形としては変わった形の馬車のように見えるだろう。


しかし、これは馬ではなく人が手で引いて運べるように作ってあり、さらに商品を置くためのスペース及び予備の商品を入れる棚を用意した結果、中々個性的な形をする事になっている。


大きさ自体は大したことないからそんなに多くの物を運ぶ事は出来ないが、余分に作り過ぎた物を売り歩くには丁度良いくらいだろう。


早速売りに行こう、とフェイトは何処かウキウキとした心で商品を詰めて行く。


まだこれは余分に作った物ではないが今日くらいは別に良いだろう、なんて思いながら商品を詰め込んでいると、目の隅に見覚えのある影が見えた。


誰だ、と思ってフェイトはそちらへ顔を向けると、そこに居たのは久しぶりに見るリーナだった。


リーナはキョロキョロと周りを見て、何かもしくは誰かを探していたようだが、フェイトの姿を見つけると一直線に此方へやってくる。

どうやら探し物はフェイトらしい。


「フェイトさん!漸く見つけましたよ!一時間近く探したのに見つからないなんて、ここら辺複雑すぎじゃないですか!?」


出会い頭にそう言ってくるリーナにフェイトは思わず苦笑してしまう。


「まあ慣れてないとそうなりますよね。俺も最初は迷ってばっかりでしたし。本当にここら辺は複雑ですよね」


そう言って自分の家の位置が分かりづらい事に同意する。


まぁ、だからこそここの家賃は普通よりも安いんだが。

自分の借りている家をちらりと見ながらフェイトはそう思う。


「それで今日はどうしたんですか、何か用事でも?あ、もしかして何か商品を買いに来てくれたんですか?それは丁度良いですね。今からこの移動型商店『エーラ君一号』で売りに行こうとしていた所なんで、商品の準備は出来てますよ。リーナさんは何が欲しいのですか?」


フェイトは積み込む作業を止め、リーナにそう問いかける。

ちなみに、エーラ君一号の名前の由来は当然フェイトの苗字のエラという名からだ。

同時になんか飛べそうな感じがして来て、フェイト個人的には気に入っている名前である。


フェイトの問いにリーナは首を横に振る。


「いえ、商品というのはとても気になりますが、今日来たのはなんと、前に話してたフェイトさんとパーティメンバーになれるかもしれない人が見つかったからです!」


「…………はぁ!?マジですか!?」


当初リーナが何を言っているか理解出来なかったフェイトはゆっくりと言葉を飲み込み、そして驚く。

そして本当かどうか問うフェイトの言葉に、リーナは元気良く首を縦に振った。


嘘だろ、まさか本当にあの条件で組んでくれる人がいるなんて。


驚愕して固まっているフェイトにリーナさんの声が降り注ぐ。


「その人はつい3日前に冒険者ギルドに登録した方なんですが、事情があるようで暫くの間は難しいクエストなんかには行けないらしいのです。そこでフェイトさんの話をしてみたところ、パーティを組んでみたいと返事を頂きました!」


そう言って胸を張るリーナにフェイトは疑問に思った事を口に出す。


「えっと、今の話を聞いて色々聞きたい事はありますが、一つだけ教えて貰っても良いですか?」


「はい、なんでしょうか?」


「その人って戦えるんですか?」


フェイトは聞いた中で特に気になった疑問を聞く。

3日前に冒険者ギルドに登録したという事は、その人物は初心者という事だ。


けれどフェイトが求めているパーティメンバーは戦う実力がある人物だ。最低でも自分一人ぐらいは守れるぐらいの力が無くては困る。

サポートしか出来ないフェイトと戦えない人物がパーティを組んでも全く意味がなさないからだ。


そんなフェイトの疑問にリーナは、そう質問してくる事が分かっていたようにスラスラ答えてくる。


「はい、その点は大丈夫だと思いますよ。なぜならその人はなんと、採取クエストを受けてた時に突然現れたビックベアをたった一人で倒した程の実力を持っているからです!戦力という点では彼は何一つ問題ないと私は思いますよ!」


リーナの自信満々な言葉にフェイトも驚く。


「ビックベアを…………ですか!?それは本当に凄いですね」


フェイトの口から感嘆とした声が口から出る。


ビックベア、そう呼ばれる熊型のモンスターはここら辺では最上位クラスの力を持っている。


もちろんドラゴンやらキメラとは比べ物にならないが、この街で活動している冒険者はビックベアというモンスターに出会わない様気を付けている。


フェイト自身もプラハ達とパーティを組んでいた頃に一度だけビックベア戦った事がある。その時はなんとか勝利する事が出来たが、ギリギリで、しかもパーティという一つの塊での勝利だ。


そんな実力を持つモンスターに一人で勝つとはこの街でもトップクラスの実力を持っている事になるり


そしてそんな人物がフェイト自身とパーティを組んでくれるのならば頼もしい事この上ないだろう。


しかし、同時に新たな疑問が出てくる。


「どうして、その人は俺とパーティを組んでくれるんでしょうか?俺はあいつらとしかパーティを組んだ事は無いですが、俺に戦闘系スキルがない事は冒険者の中では周知の事実でしょうに」


フェイトは怪訝な声で尋ねる。


フェイトはギルド内や街中でプラハ達に戦闘系スキルがない事を馬鹿にされた事が結構ある。

故に、他の冒険者に戦闘系スキルがない事が知れ渡り、フェイトがパーティを組んでくれないかと頼んでも断られてばかりだった。


ーーそんな俺と何故パーティを組んでくれるのだろうか?


フェイトは疑問に思う。

ビックベアを一人で倒せる程の実力を持っている人物なら、どこのパーティも喉から手が出る程欲しがるだろう。


その中には高待遇で危険なクエストに行かなくても良いというパーティもあるはすだ。


それなのに何故?


フェイトの疑問にリーナは困った様に頬を掻く。


「すいません、私も詳しい理由はわからなくて。ただ、私は話を話したらパーティを組んでみたいと言われただけなので」


「そうですか…………わかりました。俺その人に会ってみたいです。いつ会う予定なんですか?その日の予定は空けときます」


「…………今日です」


「…………はい?」


「だから今日会う予定なんです!というか実はパーティの件はついさっき聞いたばかりなんです!今もその人は冒険者ギルドでフェイトさんを待っている状況なんです!なのでフェイトさん、急いで私と冒険者ギルドへ行きましょう!」


「…………え、マジですか?」


「マジです」


リーナが真顔でフェイトの方を見てくる。


その力強い眼光を受けたフェイトは先程作り終えたエーラ君一号を見る。


今日作り終えたばかりの簡易商店。

今日のフェイトはこれで一日中商売をしようと、数日前から楽しみにしていた。


リーナを見る。


相変わらず目でフェイトを急かしていた。


…………さようなら、エーラ君一号。

君の出番は明日だ。


そう心の中で呟いたフェイトは急いで片付けを始めたのだった。

投稿遅れてすいません!

次回はそうならない様に気を付けます!


※第8話は1月2日18時〜19時に投稿します

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