2話:商人としての一歩
翌日、まだ日も昇り切っていないような朝早くに起きたフェイトは冒険者ギルドへ向かっていた。
パーティ脱退をギルドに伝えるためだ。
朝早くにした理由は、日が昇りきった時間だとプラハ達とと鉢合わせる可能性が高いからだ。
昨日も言ったが出来るならもうあいつ等とは会いたくない。そうフェイトは思っている。
プラハ達の事を思い出し少し嫌な気分になるのを感じたフェイトは、それを払拭する様に早足で冒険者ギルドへ向かった。
冒険者ギルドに着くとギルド内に冒険者らしき人影は殆ど無かった。
やはりこんな時間から働きにくる冒険者はほとんどいないのだろう。
そんな事を思いながらフェイトはギルド受付へ向かう。
簡素な作りで出来ている冒険者ギルドの受付カウンターではこんな朝早くに来たフェイトを見て、知り合いのギルド嬢ーーリーナが驚いた顔をする。
その姿を見て、まぁそりゃそうだろうな、とフェイトは思った。平日のパーティーとして動いている時はフェイトではなく、プラハ達が受注から達成報告までやっていたのだ。
休日に来る時はそうでもないのだが、平日に、しかもこんな朝早くにフェイトが一人で来るのはこれが初めての事だ。
多少驚いてもおかしくないだろう。
軽く手を上げながら近くに寄るとリーナさんは目を丸くしながら此方へ問いかけてくる。
「おはようございます、フェイトさん。こんな朝早くに一人でどうしたんですか?今日平日ですよ?」
「あー、実は俺、この度パーティを抜けたんです。ギルドに連絡きてませんか?」
「え、あ、ちょっとお待ちください。…………いえ、どうやら此方には連絡は来ていないようです。」
そう言うリーナさんの言葉にやっぱりか、とフェイト思った。
あのめんどくさがりであり、プライドも高い奴等がその日の内に連絡するとは思えない。
それどころかギルドには連絡せず、今もフェイトがパーティーにいると嘘を付くかもしれない。そう考えるとやはり朝早くにギルドに来たのは間違いではなかった。
そう思いながらフェイトはリーナさんに昨夜あった出来事、及び今までの事情を説明し脱退の手続きをしてもらう。フェイトの話を最後まで話を聞いて、色々な書類などを用意し始めたリーナはどこか感慨深そうな表情をしていた。
「それにしても、フェイトさんがついに抜けてしまうんですね」
その言葉が気になり、どういう事かと聞くとギルド職員の多くはフェイトのパーティーでの扱いの悪さに気が付いていたという。
戦闘系スキルがないという事でプラハ達から馬鹿にされている姿がよく街で見かけたり、一人だけ報酬が極端に少ないのも目に入っていたらしい。
どうにか対応しようとしたらしいが、パーティーというのは冒険者のプライバシーに関する事なので、ギルドとしては中々に手が出しづらい。
端的に言えばパーティー全員が納得している、そう言われれば冒険者ギルドは手が出せないのだ。例えパーティー全員がそう言っているのか確認できなくても、だ。
なのでギルドはフェイトが苦しんで少しでも職員に相談などをした時には、すぐさま動ける様に用意だけはしていたらしい。
しかしフェイトが苦しそうにはしてるのに、一向に相談や愚痴をして来ないのでほとほとに困ったという。
ギルド職員の方から聞いても大丈夫とかしか言わなかったので、さらにどうしようもなく手の出し様がなかったと言う。
それが一ヶ月と続いても一向に辞める気配がないフェイトに、ある意味呆れ始めたのか一部のギルド職員の間ではなんと、いつフェイトがパーティを抜けるか賭けまで行われていたらしい。
一番人気が高かったのは3ヶ月。
その妙なリアルさにフェイトは顔が引き攣るのを感じた。
リーナはお金のやり取りこそしなかったが、唯一、一人だけ最低でも1年は絶対に耐えると言い、結果見事一人だけ 勝利したらしい。
フェイトは賭けが行われていた驚きと、自分を信じてくれたリーナへの感激という複雑な気持ちが心を満たすのも感じていた。
「あ、忘れてた。それとなんですがついでに冒険者も辞めるので一緒に手続きして貰ってもいいですか?」
フェイトは突然聞かされたギルドの話の衝撃に、忘れかけてしまったもう一つの目的をなんとか思い出し伝える。
すると、リーナは先程よりも驚いた表情をしてフェイトを見た。
「な、なんでですか!?」
「いや、なんでと言われましても。元々俺は冒険者ギルドではなく商人ギルドに入るつもりでしたし、しかもEランクの俺一人じゃまともに戦う事も出来ませんからね」
リーナの驚いた顔を見ながらフェイトは説明する。
フェイトには戦う力というものがまったくない。モンスターの中で最弱と呼ばれるゴブリンにすら勝てないフェイトが出来るのは、誰かをサポートする事だけ。しかもそれすらも大したものではないとフェイトは思っている。
その証拠に冒険者になって1年が経った今でも俺の冒険者ランクは下から二番目のEランクだ。(プラハ達はCランク)
これ以上続けた所でフェイトのランクが上がる可能性は低いだろう。
「そんなぁ、フェイトさんがいなくなると色々困るんですよ。今時フェイトさんぐらいしか街中のクエスト受けてくれないし、モンスターの剥ぎ取りも他の冒険者に比べて一つ頭飛び抜けてるって言われてるんですよ」
困りきった顔でそう言うリーナの言葉にフェイトは驚く。
リーナ曰くフェイトのギルド内での評価はそんなに悪くないらしい。
理由は、採取クエストや討伐クエストに比べて報酬がショボいせいでいつも溜まっている街中のクエストを受けてくれたり、解体部分が綺麗に出来ていて依頼人も満足しているかららしい。
確かにフェイトは休日なんかも冒険者ギルドに来ては一度に複数の街中のクエストを受けていた。しかしそれは極端に自分だけ少ない取り分じゃ生きていけないのと、フェイト一人では採集クエストや討伐クエストに行けないからである。つまりそれは仕方のない事であり、別に褒められる事ではないのだ。
しかし、フェイトがそれよりも驚いたのは解体をフェイトがしたのだと気付かれていた事だ。
てっきり三人の内誰かががやったのだとギルドに言っていると思っていたからだ。フェイト自身、一人で解体の仕事を受けた事はないので誰がやったのかわかるはずが無いと思っていた。
そんなフェイトの感情が顔に出ていたのだろうか、リーナは苦笑しながら此方を見ている。
「あ、今こう思ったでしょう。どうして自分がやったのだと気付いたのだと。てっきり三人が嘘ついて自分達がやったと伝えていたのではないのかと」
あまりに正確にフェイトの心を読んだリーナさんに思わず言葉をなくしてしまう。そんなフェイトへリーナさんは不出来な生徒へ教えるように人指し指を振る。
「まぁ、フェイトさんの言う通り彼女達は自分達がやったと言い放っていましたが、これでも私は一応ギルド職員の一員ですからね。嘘だというのは経験上大体わかりますし、ギルドには鑑定のスキルが宿ったアイテムもあります」
三人の中には解体のスキルがなかったですから、と薄く笑うリーナにフェイトは尊敬と畏怖を抱く。
そう言い終わるとリーナは円を描いていた指を元に戻しフェイトを見据える。
「ですから冒険者を辞めないで頂けませんか?」
「いや、でも」
「えーと…………そう!冒険者は商人と兼業する事ができますから問題ありませんよ!」
「と、言われましても。街中のクエストを受けるためだけに冒険者でいるのに大したメリットがありません」
金を得るという副産物で多少の人脈を作る事が出来るというメリットがあるにはあるが、それはこの1年の間で十分作る事ができた。これ以上は特に必要ないだろう。それに、先程も言ったが街中のクエストは外に出るクエストに比べて報酬も随分低い。
これから商人として生きるつもりのフェイトからしたら兼業するメリットはほとんどないのだ。
「なら、私が討伐クエストや採集クエストに行けるようフェイトさんの新しいパーティメンバーを見つけます!それならいいでしょう!良い人見つけますから!」
「え、あ、はい。わかりました」
リーナさんの強烈な勢いに押されてフェイトは思わず了承の意を述べてしまう。
そしてフェイトが了承した事に、満足そうな表情を浮かべたリーナさんに俺一人いなくなった所で、と言い掛けてしまいたくなるが何とか口には出さずに終える。
リーナは複数の書類の束から一枚の紙を取り出すと、ペンを構えフェイトへ顔を向ける。
「それではなにか条件などはありますか?なるべくそれを満たした人を探しますが」
「条件ですか?そうですね。…………あ、出来れば分配はしっかり等分して欲しいですね。後は出来れば戦う事が出来ない俺を囮に使ったり、無理矢理戦わせないでいてくれるなら」
「…………フェイトさん。それは普通の事なんですが。というか、そんな目にあってたんですか?」
リーナが驚きと怒りの混じった表情でフェイトを見つめる。
ーーなんでそんな顔をするのだろうか?
フェイトは不思議に思った。
サポートこそするがまともに戦えない俺がお金を平等に受け取るのは結構厳しい条件だと思うのだが、と。
「はぁ、まあいいです。他にありませんか?」
「…………あ、それならもう一つ。俺はこれから商人として生きるつもりです。そうなると冒険者より商人の事を優先してしまいますが、それでもいいという方なら嬉しいです」
「んー、ちょっとそれは厳しいかもしれませんが、なるべくそれに合う人を探しておきますね」
フェイトの出した条件を紙に書き留めたリーナは再び複数の書類の束から一枚の紙を取り出す。
「それでは本命のパーティー離脱の件ですが、フェイトさんが今所属しているパーティー『アルハンブラ』を抜けても良いならこの紙にサインしてください」
受け取った紙には「パーティー『アルハンブラ』を抜ける事を承知します」と書かれている。
迷う必要もなくフェイトサラサラと自身の名前を書く。
「はい、これでフェイトさんは今日から何処のパーティーにも所属してないフリーの冒険者です」
書いた紙をリーナに渡すとリーナはフェイトにそう告げた。
そして書いた紙を丁寧にファイルに収めたリーナは、フェイトに用事はもうないのかと視線で問いかけ、用事がない事がわかると両手を腹部に当て、深々と一礼する。
「これからもどうか冒険者ギルドをよろしくお願いします」
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冒険者ギルドで用事を済ませたフェイトは一度家に帰り朝食を食べていた。
黒パンとスープという簡単なものだが朝はこれで充分腹は膨れる。
10分程で朝食を食べ終わるとフェイトは軽く服装なんかを整え、今度は商業区にある商人ギルドへ向かった。
冒険者ギルドと同じ様に商業区の中心に存在する商人ギルドの建物はこれまた冒険者ギルドの建物に負けないくらいの大きさを誇っている。
フェイト自身元々入るつもりだった商人ギルドへ行くのは実はこれが初めての事だ。冒険者は基本的に冒険者区内で必要な物品なんかを揃えている。
冒険者区でも複数の商人が商売をしており、わざわざ商業区に来てまで買おうとする必要がないのだ。それは元フェイト達のパーティー『アルハンブラ』も同じであり、さらにフェイトは必要最低限の物以外ーーポーションなんかはクエスト中に摘んだ薬草を使って自作していた。
なので初めて行く商人ギルドにフェイトは少々心が昂ぶっているのを感じていた。
商人ギルドの正面に着く。
通りがかった時は毎回見ていた建物だが、近くからこうやってじっくりと見ると、小さいながらも見事な意匠が所々に凝らされている事がわかる。
どうやらこんな細かい部分は商人ギルドの方が冒険者ギルドより上らしい。
その事にフェイトは少し緊張が芽生えるのを感じながらも覚悟を決め、商人ギルドへ踏み込む。
すると
「おい、辺境でまた小競り合いが起きたらしい!武器を売りに行くなら今がチャンスだぞ!」
「なに、塩の在庫が残り少ないだと?至急近くの塩の取れる街へ買い付けに行きなさい!」
「なんだと、ウチのポーションで体調を崩した奴が店に来ているだと?よし、案内しろ!」
開かれた先のホールで様々な人々が話しを、時に怒声を上げながら忙しなく動いていた。
ーーこれは一体?
「あの、なにか商人ギルドに用事でしょうか?」
首を傾げて訝しんで人々を見ていると、声を掛けられる。フェイトは声のした方を向くと、そこには女性のなかでも小さい方に入るであろう背の低い少女がいた。
一瞬は迷子かと思ったが、見た目に合わぬ落ち着いた動作とギルド職員を示すバッジを首元につけている事からこの子、もしくはこの人はきっとギルド職員の一人なんだと思い直す。
フェイトは姿勢を正すと少女へ向き直り、今回来た理由を話す。
「あー、実は商人なりたくて、商人ギルドに加入しに来たんですが」
「なるほど、そういう事ですか。それでは此方へ来てください。幾つか説明をしますので」
フェイトの言葉に納得した様な表情をした少女は落ち着いた様子で案内する。フェイトは少女に大人しくついて行き、カウンターらしき場所へ着く。
「まずは、名前からいきましょう。私は商人ギルド職員のペアと言います。年は19です。以後お見知りおきを」
「…年上だったんですね。あ、俺はフェイト・エラといいます。年は18です。よろしくお願いします」
「さてフェイトさん、早速で失礼ですが商人としての経験ーー何処かのお店で働いていた事などがありますか?」
「あー、いえ、ありません。すいません」
「あ、別に悪いという事じゃないので気にしないで下さい。そうですか…………それではフェイトさん、最初に商人として気を付けて置くべき事を言います」
「は、はい。なんでしょう?」
「名前です」
「名前…………ですか?」
フェイトは訝しげな声を出す。ペアが何を言ってるか理解出来なかったからだ。
ペアはフェイトの様子に頷いて続きを告げる。
「はい、これは実際にあった事なんですがある街に一人の商人がいました。その商人は始めは小さかったですがメキメキと商店を大きくしていき、10年が経つ頃にはその街でも有数の商人になりました。けれどある時その商人は行方不明になったんです」
「行方不明ですか?」
「はい、商人は後日モンスターに食われた死体だけが見つかりました。そして店の主人が死んだ事で店は少しずつ勢いを無くし、最終的に潰れました。」
「…………待ってください。商人はなんでモンスターが出るところにいたんですか?それ程の商人なら冒険者に頼むだけのお金はあったでしょう」
「はい、ここからは推測とされてますが商人は自らの足で向かったのではなく、誰か他の商人に連れ去られたのではないかと言われてます」
「…………連れ去られたですか?どうして?」
「商人というのは大体の場合自分が利益上げれば何処かで誰かの利益が下がる仕事でもあります。街で成長していった商人とは別にどんどう商品が売れなくなった店も当然出て来ます。そんな人達からしたら成長していった商人は恨みの対象なんです」
ペアの言葉にフェイトは思わず息を飲む。
「死体をモンスターに食わせてしまえば証拠もなくなります。極少数とはいえそう思われる事案は確認されています、その事もあって商人の間では苗字や名前、もしくは商人としての名前を持っている人は多いです。フェイトさんも気を付けてください」
そんな物騒な事をあっさり告げるペアにフェイト背中から嫌な汗が流れるのを感じる。
想像してなかった事を告げられ若干震えているフェイトにペアさんは苦笑しながら言う。
「もちろん、必ずそんな事が起きるという訳ではありませんよ。本当に長い年月で極少数です。しかし、少数とはいえ実際に起きた事でもあります。なので、次からは気をつけて下さい。上だけか、下だけか。もしくは商人の際に使う名前でも構いません。次からはそうしてください」
ペアの言葉にフェイトは首をカクカク大きく縦に振る。
そんなフェイト様子にペアは一度咳をして、ここからが本番と話を続ける。
「それでは説明に入らせてもらいます。まず商人ギルドに加入できるのは商人だけです。これは絶対で、働けなくなり辞めた人達などは自動的に商人ギルドから脱退されます。さて、その商人ギルドについてですが、商人ギルドに加入している商人は大きく4つのランクに分けられます。」
そう言ってペアは棚から4つのバッチを持ってくる。
「一つ、一番ランクが低く初めて商人になる人や経営が厳しい人などが所属するブロンズ」
銅色のバッチをカウンターに置く。
「二つ、商人としてある程度安定して経営ができて来た人などが所属するシルバー」
銀色のバッチをカウンターに置く。
「三つ、いわゆる大商人と呼ばれる人達が所属するゴールド」
金のバッチをカウンターに置く。
「最後、現在国中で一人いるかいないかという、ある意味伝説とも言えるホワイト」
最後に白銀のバッジが置かれる。
「これらはホワイトをのぞいて全て本物ですが、ホワイトだけは模造品です」
「え、なんでですか?」
「先程も申し上げましたようにホワイトは今のところ国中に一人いるかいないのレベルです。それはつまりホワイトのランクになれる商人が殆どいないという事です。ゆえに、作るだけもったいないとされて各支部には模造品が置かれています」
…なるほど、パッと見ただけでも模造品であるのにも関わらず、気品すら感じるこれがもし本物だともっとすごい事になるのだろう。それはつまり盗まれたりしたら大損害を受ける代物だという事でもあるという事だ。
そりゃ模造品を置くな普通、フェイトはそう思った。
「さて、フェイトさんは初めて商人になるのでブロンズのバッジをどうぞ」
ペアが銅色のバッジを渡してくる。フェイトはそれを受け取り、胸に着けてみる。
そして着けた瞬間、心の奥から喜びに似た何かがせり上がってくるのを感じた。
「このランクの判断基準は商人ギルド幹部達によって判断されています。ギルドの重要情報なので詳しくは言えませんが、簡単に言えば店を大きくすればランクも上がると思ってくれれば問題ありません」
「なるほど、それはわかりやすいですね」
「ありがとうごさいます。次にランクの違いによっての特典と義務について話します。まず義務からですが商人ギルドに加入した方には年ごとにランクごとのお金を納めてもらいます。ブロンズクラスは大銀貨1枚ーー10万セルです。」
10万セルか。思ったより安いな、とフェイトは思った。
「ランクが上がればその分だけ増えていきますので覚えておいてください。さて、次に特典ですがこれについては一言では言い尽くせません。まず、どのランクも共通しているのはギルドによる紹介や情報が手に入る事です」
ペアは中央に貼られている掲示板を指差す。
「あそこにギルドが知っている様々な情報が乗せられています。見ての通り多くの商人の方がそれを見て行動をしています。あのように情報がどのランクの方でも手に入ります。次に紹介についてですが、これは店を持つ方に対する土地や店をギルドが紹介することです。その人にあった店を紹介するので中々に好評を得ています」
店の紹介。確かに商人ギルドからの紹介なら騙されたりする心配が無くて、安心して聞くことが出来るのだろう。
「他にも様々で豪華な特権がランクが上がる毎にあります。これはランクが上がった時の楽しみにでもしといてください。さて、フェイトさん。ここまで話しましたが商人になりたいと言う気持ちは変わりませんか?」
ペアが問う様に此方を見つめる。
「実は話を聞いて不安になり、やはり商人になるのを止めるという方は一定数います。しかしそれは仕方のないことでもあります。商人の世界は弱肉強食。弱い方から食われていきます。それが嫌で商人ギルドには入るが、自分の店を持たないという方々もそれなりにいます。貴方はどうしますか?」
ペアはどこか答えがわかっているような表情をしながらフェイトを見る。
もちろんフェイト答えは決まっていた。
「はい、もちろん商人になりたい気持ちに変わりはありません」
確かに一度商人をやめたくなったのも事実だ。けれど最終的にはやはり商人になりたいと思ったのもまた事実だ。
命の危険にしてもそれは冒険者も同じだ。ならばそうならないよう気を付ければいいだけの事だ。
それに商人にならなくては、なんのためにパーティーを抜けて来たのかわからないくなってしまうだろう。
ペアはフェイトの答えに頷き、手を差し出す。
「では、これからよろしくお願いしますフェイトさん」
「こちらこそよろしくお願いします」
こうしてフェイトは商人としての一歩を踏み出した。
2話目です。
気になる点などがありましたら感想お願いします!
※次回の投稿は12月29日6時頃です