00.Secret
はじめに
これは私が現在書いている「ビオトープ」の番外編です。
本編に登場する人物、ハクリ・カイリ姉妹の生い立ちに迫ったストーリー構成です。
そもそも本編にまだ登場すらしていない「カイリ」が出てきます。(15/3/6)
カイリが好きすぎて作ってしまった物語なので、観覧にはご注意ください。
足元に広がるのは、ワインのように真っ赤な、おびただしい量の血海。
辺りには、肉塊にようなモノがいくつも転がっている。
時折、頭部らしきモノが見えるおかげで、かろうじてソレ達が死体の一部である事を確認できる。
ツンと喉を乾かすような血臭の漂う中、既に大部分を血色に染め、元は純白であったはずのワンピースを着た、一人の少女が佇んでいた。
「…………」
少女の視線は、ただ遠くの一点を眺めている。何を考えているのか、こちらからは読み取れない。
ふと思い出したかのように、手にしていたナニカで近くの頭部を潰し始める。
筋力が衰えているのか、そも、少女の腕力程度では人間の頭部を潰せないのか、何度も何度もナニカを叩きつける内に、ふと、また思い出したかのように手を止める。
そんな風にして、どこかしこもが陥没した空き缶のような頭部ができあがる。
こんな事を何度も繰り返したのだろう、よく見れば転がっている頭部は全て似たような有り様だった。
「…………」
遠くから、ゴリゴリゴリ……という鈍い音が響いてくる。
ソレは徐々に大きくなっていき、どうやら少女の元に向かっているようだ。
鈍い音が間近まで迫ってくると、ピタリと音が止まる。
「……ハクリ」
音が消えた方向から、誰かの声が聞こえる。声から察するに、声の主もまた幼い少女のように思える。
それに驚く事もなく、生気を感じられないゆるやかな動きで、血にまみれた少女が声の聞こえた方向に顔を向ける。
……そこに立っていたのは、自分と同じ、全身を大量の帰り血に染めたワンピースの少女だった。
違いと言えば、声をかけた少女が宝石のような透き通る蒼色のロングヘアーなのに対し、声をかけられた少女は同じく宝石のような輝きをした翠色のショートヘアをしているくらいだ。
「……終わった?」
蒼髪の少女が問いかける。
「…………うん」
ちらりと周囲に転がる残骸を確認し、翠髪の少女が答える。
「……そう、十分ね」
蒼髪の少女が呟くと、しばらくの沈黙が流れる。
「……行きましょう」
そう言うと、蒼髪の少女は手にしていた金属バットを床に伏せ、自らが向かってきた方向を振り返り歩きだす。
翠髪の少女は、同じく手にしたナニカを床に置き、当然のように蒼髪の少女のあとをついていく。
二人の少女が消え、暗闇だった空間にふと光が指す。
一瞬の光ではあったが、この部屋はベットもテーブルも置かれていたごく普通の住宅であった事がわかる。
それが今では、部屋のほとんどが血色に染まり、床はむせ返す程の血に溢れ、無数の肉塊を散らばっていて、本来の景色を保っているのは天井と壁くらいのものだった。
血色の部屋から血臭が漏れ始める頃、少女達は迷いのない足取りで裏口から去っていく。
「……大丈夫。ハクリはわたしが守るから」
――少女らしい、ほのかに甘い香りに
――決して消えない血の臭いを染み込ませながら
――蒼髪の少女が、静かに呟いた。
End.
本編も番外編でも、書いてても見直してても毎回思うんですけど
文字で表現するのって難しいですねぇ……。
それなりにキャラクター設定などは作っていたつもりですが、実際に書いていくとその通りに上手く表現できなかったり
設定の方を変えてしまうという事態もあります……。
一日一更新を目指して、地道にスキルアップを目指します!
次話は15/3/6 21:00に投稿予定です。