07:実家に帰るとバラ模様の痣ができていた
久々にモスリンにある我が家に帰った。家族は皆、相変わらず元気そうだ。
家族は皆、私を温かく出迎えてくれた。
学校であった事などを話すと、皆は興味津々で聞いていた。
夜は妹達と同じ部屋で眠る。寮の部屋と違って地味で雑多な三人部屋だが、不思議と落ち着く。
上の妹は学校の推薦で、地元の医療系の学校に通うことが決まったそうだ。
前から妹がその学校に行きたがっているのを知っていたので、一緒になって喜んだ。
「あれ、お姉ちゃん、首元……どうしたの?」
不意に下の妹が、私の首筋を指差した。
「え?何か付いてる?」
さっき夜食で食べたパスタのミートソースが飛んだのだろうか。それは恥ずかしい。
「ちがうよ。薄いけど、なんかお花の形みたいな模様がついてる」
ーーえーー?
明かりを付けて、鏡て確認してみると、そこには薄くバラの花の様な模様が浮かんでいた。大きさは二センチメートル程だ。
「な……に……これ…………」
こんなの、今まで無かったのに……
妹達は「虫にでも刺されたんじゃないの」と暢気なことを言っているが、こんな虫刺されがあるだろうか……
私は……何か、言い知れぬ不安を感じた。
※
二学期になった。
「ミミ!元気だった?!」
寮にいるミミに声をかけた。
まだ暑いというのに、彼女は首にスカーフをぐるぐると巻いている。一学期の途中頃から学園内で首にスカーフを巻くのが流行りだしたみたいで、校内でも同じ格好をしている子をちらほら見かける。
声をかけたのに、ミミはベッドに座ったまま反応がない。
「ミミ……?」
顔を覗き込むと、彼女はハッとして私を見つめた。
何だか、少し窶れている気がする。
「え……あ……リル?……ごめん、ボーっとしていて気がつかなかったわ……」
……様子がおかしい。
「何かあったの?」
「え?……なんで?」
質問に質問で返さないで欲しい。
「えっと……何か元気が無い様な気がして……」
「そんなこと……ないわよ……」
嘘だ、目が泳いでいる……
そう思っていたら、彼女の目が私の首元に止まった。
あのバラの模様を凝視している。やっぱり目立つのかな……
「……リル……あなた…………」
ミミな何かを言おうとして……途中で止めた。
「いえ……なんでもないの……ごめんなさい……。今は言えないけど、必ず話すから……少し待ってくれる?」
そう言われてしまうと、それ以上深く聞く事は出来ない。
ミミが話してくれると言うのなら、彼女を信じてその時を待とうと思った。