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06:森で会長とお喋りした

 夏休み、多くの生徒達は家族のもとで過ごす。

 意外な事に、ミミは寮に残るそうだ。

 最近父親が再婚した新しい義母と折り合いが悪いらしい。貴族も大変だ。

 私は、夏休み前半をミミに付き合って残る事にし、後半を実家に帰って過ごす事にした。


 夏休みなので、私達には勿論宿題がある。その中で最も厄介な課題の一つが野外研究だ。

 私は今日、その宿題をする為に、大きな籠を持って朝から学園の近くの森に来ている。

 今日も天気が悪いので、森の中の景色は鬱々としている……少し不気味だ。

 ちなみにミミはまだ部屋で眠りこけていて「私の分もやっといて」とふざけたことをぬかしていた。


 一年生の研究の題材は『気分を変える香料』で、指定された植物を集め、学園内の研究室で気持ちを高揚させたり、リラックスさせたりする香油を作り出すというものだ。

 作った香油を担当の教師に提出したら完了である。

 めんどくさそうなので、実家に帰るまでに全て済ませてしまうつもりだ。


 早速目当ての植物を見つけた。ラヴァンの葉、ゲラニの花……あとは……。

 一心不乱に植物を摘んでいく。


「リル?」

「うわぁ!!」


 こんな森に誰か居るとは思わなかったので、突然名前を呼ばれて変な声を上げてしまった。


 顔を上げるとそこには……会長がいた。


「ご、ごめんなさい、びっくりしてしまって……」

「俺こそ、突然声をかけて驚かせてしまったね」

「いえ、めっそうもない!」


 相変わらず後輩思いの優しい人だ。


 今、「リル」って…………私の名前を知っているの?

 …………そういえば、入学式の新入生代表挨拶の時に、全校生徒の前で名乗った気がする。

 でも、数回しか会ったことの無い会長が自分の名前を覚えていてくれたというのは意外だ。


「……会長はこんな所で何をされていたのですか?」

「散歩。よくここに来るんだ」

「そうなんですね。私は野外研究で使う植物を集めていたんです」


 会長は屈んで私の持っている籠に顔を近づけた。…………距離が近い。


「どうりで、良い匂いがする…………ホント、美味しそうだよね……」

「へ?この植物は食用じゃないですよ?」


 会長は、そのまま籠を通り越して私の首元に顔を近づけてくる……。

 ほんの一瞬、彼の瞳が綺麗な群青色から紅色に変わった様な気がした。

 近づいて来た会長の唇が、首筋に触れるギリギリの所で…………止まった。


「あ、あの……会長?」

「……冗談……」


 会長はすっと顔を離すと、私の頭を軽くぽんぽん叩いた……ちょっとびっくりした……そんなことをしそうにない人だったから。

 微笑む彼の瞳の色はやっぱり群青色だ。

 さっきのはきっと未間違いだよね。


「一人で森に来るのは危ないよ」

「……気をつけます」


 一度校内で危険な目に遭い、彼に助けてもらった事もあるので、否定できない。


「残りの植物を探すの、手伝うよ」

「え、でも……」

「俺も一年の時にやった課題だから」


 結局、会長が有無を言わせないオーラを出していらっしゃったので、ありがたく手伝って頂く事にした。


 それからというもの、会長は校内でもよく声を掛けてくる様になった。

 単純に夏休みは他の生徒が殆どいないから寂しいのかもしれない。

 彼は夏休みも生徒会の仕事がある所為で、家に帰れないそうだ。

 なんだか可哀想……。



「リル、聞いて聞いて!……副会長も寮で待機組なんだって!私、お茶会に誘われちゃった!」


 帰省の準備をしていると、ミミが嬉しそうに教えてくれた。


「そうなの?!」

「そうよ、いいでしょう?……リルは家族と楽しんで来てねーー」


 少し羨ましかったが、ミミが一人になってしまう事が心配だったので、副会長も一緒で良かったと思う。

 そういえば、会長も仕事で寮にいるんだよね。


 生徒会メンバーは夏休みも忙しいのかな。



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