1円で僕は枕を濡らす。枕仕事だけに……。
僕の家は別段金持ちなわけではない。
「ひゃはー」
こうしてせつねちゃんが親の未来を変えたために貯金額が一定して振り込まる事に違和感しかない。
振り込まれる額がおかしい。
「なあ、僕の親は何の仕事してんの?」
「……」
「言えない事なんだ」
呆れた。マジで本当に……。
「海賊」
僕は海賊の息子になった。
*
全てが上手くいくなんて思っていない。
「一円で行える魔法があるの」
「ふーん」
だからなんだよ。僕は裁縫で忙しい。
「一円だよ? お得でしょ?」
試しに一円放り投げる。ヒョイっとキャッチしたせつねちゃんはあろうことか僕に向かって魔法を唱える。
「全テ無二還ス。有無像ノ戯レ、人成ル者姿見ヲ正ス」
何も起きない。そんな事は無いはずだ。せつねちゃんの事だ、かなりあくどい所業を僕に課したのだろうが一向にわからない。
「せ、せつねちゃん。僕に何したの?」
「ふふん。ちょっとシャバドゥビしたの」
「意味わかんないよ」
それから僕は裁縫に熱中した。忘れるぐらいに。
「ねえお出かけしない?」
「うん。丁度良い時間だし買い物も済ませるよ」
そして家を出たのだ。何故か今日はべったりとくっついて歩くせつねちゃんに疑心感を抱きながら。
「パパ! 大好き!」
「は?」
僕はパトロンではない……あながち間違いではないが。
大通りでいきなりそんな白々しい言葉を言うせつねちゃん。アタマオカシイ。
「もう駄目でしょ! 今からお楽しみなのに……もうまだダメだよ~」
その場で僕は同世代の人に無断で撮られてたのだ。
その日の夜、知らないおじさんとせつねちゃんがイチャイチャとしている所を呟くアレで見た。爆散されたリツイートの呟きには『この親父まじソンケー』と書かれていた。
「なんだよこれ! 誰だよコイツ!」
「あんただよ」
僕はこんなおっさんじゃない。でもこの時間体は僕とせつねちゃんが歩いてた時間だ。そして場所もそうだった。
「今の僕はおっさんなの?」
「今は違うよ」
「ホっ」
「ご老体だよ」
「大所帯かよ」
傍から見れば唯のドが付くロリコンだった。