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「レイヴィン=エヴァンスだ。これから半年間お前たちの指導官をする。途中で辞めたい奴はいつでも辞めて結構だ」
最初の挨拶はこれだった。
愛想が全くない。
「エヴァンス指導官〜。指導官はどの騎士団に所属しているんスか〜?」
五班の訓練生の一人が声をあげる。
フィルットの金魚のフンで、いつも一緒にいたケイダス=クリニーク子爵子息だ。
「俺の騎士団の所属なんて知ってどうするんだ?」
「僕もクロシアル様みたいな強い方に指導受けたいと思って。エヴァンスなんて聞いたこともない。大方、平民あがりの騎士だろう。実力がない指導官に半年も指導受けるなんて耐えられない。」
いつもフィルットと一緒にいるだけある。
「ほぉ。お前は俺の指導は受けたくないということか?」
眉一つ動かさないレイヴィンは流石だ。
「物分りがよくて助かります。僕はどこの馬の骨とも知れぬ貴方に指導をしていただきたくない」
「奇遇だな。俺もお前みたいなプライドの塊だけのような奴を指導してやりたいと思わない」
五班の訓練生の間に緊張が走る。
「それじゃあ僕の班を変えてもらおうか」
「…いいだろう。その前に俺と模擬試合をしてもらう。お前が勝てば一班への移動を認めよう。だがもしお前が負けた場合には…」
口の端だけ上げたレイヴィンは兄シゼルの怒った時にでる絶対零度の笑みよりも怖かった。
「ケイダス=クリニーク、お前には訓練生を辞めてもらおう」
絶対怒ってますよねー!?
ケイダスは怖気付いているのが周りからみても明らかだ。
「いっ、いいい、いいだろう!その勝負受けてたとう!」
声、裏返ってますよ、ケイダス君。
レイヴィンは他にも不服を唱える者はいないか?と聞いていたが、ケイダス以外手を上げるものはいなかった。
そりゃあ皆、我が身が大事だ。
短くてごめんなさい。
きりが悪くて…。