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「リルフィ=アイザックです」
「入れ」
部屋に入るとゲインが備え付けの椅子に座っていた。
なぜ部屋に呼ばれたのだろう。
疑問に思いながらもゲインの前に立つ。
「お呼びと聞きましたが」
「遅せーよ」
うっ。酒臭っ。この人お酒飲んでる。
「アイザックぅ〜平民の分際で生意気なんだよ〜。自分の身分も考えろ。所詮女なんだから大人しくしてろ〜」
絡まれたー!
「よ、よ、呼び出した理由というのは?」
段々体を近づけてくるゲインに思わず拳を作り殴りそうになるのを仮にも指導官だ、と自分に言い聞かせて抑える。
その隙をみて両肩をガシッと掴まれてしまう。
ひ、ひえぇぇぇ!
「お前よくよくみると綺麗な顔してやがるよな。俺が男ってものを教えてやろうぉ」
結構ですー!っていうかもしかして襲われかけてる!?
両肩を掴まれてしまっては身動きが自由にとれない。
もしかして大ピンチーってやつですか?
背中に冷たい汗が流れるような感覚になる。
「何をやっている」
「!!」
ーーこの声は。
酔っ払っていた様はどこへやら、ゲインは驚きで顔が真っ青になっている。
扉に背を向けているリルフィにはそちらを向くことはできなかったが、よく知っている声であったので誰なのかはすぐに分かった。
「クロシアル様!」
心なしかゲインの声は震えている。
「私は何をやっていると聞いているんだが?」
「いや、これは、この訓練生が私の部屋にやってきてですね…」
いやいや、呼んだのそっちだし。
「ハァ?何言ってんだテメェ。ンなわけねーだろ」
穏やかな口調からは想像もできない言葉がボソっと呟かれる。
仮にも公爵家子息。
口悪過ぎです。
そして怖すぎです。
ゲインさん真っ青です。
「これは俺のだから」
グイッとシゼルの方に抱き寄せられる。
私は物じゃありません。
「そ、それは失礼いたしました!」
可哀想に、真っ青な顔で酔いも覚めてしまっただろう。
「今度こいつに手を出したら…殺すよ?」
ハヒィィィ!と変な奇声を上げているのを無視せてシゼルはリルフィを連れてさっさと部屋から出てしまった。
連れてこられたのは別の部屋…多分シゼルの部屋だろう。
扉を閉めてようやく解放される。
沈黙が耐えられないよ…。
「久しぶり…」
「本当だ。俺が遠征に行っている間に勝手なことをして…。帰ったらいなかった俺の気持ちがわかるか?いやわからないだろうね」
一人で自問自答している姿は素晴らしく恐ろしい。
「ごめんなさいー!!シゼル兄様!」
勢いよく兄の胸に飛び込む。
これ以上怒られないために先手必勝だ。
「リルフィール…」
シゼルは嬉しそうにリルフィの背中に手を回した。
実は兄弟でした。
そんなオチ。