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「はぁああ。やっと終わったぁ!」
転がりこむような形でスタートラインに戻って来た。
リルフィ=アイザックは人より20周も多く走る羽目になってしまった為、終わったころには日が傾き辺りは暗くなり始めていた。
当然だがとっくに走り終えている他の訓練生たちで残っているものなど殆どいなかった。
「あのオヤジ〜!私に体力があまりないのを知っててワザとやっているなぁ!」
「あ。ゲイン様だ」
リルフィは慌てて自分の口を押さえ、声のした後ろを恐る恐る振り返った。
ちなみにゲイン様というのは、先程まで走り込みの訓練をしていた時に口うるさく指導してきていた三十代半ばの強面の騎士だ。
「サシェ!!ゲ、ゲイン様いるの?」
振り返るとそこにいたのは同期のサシェであった。
サシェは動揺したリルフィをみて声を上げて笑った。
「じょ、冗談だよ!そんなに怯えなくてもっっ」
「たちの悪い冗談やめてよ」
サシェを睨みつけたかったが、既に体力の限界を迎えているリルフィは立つことすらままならなかった。
「すまない、君をからかうと面白くてさ」
まだ笑いの引かないサシェはそれでもリルフィに手を差し出し、立たせてくれた。
「そろそろ走り終わるころかと思って。もう夕食の時間だし一緒に行こうよ」
そういうサシェの格好は先程までの汚れた訓練姿ではなく、着替えていた。
「あ!ズルい!着替えてるっっ!」
「君の着替え待ってたら食事食べそびれちゃうからねー」
そう言われてしまうと何もい言い返せない。
大分前に夕食の鐘がなっていたから食べれる時間もあと僅かだろう。
「ご飯っ!!サシェ早く行こうよ!」
立つのがやっとだったのはどこにいってしまったのか、走り出すばかりの勢いで行こうとするリルフィにサシェは苦笑した。
食堂に行くと食事を終えてしまった人が大半なのか、人は疎らにしかいなかった。
「なんで私ばっかり走らされるんだろう〜」
愚痴を言いながら食事を食べ続けるリルフィ。
「それは君が人より体力がないから、指導官たちも君に体力付けて欲しいと思っているからじゃないかな?」
確かに…。
リルフィは今年の騎士訓練生の中で一番体力がなかった。
一生懸命鍛えているはずの二の腕すらも筋肉がつく様子もなくプニプニのままだった。
否!ちょっとは筋肉ついてるもん!
袖をたくし上げ筋肉を作ってみる。
「全く筋肉ないし」
サシェが二の腕をつつくと脂肪とまでいかないが、決して筋肉とはいえない感触であった。




