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白雪姫の後編

白雪姫の朝は遅い。ただし、遅いからといって安心できるものではない。

「グガ~……! ゴゴ……! ゴガア……!」

「あああ! なんて酷いいびきだ!」

「あ、頭が痛くなる!」

「う、うるさすぎますよ……!」

白雪姫の酷いいびきはそのまま目覚ましになるほど強烈な物でした。しかも決まって朝の4時に激しくなります。


「もっと……食事を私にぃぃぃ! 持ってきなさいよぉぉぉぉ!」

「私は召使じゃ……ぎええ!?」

そのうえ、白雪姫の暴挙は寝ている間でもお構いなしに繰り出されます。もし彼女の近くで眠ろうものなら破壊力抜群の拳を繰り出されるのは目に見えています。毎晩毎晩食事を食べる夢でも見ているのか、召使と口論になって殴り飛ばす動きを繰り返しているのです。不運な事に、小人たちの家では白雪姫の暴挙を避けられるスペースなどほとんどありませんでした。


「ど、どうしましょう……まさかこんなことになるとは……」

「小人の家が滅茶苦茶ですね……白雪姫、まさかここまで暴れるとは……」

白雪姫をこの森に送り出した張本人、王妃と魔法の鏡も白雪姫のこの暴挙には言葉が出ませんでした。白雪姫は毎晩毎晩このような暴挙を繰り返しています。夜の間だけならまだいいのですが

「ああ! お腹が空いたわ! 早く食事を持ってきなさい!」

「は、はいい! ただ今調達に出かけておりますので、もうしばらくお待ちを……!」

起きても当然このような振る舞いです。寝ていても起きていても白雪姫の異常な行動パターンはそのままでした。城の中に居たときもその怪力で無理やり従え、大量の食事を手に入れていた白雪姫、当然、小人の家に移り住んだとしてもその行動は変わりません。


「まさかあの子がここまで滅茶苦茶な行動を取っているとは……」

「王妃様、さすがにこれは色々と不味いでしょう、何とかして大人しくさせるなりダイエットさせなければ……」

王妃も魔法の鏡も白雪姫を何とかしなければと思っているようです。

「……仕方がないわ。何とか痩せされるために手を打ってきます」

「分かりました。……潰されないようにお気をつけて……」

「……ええ……」

王妃は白雪姫をなんとかするためにちょっとした準備を始めました。


「……ええと、ダイエット用の食材は……すぐに痩せられる方法は……」

王妃はぶつぶつ言いながら白雪姫を痩せさせるための準備を始めます。痩せさせるための食事ですから、糖分、資質、炭水化物はかなり控えめにしてあります。というか、これらの取りすぎと暴飲暴食で白雪姫はあんな体型になってしまっているのです。

「……まあ、こんな所かしら。念のために小人の分も作っておいてあげなければ……」

白雪姫は砂糖や味醂をたっぷり入れた超絶に甘い紅茶を作って飲むのが日課なので、当然小人たちもそれを飲まされているでしょう。あれをうっかり飲んだ人は一口で2キロ太ってしまったくらいですから、飲ませるわけにはいきません。


「……こんな所ね。さて、行ってきましょうか」

王妃は、白雪姫+小人用に作った痩せるための料理を運ばせながら、自身も出発しました。王妃自ら変装して売り込みに行きます。その頃、とうの白雪姫と小人はと言うと……。

「いい!? 勝手に逃げ出したら承知しないわよ!?」

白雪姫は大量の砂糖や味醂を使った「紅茶」を作りながら、小人たちが勝手に逃げ出さないように釘を刺しておきます。万が一逃げられれば自分に食事を持ってくる存在が居なくなるため、脅しておく必要があるのです。

「で、では、食事を集めに行ってまいります!」

「ええ。さっさと行ってきなさいこの愚図共!」

白雪姫に半ば叩き出される形で出て行った小人たち。白雪姫はその姿を見ることも無く紅茶作りに励んでいました。そんな時、誰かが小人の家の門をたたきました。


「すみません……すみません……」

「誰か来たの? ……ほら! さっさと応対しなさい! ……って、今は居なかったわね……仕方ないわ」

白雪姫はめんどくさそうに立ち上がると、小人の家の戸を叩く者の所に向かいます。

「どちら様でしょうか?」

「旅の者です。この家の者には世話になっておりまして、お礼にと食事をお持ちしたのですが……。どうかここを開けていただけないでしょうか?」

「……!! ……食事……!」

白雪姫の頭の中には食事の事しか入っていないようです。開けていただけないかという言葉に誘われるままに、戸を開けます。


「こんにちわ小人さ……あの、どちら様でしょうか?」

「あ……え、えっと、こ、小人達と共に同居している者ですわ」

白雪姫は慌てて言い訳を考えますが、目の前の相手は変装した王妃なので意味がありません。

「そうですか。では、小人たちが帰ってきたら、共にこれを召し上がってくださいな」

そう言って王妃が差し出したのは白雪姫を痩せさせるための食事です。いくら食っても太らないような物ばっかりで構成されたメニューでした。

「え、ええ。それじゃ、この辺で。ありがとうございました」

「はい。それでは……」


変装した王妃が帰ってしまうと、白雪姫はさっそく差し入れられた食事の中身を確認することにします。小人が帰ってくる前にこれから平然と全部食べてしまうつもりなので小人たちと共に食べるつもりは一切ないのですが、そんなことは気にしてはいけません。

「あら! ごちそうじゃない! 小人共が持ってくる小さい木の実など比べ物にもならないわね!」

変装した王妃からの差し入れは肉や炭水化物、脂質、糖質が極端に少ない野菜、果実中心の物でしたが、白雪姫はそんなこと気にしません。というか、中身がどうであれ目の前にある食事が小人に持ってこさせる食事よりもおいしそうなのは言うまでも無いので、白雪姫は何も考えずに喜んで食べ始めます。


その頃、小人たちは必死に森の中を駆けずり回って白雪姫に献上する食事を探し回っていました。逆らったらものすごい目に遭うのはよく分かっていたので、大人しく従うしかないのです。寝込みを襲おうとしても返り討ちに遭うのは目に見えていますし。

「はあ……はあ……集まらない……」

「さすがに、これ以上取るのは危険ですよ……僕らが食べる分も無くなってしまいます」

「あの大飯食らい……遠慮も加減も知らないからな……」

小人たちの背中には集めた木の実や山菜が。全部白雪姫に捧げるための物です。

「し、仕方ない。怒鳴られるかもしれんが、一旦このまま戻ろう……このままではこっちの生活が危ないからな……」

小人たちは白雪姫の元に集めた物を持っていくことにしました。


「ああ! 美味しいわ! こんなにおいしい食事はいつ以来かしら!?」

王妃の差し入れを貪り食う白雪姫。その姿に姫の気品はありません。鷲掴みにして次から次へと口の中に流し込んでいく辺り、猛獣のような食べ方です。

「し……白雪姫様……集めてこいと言われた食事をお持ちしました……」

そんなところに食事を持ってきた小人が入ってきました。が、白雪姫にはその食事は必要な物ではありませんでした。

「え? ああ、これがあるから要らないわ! アンタたちが勝手に処分しておきなさい!」

そう言って突っぱねられてしまいました。普通なら怒っていいところですが、自分たちが集めた食料を自分たちのために使えると言う事でもあります。


「とのことだが……どうしようか?」

「食べていいのでは?」

「そうしますか」

小人たちは自分たちが集めた物を食べることにしました。まともな食事は数日ぶりです。白雪姫は小人たちが自分で手に入れた物を見ても取ろうとは思っていませんでした。何故なら自分の所には美味しい食事があるのですから。


ーーーー


「ああ! お腹が空いたわ! ……そう言えばあれの余りがあったわね」

白雪姫が食事をしてからわずか1時間後、再び空腹を訴えます。白雪姫の暴食は留まるところを知らないので、どんどん太って行ってしまうと言うわけです。ちなみに小人たちはまた外出していました。

「さて、食事を……!?」

食事の元まで行こうとしていた白雪姫はうっかり転んでしまい、そのまま地面に倒れ込んでしまいました。

「ぶへっ!?」

受け身を取ろうにも腹や腕に纏わりついた物が邪魔になって受け身を取れず、顔からダイブしてしまいました。

「……。……」

そしてそのまま白雪姫は気絶してしまいました。顔から地面に激突したせいで軽い脳震盪を起こしたようです。


小人たちが帰って来たのはその日の晩でした。

「うおお!? 姫が倒れている!?」

「も、もしかして死んでいるのか? いや、そうでなくても、気絶しているなら今のうちにさっさと運び出せば……」

暴虐と恐怖の象徴のような白雪姫。さっさと叩き出せればそれに越したことはありません。

「は、運び出してしまえれば……」

当然、家の外に運び出そうとします。力を合わせて持ち上げようとしますが……。


「ぬおお! お、重い! 重すぎる!」

「七人全員で協力しても運べないとは……!」

白雪姫は超絶なメタボ姫。小人たちの力では追い出す以前に運ぶことができません。

「む、無理だ……。運び出すためにもダイエットしてもらわなければ……」

「それしかない! こんなの運ぶの無理だ!」

小人たちにも(別の意味で)白雪姫をダイエットさせるという目標が出来たようです。


「し……食事! 食事の時間だわ!」

そんなこんなで夕食の時間になりました。白雪姫はたとえ気絶していても食事の時間になると食事を食べなければならないと言う本能によって必ず目を覚まします。

「あ、あら? どうして私こんなところで寝ているのかしら?」

地面で寝ていたことに気づき、慌てて起き上がる白雪姫。転んで受け身が取れずに気絶していただけなのですが、そんなことは本人の頭には残っていません。

「小人! 食事持ってきなさ……あら? まだ残っていたのかしら?」

昼食に食べた物がまだ残っています。全部食べようとして転んで気絶したのですから残っていて当然です。


「ああ、美味しいわ! でも、明日はもう入ってこないのよね……? ……明日からまた小人の不味い食事かしら?」

白雪姫の頭には食事の事しかありません。故にこんな心配をします。

「まあ、気にしなくていいわね!」

もちろん、白雪姫の思考は食べる事が最優先なので全く意味が無い心配なのですが。本当に素敵な頭です。


翌日。小人たちが外出した時にまたしても変装した王妃がやってきました。

「あ、あら! あなたは昨日の!」

白雪姫も覚えていたようです。

「美味しい食事を持ってきてくれたお方!」

こんな意味で。……最悪です。

「こんにちは、お嬢さん。よろしければ、今日も小人たちと召し上がってくださるかしら?」

「え、ええ。ありがとうございます」

もちろん、姫が一人で食べるだけですが。


「ああ! 美味しいわね! ……そう言えば、あの紅茶をそろそろ作らなければ不味いわね。昨日は飲んでいなかったけれど、やはりアレが無ければ……」

白雪姫の脳裏に「例の紅茶」が浮かびました。昨日は飲んでいなかったですが、やはりアレが飲みたくなります。

「早速作りましょう!」

そして砂糖や味醂を加えた暗黒紅茶を作り出す白雪姫。しかし……。

「頂きます! ……不味! 不味すぎて飲めないわ!? 辛い! 苦い!」

そう、白雪姫が知らない間に砂糖が塩に、味醂が苦汁に、ラードがでんぷんで固めた唐辛子にすり替えられていました。これは酷い。

「さ、砂糖! 砂糖は……ぶへあっ!?」

そして、またもや足をもつれさせて顔からダイブして気絶してしまいます。腕を咄嗟に前に出すためにも、ダイエットしなければいけませんね。


「ま、またしても姫が気絶している……」

「まさか、紅茶の材料の中身をすり替えたからか!?」

「し、しかし、我々はやれと言われたからやっただけですよ!?」

今日の白雪姫の悲劇の元凶は小人たちでした。ただ、彼らも何者かにそれをやれと言われただけだったようです。

「ば、馬鹿! あまりその事を口にするな! 姫が気絶していて何事も無く済めばいいが、もし気づかれれば私達に命はない!」

むろん、そんなことをしたのだと白雪姫が知ったらただでは済まないでしょう。文字通り、鉄拳で叩き潰されてしまいます。知らないふりをすることにしました。


「砂糖……はっ!? ……そう言えば、砂糖やラードの入った入れ物の中身がおかしくなっていたわね。……城に戻って取ってこなければ……」

気絶から目覚めた白雪姫。あの紅茶が無ければ落ち着けません。砂糖などを手にするため、城に戻ろうと考えました。しかし、ここであることを思い出しました。

「……財政が破綻するから痩せなければいけない……って言われたわね。……困ったわ。城に戻れないじゃない」

そう。白雪姫の暴食ぶりが凄まじいために城の財政が破綻する、と言われて城を出されたのです。これでは我慢するしかありません。……普通であれば。


「知ったこっちゃないわ! 何としても、あの紅茶を飲まなければ私の気が済まないのよ!」

そんなことで諦めないのがこのお姫様。おそらく、地獄の果てまでも砂糖を探しに歩いていくでしょう。白雪姫とはそのような人です。

「そうと決まればすぐに行かなければ! こんな所には用は無いわ! 待っていなさい! 私の食事!」

そして白雪姫は小人の家を飛び出して行ってしまいました。白雪姫が居なくなり、小人たちが泣いて喜んだのは別のお話です。


「え? 白雪姫!? 何処に向かうつもりなの!?」

王妃が城に戻ってくつろいでいた時、魔法の鏡に白雪姫が森を飛び出してどこかへ向かってしまう姿が映りました。

「まさかとは思いますが……あの紅茶のためだけにあの場所を飛び出したのでは?」

「……信じられないわ……」

そんなにまでしてあの紅茶が飲みたいのだろうか……。王妃は頭を抱えています。

「ど、どうします……?」

「もう何も言えないわ……幸いあの子の向かっている方向はこの国じゃないし、もう旅の無事を祈った方が良いかもしれないわね……」

さすがにここまでされると、王妃もさじを投げてしまいました。紅茶を切り離すことさえできればまだしも、それが出来なかったのですから。


「……ああ、紅茶が飲みたいわ」

一方その頃、白雪姫は隣の国まで来ていました。紅茶を作ろうと材料を求めるうち、どんどん変な方向に進んでいったようです。

「ちょっと待て! 金! 金払え!」

「……」

もちろん、道中の屋台などからはちゃんと食事を頂いていました。無銭飲食で。

「食い逃げだ! 捕まえろ!」

「私の食事の邪魔をするんじゃないわよ!」

そんなことをすれば当然兵士がやってくるわけですが、兵士も周囲の群衆も白雪姫は片っ端から倒していきます。

「ふう……私に逆らうからそうなるのよ」

そして、すべての邪魔者を倒した白雪姫は屋台の食事を根こそぎ食べ、そのまま寝てしまいます。暴れ疲れてしまったのでしょう。

「これはいったいなんの騒ぎだ……な、何だこの女性は……」

「お、王子様……この女、無銭飲食のみならず我々全員を叩き潰して……」

白雪姫が寝ているときにこの国の王子が来て、事情を聴いています。……どう考えても白雪姫が悪いのは疑いようがありません。

「分かった。一応、牢屋に入れておけ」

「分かりました……って、重い! 重すぎます!」

当然白雪姫は牢屋に放り込まれてしまいました。


「ああ、よく寝たわ……って、何なのこれは!?」

白雪姫が目を覚ますと、何故か牢屋に放り込まれていました。

「無銭飲食に暴力。言い逃れは出来ないぞ」

「煩いわね!」

白雪姫が鉄格子を握りしめます。まあ、鉄格子が破壊されることなど「ミシッ」

「な、まさか……」

「私の食事を……邪魔するんじゃないわよ!」

鉄格子は白雪姫にあっけなく握りつぶされてしまいました。彼女は化け物か何かでしょうか。

「……君、食事が欲しいのかい?」

鉄格子を破壊して今にも脱走しようとする白雪姫の所にこの国の王子がやってきました。


「ええ! 当然じゃない!」

「なるほど。……じゃあ、食事をあげる代わりに手伝ってほしい事があるんだが構わないかい?」

「食事を……本当!?」

「ああ。君が望むなら何でも取りよせて構わないよ。ただ、僕たちを手伝ってくれればね」

「臨むところよ!」

そして白雪姫は、王子の誘いにあっさりと乗ってしまいます。昨日まで小人の家で窮屈な暮らしをしていた上に紅茶が飲めなかったのです。仕方ないでしょうね。


ーーーー


「あら、結婚式の招待状? ……隣の国の王子が?」

白雪姫が森から出て行ってから一年以上経ったあるとき、王妃の元に隣の国から結婚式の招待状が届けられました。

「王子が王になるみたいだけど、王妃は誰かしらね?」

「さあ……行ってみるしかないかと」

魔法の鏡の言うとおり、現地に行ってみるしかないでしょう。そう考えた王妃はすぐに出発の準備をして隣の国に向かいます。


「……隣の国って、こんなに屋台が多かったかしら?」

「それよりも、何ですか、この大量の倉庫は……」

王妃と魔法の鏡の目に飛び込んできたのは、一年でまるで別物のように変わってしまった隣の国の城下町でした。道には屋台がずらりと並び、その後ろには巨大な倉庫が大量に存在しており、肝心の家は倉庫の上に乗っていました。

「……何があったのかしら? 兵隊がものすごく疲れ果てているけど……」

それに、兵隊たちは皆今にも倒れそうに見えます。常にふらふらしており、いつ倒れてもおかしくありません。体はやけに引き締まっていますが。


王妃と魔法の鏡が不思議そうに町を歩いていた時、伝令が町に発せられます。

「騎士団の最高顧問兼新たなる王妃のために、砂糖、みりん、ラード、蜂蜜を大量に入れた例の紅茶を作って差し上げろ! 急げ!」

「……ま、まさか……」

「あんなものを頼むのは白雪姫くらい、でしょうね。……一体何があったのやら」

「騎士団の最高顧問? ……本当に、何があったのかしら……」

白雪姫と騎士団の顧問……王妃や魔法の鏡でなくてもまったく結びつきません。不思議に思いつつも、王妃と鏡は結婚式場に向かいます。


「ああ、これは隣の国の王妃様! 良くここに来てくれました!」

王妃と鏡が式場に入ると、王子が出迎えてくれました。

「……結婚式への招待、ありがとうございます。……ところで、町中のこの異様さは一体……」

王妃はさっそく町中の異様さについて問いただしてみます。

「ええ。一年前に突如現れた彼女を養うための措置ですよ。何せ食事の摂取量が半端ではないので、既存の食料庫では足りなくなりましてね……それに、姫……いや、王妃曰く、腹いっぱいの食事こそ何よりも重要! らしいですから。それに、食後の紅茶も欠かさないですからね」

王子がそう言い終えた直後、式場の奥から地響きが響き渡ります。地響きとともに式場に姿を現したのは、腕も体も更に横に大きくなってしまった白雪姫でした。彼女が歩くたびに床が一部陥没します。


「あなた! 例の紅茶を早く持ってきなさい! 待ちくたびれてここまで来てしまったわ!」

「ああ、分かったよ! 今手配しているからもうしばらく待っていてくれ!」

白雪姫の凄まじく太った身体を見た王妃と魔法の鏡は同時に頭を抱えます。

「……ますます太ってしまったようね……」

「どうしてこうなったんでしょうか……」

白雪姫の身体は城を出たときより、4回りほど大きくなっていたのですから、当然かもしれません。この後結婚式の後の披露宴で出会いのきっかけを聞いた王妃と魔法の鏡は更に頭を抱えることになってしまうのですが、それはまた別のお話でございます。

目を通していただきありがとうございます。

もし求めるならば、白雪姫作の砂糖、ラード、蜂蜜、味醂入り紅茶を飲む権利を与えましょう。

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