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《魔法使い》(ソーサラー)


■《魔法使い(ソーサラー)


 正式にはオルガノン症候群発症者。医学的には先天的な脳の異常発達症状を発症した者を指す。

(ちなみに『オルガノン(Oragunum)』とは、ギリシャ語で「道具・器官」を意味する)


 この『病気』の特徴は、ブロードマンの脳地図における細胞構築学的区分において、通常の人間の52野にプラスし、前頭葉部分に6野多くなること。その追加領域は、通常のヒト大脳部分とは半ば独立しており、生物脳にはありえない、コンピュータに似た情報制御を行っている。ただし、あくまでも似た形ではあり、実際のパソコンとは仕組みが異なる。(パソコンは制御装置/演算装置/記憶装置/入力装置/出力装置の5つから成る)


○制御コンポーネント野

 パソコンにおけるCPU。

 主記憶コンポーネント野に格納されているプログラムを受け取り、それを解読し、各コンポーネントに指令を出す。


○演算コンポーネント野

 パソコンにおけるCPU。

 主記憶コンポーネント野に格納されているデータを受け取り、制御コンポーネント野の指令に従い、それを処理する。


○主記憶コンポーネント野

 先天的脳機能情報格納。いわばOS専用の格納領域。パソコンのメインメモリとは機能が若干異なる。

 『知識』と『経験』から、実際に超常現象を起こすプログラム――《EC-Program》を半無意識的に作り出す機能は、ここに含まれている。


○補助記憶コンポーネント野

 後天的脳機能情報格納。パソコンにおけるハードディスク。

 実際に《魔法》を発動するための術式――《EC-Program》は、ここに格納される。


○モデムコンポーネント野

 アナログ的処理を行う従来型生物脳野と、機械的処理を行う異常発達脳部機能野との橋渡しを行う。

 コンピュータのデジタル信号を電話回線などのアナログ信号に変調する変復調装置に相当。

 『知識』と『経験』から術式を作るために、生物脳部分からデータ読み込みをする場合、ここを中継する。

 ただし基本的には、その情報のやり取りは一方通行で、《魔法使いの杖(アビスツール)》を持たないと、変質部分の大脳野には自らの意識でアクセスできない。


○入出力コンポーネント野

 USB端子やLANポートに相当。

 脳波通信による外部入出力を行う。

 《魔法使いの杖(アビスツール)》とのリンクはここを使用する。



 DNA(デオキシリボ核酸)はアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)の4つの塩基からなるが、それぞれの塩基が一対一で特定の塩基としか結びつかないという特性があり、半導体より遥かに複雑な回路を形成するナノ・デバイスとなる。その異常発達した脳機能野は、その仕組みでバイオコンピュータを形成する。それは現在のスーパーコンピュータの演算速度の100万倍、エネルギー消費量は1億分の1という、比較にならない性能を発揮する。(作中の技術レベルは、現実の2000年代とほぼ同等) 

 《魔法》を使うためには、空間の《マナ》との情報通信を行う必要がある。その情報処理を行うには、世界最高峰のスーパーコンピュータであっても処理能力が足りないために、使用が不可能。だから《魔法》の使用には、生体コンピュータである《魔法使い》が必須。


 こう書くとオルガノン症候群患者が複雑怪奇な生き物であるが、特徴はそれだけであり、他は普通の人間と全く変わらない。

 その能力の本格的な行使には、インターフェースとなる電子機器が必要であるため、高度な演算能力を持つとはいえ、知能面において例外なく高い知能指数を持つということはなく、平均値も普通の人間と同等。


 この先天性異常の発症確立は、およそ1千万分の1。遺伝学上、DNAのどの塩基が関わって発症するのか、(公式には)発見されていない。また《魔法》が世界に現れて30年余しか経過しておらず、血縁により遺伝するのか現状では不明。(世界最初期の《魔法使い》は、最高齢でもまだ30歳。その子供である第2世代の《魔法使い》の遺伝情報が少ないため)


 尚、この症状を発症した者を、『オルガノン症候群発症者』と正式に呼ぶことは、医学的な公的な場を除いて、まずない。

 別項に記す《魔法》と通称される現象を起こすことが可能となるため、《魔法使い(ソーサラー)》と通称(あるいは蔑称)されるのが一般的。その利便性と重要性から、作中の社会では、《魔法使い》は国家に管理される貴重な人的財産として扱われるのが、世界中の国で普通になりつつある。

 人口一億人以上の国家の場合、幼少期の検査で、症状の兆候が見られた子供は、少数ながらも最高の教育を施す専門教育機関に集めて、国家事業として《魔法使い》に育成する。


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