第7話 ぬいぐるみ
第7話目です。
達也が佳奈の笑顔を取り戻すために考えた、次の方法は?
最後まで楽しんでもらえたら、嬉しいです。
公園でデートをしてから1週間。佳奈に笑顔が戻ることは無かった。
「簡単に考えすぎてたな…」
佳奈との出会いの場所に行って、その時のことを思い出せばきっと笑ってくれると俺は思っていた。けど…現実は、そんなに甘くなかった。でも、俺は諦めない。諦めてたまるか! 絶対に佳奈の笑顔を取り戻すと決めたんだ!
「佳奈の喜ぶこと…」
そう思いながら、考えていると1つ案が思いついた。そして、俺は家を飛び出し、デパートへと向かった。
「いらっしゃいませ~」
俺が向かった先は、おもちゃ売り場。佳奈は、ぬいぐるみが大好きで、プレゼントすると必ず喜んでくれた。その時の笑顔は、いつもよりもまぶしく、輝いている。だから、ぬいぐるみをプレゼントしたら、笑顔を取り戻してくれるのでは、と考えたのだ。まあ、単に佳奈の喜ぶ姿が見たいというのが本心なのだが…
「最近、プレゼントしてなかったし、何か特別かわいいものがいいな」
そう思い、ぬいぐるみの売っているコーナーに行こうと思うのだが、今日は日曜日。子供連れのお客さんでごった返していて、なかなか進めない。できれば、あまり遅くならないようにしたいのに…。しかし、気持ちとは裏腹に5分経っても、10分経っても、全くと言っていいほど進めていない。俺は何回も腕時計を確認した。いつの間にか30分が経っていた。レジもかなり混んでいて、見てるだけで嫌になりそうだ。
「う~早く行きたいな…」
今日は佳奈に『家に行く』と伝えてある。だからこそ、手ぶらで行きたくない。プレゼントをすると決めたからには、必ず喜んでくれるプレゼントがしたい。しかし、そんな気持ちを嘲笑うかのように時間が過ぎていく…。それから1時間。ようやく俺は、ぬいぐるみのコーナーにたどり着いた。多分、1時間30分前までいた場所から距離を考えると20メートルもないだろう。
「はあ、やっとだよ」
俺はもう、疲労困憊という感じだった。俺は、もう一度、腕時計を見る。15時30分か…なるべく早く行きたいからな~。俺は、ぬいぐるみを見た。くま、うさぎ、ねこ、いぬ…たくさんの種類がある。さすがは大型デパートの中のおもちゃ売り場だ。規模が違う。
「確か佳奈は、特にくまのぬいぐるみが好きだから…」
くまのぬいぐるみを見ると様々なくまのぬいぐるみが置いてあった。寝ているくま、怒ってるくま、泣いてるくま…そして、笑っているくま。俺は最初から1つ決めて、ここに来た。それは、絶対に笑っているぬいぐるみにしよう、と。そこにあった笑っているくまのぬいぐるみは大きさもそこまで大きくなく、理想通りのぬいぐるみだった。俺は、そのぬいぐるみを1つ手にとってレジへと向かった。レジは8つあるのだが、相変わらずどこも長蛇の列だった。それから1時間後の16時30分、会計が終わり、ようやく俺は店から出た。ぬいぐるみ1つを買うだけに2時間30分。こんなに時間がかかるなんて考えもしてなかった。でも、無事くまのぬいぐるみを手に入れれた。佳奈が喜んでくれて、笑ってくれればいいのだが…。不安と期待を抱きながら、俺は佳奈の家に向かった。
佳奈の家の前に到着すると今までに無いような緊張感に襲われた。
「ふ~落ち着け、俺」
自分にそう言い聞かせながらインターホンを押す。
『はい?』
聞こえてきたのは佳奈の声だ。
「竹中達也です」
『やっと来たよ。今、開けるから待ってて』
佳奈が玄関に歩いてくる足音が聞こえた。そして、鍵を開けてもらい、佳奈の家に入った。
「おじゃましま~す」
「遅かったね」
「あ~ちょっとあってね。ごめんごめん」
「別にいいけど…」
俺は、いつも通り佳奈に案内され、佳奈の部屋に行く。佳奈の部屋は、いかにも女の子らしい部屋で好きなぬいぐるみが並べられたりしている。俺があげたぬいぐるみもあって、いつもそれを見ると嬉しくなる。
「佳奈、体調とかは大丈夫?」
「うん。最近は大丈夫だよ」
「よかった。あ~そうそう。佳奈にプレゼントがあるんだ」
「プレゼント?」
俺は今日、買ったぬいぐるみを取りだす。
「はい」
「わ~ありがとう」
やっぱり笑顔の無い『ありがとう』は、どうしても不自然に思えてしまう。早く笑顔を取り戻してくれればいいのだが…
「ねえ、たっちゃん」
「ん? どうした?」
「あのね…」
この後、佳奈からあんなことを言われるなんて思ってもみなかった…。
最後まで読んでくださってありがとうございます!
第8話では新しい人が登場する予定です。第8話も早く更新できるように頑張りますので、よろしくお願いします!