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空っぽの心  作者: ヒロ
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第4話 決意

第4話目です。


佳奈の笑顔が戻らないことを受け入れることのできない達也。悩んだ達也が出した答えは…?

 翌日、俺は佳奈の入院している病院に来た。昨日は笑ってくれなかったけど、今日は1日経ったし、佳奈も落ち着いただろう。佳奈の笑顔が見れるはずだ。そう思いながら、俺は病院に入り、佳奈の病室へと向かった。


「佳奈」

「あっ…たっちゃん。お見舞いに来てくれたんだ。ありがとう」


 その言葉とは裏腹に佳奈に笑顔は無かった。俺は佳奈の『ありがとう』という言葉に嬉しさを感じることができなかった。


「たっちゃん、どうしたの?」


 俺が考え事をしていると、佳奈が俺の顔を覗き込んで言った。


「い…いや、何でもない」


 そう言って、俺は笑う。そうだ、きっと佳奈は俺が笑ってなかったから、笑わなかったんだ。しかし、俺を待っていたのは残酷な現実だった。


「?」


 佳奈は、ただ首を傾げていただけだった。もちろん、笑顔は無い。俺に受け入れたくない現実がどんどん迫ってくる。『佳奈が笑わない』という現実がすぐ側までやってきていた…。












 俺は一旦、病室から出て、待合室のソファーに座って考えた。30分、1時間、2時間…どんなに時間が経っても自分の中から出てくる答えは1つ…


『これは夢だ。現実なんかじゃない』


 これだけだった。


「こんにちは」


 そう思っていた時、嫌な声がした。俺はゆっくりと顔を上げる。そこには予想通り、残酷な現実を告げる医師がいた。


「あなたは佳奈さんの彼氏さんですよね?」


 俺は、この人の質問に答えたくなかった。きっと質問に答えたら、また残酷な現実が待っているから…


「佳奈さんの笑顔を取り戻す方法が1つあります」


 予想していなかった言葉が俺の耳に届く。


「えっ?」

「あなたが佳奈さんを笑わせてあげればいいんですよ」

「佳奈は俺が笑っても笑ってくれませんでした…」

「たった1回で何を落ち込んでいるんですか。佳奈さんは記憶喪失になった訳ではありません。あなたが自分の彼氏だということも佳奈さんはわかっています。佳奈さんは明日、退院できます。佳奈さんが笑うかは…あなた次第なんですよ」


 その言葉を聞くと急に怖くなった。佳奈の笑顔が俺にかかっている…


「じゃあ、私は診察があるのでこれで。そうそう、私、田中と言います。何かあったら、呼んでください」


 そう言って田中医師は診察室に戻っていった。佳奈の笑顔が俺にすべてかかっているという重圧と俺が取り戻すという気持ちがぶつかり合っている。佳奈の笑顔は取り戻したい。でも、俺がダメだったら…一生、佳奈は笑わない。


「どーすりゃいいんだ…」


 結局、答えが出ないまま俺は佳奈のいる病室に戻った。


「たっちゃん、どこ行ってたの? 何も言わないで何時間も戻ってこないから心配したんだよ」


 佳奈は少しお怒り気味だった。


「ごめんごめん」


 そう言って俺は笑った。今、佳奈に心配をかけてはいけない。絶対に。とにかく佳奈の笑顔に繋がる話をするんだ。


「…………」


 お互いの間に何とも言えない空気が流れる。何か話題を…こんな時に限って何も思いつかない。


「ねえ、たっちゃん」


 この沈黙を先に破ったのは佳奈の方だった。


「な…何?」


 何故かわからないが、いつも以上に緊張した。


「私…笑うことを忘れちゃったんだよね…」

「…………」


 佳奈が悲しそうにそう呟く。俺は何も言えなかった。


「たっちゃん、笑えない私のことを好きでいてくれる?」

「…うん。当たり前だろ。佳奈のことが俺は大好きだ」


 確かに佳奈から笑顔が無くなったのは辛い。だけど…だからと言って俺が佳奈を嫌いになるなんてありえない。俺は佳奈が大好きだから。


「たっちゃんは優しいな…」

「佳奈、そんな顔するなよ」


 俺は佳奈の表情があまりに悲しそうで直接、見ることができなかった。


「ありがとう」


 『ありがとう』…佳奈のこの言葉で俺の涙腺は限界だった。


「たっちゃん、どうしたの?」


 俺の目からは涙が止まらなかった。そして、俺は1つの決意をした。


「わっ! たっちゃん?」


 俺は佳奈を強く抱きしめる。


「佳奈…絶対…絶対に佳奈が笑えるように俺、頑張るから。絶対に俺は佳奈から離れないから」

「たっちゃん…ありがとう」


 いつ佳奈の笑顔が戻るかわからない…俺は何日、何ヶ月、何年経ったとしても必ず佳奈の笑顔を取り戻す、そう決意した。

読んでくださったありがとうございます!!


佳奈の笑顔を取り戻す決意をした達也。これから待っているものとは…?

第5話以降も頑張りますので、よろしくお願いします!!

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