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空っぽの心  作者: ヒロ
22/25

第22話 思い出の場所②

第22話目です!


ジェットコースターで佳奈に振り回されている達也の運命は? そして次に向かった場所は?

 午後4時。佳奈は満足したのか、ようやく遊園地を出た。それまで、ほとんどずっとジェットコースターに…思い出しただけでも恐ろしい。


「たっちゃん、楽しかったね~」


 佳奈は上機嫌だ。それに比べて俺は…


「う…うん。楽しかった…ね」


 自分から佳奈を遊園地に連れていったので、佳奈が楽しんでくれれば成功なのだが…俺が楽しめたのは遊園地にいた約6時間のうち、1時間くらいだっただろう。


「次はどこに行くの?」

「もう少しで着くよ」


 遊園地を出て、次にやってきたのは…


「海だー」


 佳奈と付き合ってから何度も来ている海だ。デートの終わりは必ずここと言っても過言ではない。


「ここで花火したの覚えてる?」

「覚えてるよ。あの日は特別だもん」


 付き合って3ヶ月経った頃のデート。俺と佳奈は、ここで花火をした。


「たっちゃんが初めて私のことを愛してるって言ってくれたよね」


 佳奈は、そう言って恥ずかしいのか下を向く。そう、あの日は初めてだらけだった。












 「たっちゃん、今日もありがとね」


 空が夕焼けに染まる頃、海に到着した俺と佳奈は夕日を見ながら話していた。


「俺さ、佳奈に出会えて幸せだよ」


 俺は不意にこんな言葉が出てきた。付き合い始めてもう3ヶ月。あっという間だった。


「私もだよ。たっちゃんに出会ってなかったら、今の私はいないよ」


 そう言って佳奈はニコッと笑う。やっぱり佳奈の笑顔は輝いてる。俺は自然と口から言葉が出ていた。


「佳奈、愛してる」

「たっちゃん…やっと言ってくれた」

「えっ?」

「付き合ってから、そんなまっすぐな言葉を聞いたことなかったから…不安だったんだよ?」


 佳奈は俺の方を向いて言う。


「私も…私も愛してる」


 そして俺と佳奈はキスをした。優しく、一瞬のキス。付き合ってから初めてのキス。


「…………」


 お互い何も言わずにもう一度、唇を重ねる。今度は長く、深いキス。その日、俺と佳奈は長い夜を海で過ごした。











 「佳奈、今日のデートはどうだった?」


 思い出のある遊園地に行き、初めてだらけの海に来た。きっと佳奈は不思議に思っただろう。


「楽しかったよ。たっちゃんと行く場所は、どこでも楽しい」


 こんなことを言ってくれる佳奈が隣にいてくれる俺は幸せ者だなと感じた。ジェットコースターは勘弁してほしいけど…。


「……たっちゃん、ありがとね」


 少しの沈黙の後、佳奈が言った。


「いきなりどうした?」

「たっちゃんさ…今日のデートって私のために計画してくれたんでしょ?」

「…………」


 俺は何も言えなかった。


「たっちゃんが黙る時は当たってるってことだね。たっちゃんは優しいね。いつも私のことを考えてくれて」

「当たり前だろ。佳奈は俺の…」


 そこまで言って言葉に詰まる。


「『俺の』何?」

「俺の一番、大切な人なんだから」


 俺がそう言うと佳奈は静かに笑った。


「佳奈!」


 俺はつい叫んでしまった。今までとは明らかに違う佳奈の笑顔。


「どうしたの?」

「佳奈、笑える?」


 俺がそう言うと佳奈は首を横に振った。


「笑えないよ。たっちゃんの言葉が嬉しいって感じていても笑えないよ…」

「ごめん」


 このままだと佳奈が泣いてしまう。


「でも…私、最近幸せなんだ。裕美さんと仲良くできたし、こうやってたっちゃんと一緒に過ごせる。私は幸せ者だって」

「佳奈…俺も幸せ者だよ」

「たっちゃん…ありがとう」


 佳奈は、そう言って目を静かに閉じた。


「佳奈?」


 俺が呼びかけても何の返事も無い。一体、どうしたのだろうか? とりあえず俺は佳奈を車に連れていく。その間も佳奈を何度も呼んだが…。俺の目から涙が溢れる。


「佳奈! 返事をしてくれ! 頼むから…」


 その日、佳奈が俺の呼びかけに返事をすることはなかった…。

読んでくださってありがとうございます!


突然、返事の無くなった佳奈。一体、何が? 物語は終盤へと進みます。

第23話も頑張ります!

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