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空っぽの心  作者: ヒロ
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第21話 思い出の場所①

第21話目です!


土曜日は風邪を引いてしまった達也。日曜日は…?

 日曜日。俺は、すっかり元気になっていた。昨日の風邪が嘘みたいだった。


「達也くん、元気になった?」


 午前10時頃、裕美さんが俺の家に来た。


「元気ですよ。昨日は迷惑かけちゃってすいません」

「達也くんが元気ならいいのよ。ね、佳奈さん」


 裕美さんが佳奈にそう言うと佳奈は礼をして『ありがとうございました』と言った。裕美さんは、そんな佳奈を見て笑っていた。


「ところで今日は何か予定でもあるの?」


 俺は今日のことを決めていた。ただ、それは佳奈でさえ知らない。俺しか知らないのだ。


「今日は、たっちゃんがどこかに連れて行ってくれるみたいです」

「そうなんだ。じゃあ、私は帰りますかね~」

「すいません。せっかく来てもらったのに…」


 佳奈が謝ると裕美さんは『いいの、いいの』と言った。そして、


「達也くん、しっかりね」


 と俺の耳元で囁いた。俺は静かに頷く。佳奈は不思議そうに俺らを見ている。


「じゃあ、また来るね」


 そう言って裕美さんは帰った。佳奈は、まだ不思議そうに俺を見ている。


「ねえ。裕美さんと何を話してたの?」

「別に何でもないよ」


 佳奈に本当のことは言えない。佳奈は納得いかない感じだったが、これ以上は聞かないでくれた。


「そういえば…たっちゃん。どこに行くの?」

「内緒」


 今日は佳奈には一切、何も言わずに行くことにしていた。ゴメン、佳奈。


「楽しみにしてるよ」


 佳奈は、そう言って出発する準備を始める。俺も準備をしようと思った。それから15分。俺も佳奈も準備を終え、俺と佳奈は目的地へと出発した。











 まず最初にやってきたのは…


「ここは…私たちが初めてデートした遊園地?」

「そうだよ」


 俺と佳奈が付き合い始めてから最初のデートが遊園地だった。俺が1日パスポートを2人分用意して佳奈を誘った。後から聞いた話だと佳奈はデートの日、予定が入ってたらしい。俺とのデートのために予定を断って、来てくれた。


「何でここなの?」


 佳奈が不思議そうに俺に言う。


「いいから。ほら行くぞ」


 俺は詳しい理由を言わずに佳奈を半ば強引に遊園地の中へ連れていった。


「佳奈、何か乗りたいものある?」

「あるけど…チケットあるの?」


 佳奈にそう言われ、俺はポケットから回数券を取り出した。


「じゃーん。さっき買いました」


 俺が回数券を見せると佳奈は俺を見て、『ありがとう』と言った。そして、


「じゃあ私はジェットコースターに乗りたい」


 と言った。前にデートに来た時も佳奈は最初にジェットコースターに乗りたいと言っていた。


「佳奈ってさ、ジェットコースター好きなの?」

「うん。絶叫したりするの好きだよ」


 俺は『そうなんだ』と言って、苦笑いをする。佳奈とは対照的に俺は苦手だ。


「ほら、行くよ」


 佳奈も俺が苦手なことは知っている。佳奈は早く行きたいのか俺の手を引っ張って、どんどん歩いていく。ジェットコースター乗り場に到着すると日曜日ということもあり、列になっていた。


「30分くらいかかるって」


 佳奈が残念そうに俺を見る。


「まあ、まだ午前中だし、ゆっくりしようぜ」


 そんな話をしながら順番を待つ。俺は逃げ出しそうな自分を抑えていた。列はゆっくり前に進む。


「たっちゃん、大丈夫?」


 次は俺たちに順番が回ってくる。今になって佳奈は俺のことを心配する。


「だ…大丈夫だよ。心配すんなよ」

「そう? 苦手じゃなかったっけ?」

「苦手だけど…大丈夫」


 ここまできて『やめよう』なんて言えない。俺は意を決した。そして、前のジェットコースターが戻ってきて、乗っていた人たちが降りる。全員が降り、俺と佳奈は係員に案内されてジェットコースターに乗る。ゆっくりとジェットコースターは動き出す。


「大丈夫、大丈夫…」


 俺は必死に自分に言い聞かせた。ジェットコースターは最高地点に到着する。そして…


「うわあああああー」


 一気に降下し、スピードがどんどん上がる。俺は、それからの記憶があまりない。気付くとスタート地点に戻っていた。


「たっちゃん、大丈夫?」


 横で佳奈が心配そうに俺を見る。かろうじて俺は意識を保っていた。


「う…うん」


 今の俺には、これしか言えない。言葉が全然、浮かんでこない。ジェットコースターを降りた俺と佳奈は昼ご飯を食べるために遊園地にあったレストランに入った。


「ジェットコースター楽しかったね」


 ご飯を食べながら、佳奈がそう言う。佳奈は時々、意地悪なんだよな~。俺の気持ち知ってるくせに…。


「佳奈が楽しかったなら、よかったよ」

「たっちゃんは楽しくなかった?」

「記憶にない」


 本当に怖かった。死ぬと思ったくらいだ。


「ねえ、次は何に乗る?」


 ご飯を食べ終わった俺と佳奈は、これからの話をしていた。


「佳奈が乗りたいのでいいよ」

「じゃあ、今度はあのジェットコースター」


 即答だった。


「ま…待て、佳奈。またジェットコースターに乗るのか?」

「そうだよ」


 当然のことのように佳奈が言う。やっぱり佳奈は意地悪だ。こうして俺の地獄の時間が再び始まったのだ…。

読んでくださってありがとうございます!


思い出の遊園地にやってきた達也と佳奈。

何か達也は振り回されてる気が…。


第22話目も頑張ります!

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