表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空っぽの心  作者: ヒロ
19/25

第19話 病院で…

第19話目です!


裕美が『病院』と何度も言う理由は…?

そして…

 病院に到着した俺と佳奈を待っていたのは一枚の張り紙だった。


『誠に勝手ながら今日から数日の間、休まさせてもらいます』


 その紙には、この一文のみが書かれていた。病院が休ませてもらうって…どういうことだ?


「ねえ、どうしたんだろう?」


 佳奈が不安そうに俺に尋ねる。


「わかんないけど…」


 俺と佳奈が話し合っていると病院の中から看護師らしき一人の女性が出てきた。


「あの! すみません」

「はい?」


 俺が話しかけると気が付いたのか、こっちに来てくれた。


「一体、何があったんですか?」


 俺は早く真相が知りたかった。


「何も知らないんですか? そりゃあそうですよね…突然のことでしたし…」


 なかなか看護師さんは話してくれない。もしかして話しにくいとか…? それから少しして、看護師さんは話し始めた。


「今日、私が病院に来たら…田中医師が首を吊って自殺してたんです。病院の中で。私はビックリして、すぐに警察に通報しました。それから、緊急会議が開かれて…」


 俺は信じたくなかった。それは佳奈も一緒のことだと思う。あの田中医師が自殺したなんて…


「そ…そんなの嘘よ!」


 佳奈が叫ぶ。看護師さんは何も言わず、下を向いている。


「だから感情なんていらないのよ」


 俺と佳奈が田中医師の自殺にショックを受けていると、いつの間にか裕美がいた。


「アンタは…アンタは何が楽しいんだ!」


 俺は裕美の胸ぐらを掴んでいた。もう限界だ…今までいろんなことをされた。耐えてきたけど…さすがに限界だ。


「楽しい? たっちゃん、それは違うよ」

「『たっちゃん』って呼ぶなよ! 呼んでいいのは佳奈だけなんだよ!」


 俺は怒りで気が狂いそうだった。この人は…この人だけは絶対に許せない。


「たっちゃん、落ち着いて」


 佳奈に抑えられ、俺は我を取り戻す。


「ゴメン…」


 俺がそう言うと佳奈は首を横に振り、裕美の方を見た。


「あなたは何がしたいんですか?」


 佳奈がそう尋ねると裕美は笑って、


「前も言った通り、感情を操りたいだけだよ」


 と言った。感情を操ることは危険なことだ。なのに、この人は…


「私、あなたに感情を操られていた時、すごく不快で辛かった」

「あら、そう」


 裕美は、そんなことどうでもいいと言うかのような返事をした。


「あなたは人の感情がわかるから、辛いと思う。けど、考え方によっては感情がわかるということは良いことでもある」

「…………」


 裕美は黙り込んだ。どうやら佳奈の言いたいことがわかってるみたいだ。


「あなたもきっとわかってるはず…たっちゃんと接したのは偶然なんかじゃない。あなたは本気でたっちゃんを助けたいと思ってた」

「やめろ! やめろ…」


 裕美にとって佳奈の言葉は胸に刺さるのだろう。


「あなたは悪い人なんかじゃない。私は…そう信じてる」


 俺は、ただ佳奈を見ているしかなかった。あんなに酷いことをされたのにも関わらず、佳奈は裕美が『悪い人じゃない』と信じている。正直、俺には考えられなかった。


「だから…もうこんなこと、やめましょう」


 佳奈は膝から崩れ去っている裕美に近寄り、手を差し伸べた。裕美は佳奈の手を握り締めた。


「何で…何であなたは私に…」


 裕美は泣いていた。今までの素顔は演技だったかもしれない。けど…今の裕美は…


「さっきも言ったけど…あなたは悪い人じゃない。というか、悪い人になっちゃいけない」


 俺は佳奈を見て驚いた。あれ…今、一瞬だけ…?


「どうしたの? たっちゃん?」

「い…いや、何でもない」


 俺の見間違いかな…? 佳奈が笑った気がしたんだが…


「ごめんなさい。ごめんなさい…」


 その後、裕美は泣きながら、『ごめんなさい』と何度も謝った。












 「達也くん、佳奈さん…本当にごめんなさい。私…」

 「もういいって言ったじゃないですか」


 俺は、そう言って佳奈を見た。佳奈は大きく頷いた。


「ありがとう…本当にありがとう」


 裕美さんは俺たちの前に2度と姿を現さないとまで言っていた。


「裕美さん、私の笑顔を取り戻すために手伝ってくれませんか?」


 佳奈がいきなりそんな提案をする。一体、どうするつもりだ…?


「私にできることなんて…」


 突然のことに裕美さんは困惑している。


「裕美さん、あなたは人の感情がわかる。ということは人がどんな時、笑うのかがわかる。それをもとにしたら…もしかしたら、私の笑顔が戻るかもしれないって思ったんだけど…たっちゃん、ダメかな?」


 佳奈は困ったというように俺を見る。


「いいんじゃないか? まあ裕美さん次第だけど」


 そう言って俺は裕美さんを見る。


「私で…いいの?」

「裕美さんだからこそ、頼むんですよ」


 佳奈が力強くそう言うと、


「じゃあ…お願いします」


 裕美さんは深々と頭を下げた。こうして俺と佳奈、それに裕美さんを加えて佳奈の笑顔を取り戻すことになった。

読んでくださってありがとうございます!


佳奈の言葉が裕美に響いて、裕美は自分がやってきたことに気がつきました。そして、裕美も一緒に佳奈の笑顔を取り戻すことに。


第20話もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ