第17話 佳奈の気持ちと俺の気持ち
第17話目です!
裕美に圧倒されてしまった達也。これからどうすれば…?
達也と佳奈は一体、どうなる?
俺と佳奈は病院から出た。裕美が診察室から出た後、『今は1人にしてくれ』と田中医師に言われた。
「…………」
俺も佳奈も何も話さなかった。気まずい雰囲気が流れる。この雰囲気に耐えれなくなったのは俺の方だった。
「佳奈、ゴメンな」
俺は自然と謝っていた。結局、真実を知るどころか、佳奈を悲しませてしまうだけになってしまった。
「何で謝るの?」
佳奈は理解できないというように俺の顔を見る。
「だって…また佳奈に迷惑かけたし、悲しませちゃったし…」
「私、たっちゃんのこと悪いって言った?」
佳奈は、そう言って遠くを見る。
「私ね…嬉しいっていう感情は、あまりわからないけど、今日は嬉しいって思ったよ。たっちゃんが裕美さんから私を必死に守ってくれたんだもん。嬉しいよ」
「佳奈…」
「だからね、たっちゃんが謝ることなんて何もないんだよ。たっちゃんがいてくれるだけで私は幸せ。たとえ感情が欠けていたって…」
俺は静かに佳奈を抱きしめる。
「佳奈、辛いだろ…辛いなら言ってくれよ…」
俺には感情を読む力なんて無い。けど…佳奈の気持ちが痛いほどわかる。
「たっちゃん…辛いよ。辛いけど…負けたくないよ…」
「俺もだ。絶対に負けたくない。佳奈、1人じゃないんだぞ? 俺がいるから」
きっと佳奈は何も言わないが、いっぱい悩んでいるだろう。だからこそ、何とかしてあげたい。
「ありがとう。たっちゃんは優しいね」
俺と佳奈は家に着くと疲れから眠ってしまった。
それからどのくらい眠っただろうか。俺が起きると辺りは真っ暗になっていた。俺は携帯で時間を確認する。午後8時だった。俺は佳奈を起こさないように部屋の電気は点けなかった。
『所詮そんなものだよ。人間は。感情任せに言う。後のことなんて何も考えてない。そんなことなら感情なんていらない』
今日の午前中の裕美の言葉を思い出す。俺は裕美に圧倒された。悔しかった。でも、裕美の言ってることもわからなくはない。
「どーすりゃいいんだよ…」
俺の中で1つの言葉が思い浮かぶ…『諦め』。これを受け入れるということは佳奈の笑顔は一生、戻ってこない。そして、裕美の言ってたことを受け入れることになる。そんなことを俺が考えていると…
『たっちゃん』
突然、佳奈から名前を呼ばれ、俺はドキッとした。
「佳奈?」
振り向くと佳奈は寝ている。どうやら寝言のようだ。
『たっちゃんは私のこと、どう思ってるの?』
一体、佳奈はどんな夢を見ているのだろうか? 俺とケンカでもしてるのか?
『私に笑顔が無いから、私のこと嫌い?』
『そんなことない』そう心の中で告げる。
『じゃあ何でそんなに不安な顔をするの? 私が笑えないからでしょ?』
まるで今の自分のことを言われてるみたいで苦しかった。
『たっちゃん、私は笑顔なんて戻らなくてもいい。たっちゃんがそばにいてくれて、笑ってくれればそれでいいの』
夢の中とは言え、佳奈の気持ちを聞いている気がした。いや、これが佳奈の気持ちだろう。
「佳奈、ゴメンな。俺、こんなんじゃダメだよな…」
さっき『諦める』なんて思ってしまった自分を責めた。佳奈は自分が笑えないのに俺が笑ってくれることを願ってる。俺だって、佳奈が笑ってくれることを願わなければいけないのに…それなのに俺は…
『プルルルル…』
俺がそんなことを考えていると突然、電話が鳴った。俺は受話器を取る。
「もしもし?」
「こんばんは」
俺は、すぐに受話器を置いた。電話を切った。
「もう…いい加減にしてくれよ…」
電話の主は裕美だった。一体、俺たちに何の恨みがあるんだよ…。
『プルルルル…』
電話は再び鳴り出す。俺は耳を塞いだ。怖い怖い怖い…しばらくすると俺が出ないとわかったのか、電話は鳴り止んだ。俺は明日のことを考えていた。会社には裕美がいる。でも、佳奈には言えない。俺は不安と悩みで眠れなかった…。
読んでくださってありがとうございます!
佳奈の本当の気持ちを聞いた達也。しかし、どこまでもやってくる裕美。精神が壊れそうな状況で達也は耐えられるのか?
第18話もよろしくお願いします!