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空っぽの心  作者: ヒロ
13/25

第13話 再出発

第13話目です。


笑顔が少し戻った佳奈。このまま佳奈に笑顔は戻るのか? そんな中、達也の気持ちとは…?

 次の日、佳奈に体調の変化は特になく、元気になっていた。ただ、少し心配だったので、俺は仕事を休み、佳奈を病院に連れていった。


「も~たっちゃんったら、心配性なんだから。私は大丈夫だって」

「もしも何かあったら大変だろ。一応だよ」


 佳奈に万が一のことがあったら大変だ。それに俺は病院に行って、田中医師と話がしたかった。昨日の佳奈の変化は話しておくべきだろう。病院に着いた俺と佳奈は待合室で話をしていた。


「たっちゃん、仕事大丈夫なの?」

「うん。休み取れたんだ」


 正直、休みは取れないと思っていた。だが、上司の機嫌が良く休みが取れたのだ。運が良かった。そんなたわいも無い話をしていると、


「新山佳奈さん、どうぞ」

「はい」


 佳奈が名前を呼ばれ、俺と佳奈は田中医師の待つ診察室へと入った。


「佳奈さん、それに達也さんまで…どうしたんですか?」

「実は…」


 俺は昨日あったことを田中医師に全て話した。


「そんな…佳奈さん、大丈夫でしたか?」

「はい。でも…今でも思い出すと怖いです」


 そんな佳奈の言葉を聞いて、俺は胸が苦しくなった。佳奈が悲しむことになってしまう。そう思いながら佳奈の顔を見た。ちゃんと田中医師の言葉に反応してるし、大丈夫そうだ。『佳奈は強いな』そう俺は思った。


「じゃあ、一通り検査しときますね。達也さん、少し待っててもらいますか?」

「あ、はい」


 佳奈は俺に『いってくるね』と言って、検査シートをもらって、各種検査に向かった。俺は田中医師に昨日のことを話そうと思った。


「あの…少し話があるんですが、いいですか?」

「話…ですか? いいですよ。どうかしました?」

「昨日、佳奈が笑いました」


 そう言うと田中医師は机を叩き、立ちあがって


「本当ですか!」


 と言った。あまりの迫力に俺は少し何も言えなくなった。


「あ、すいません。興奮しちゃって」

「いえ。笑ったと言っても、一瞬です。かなりぎこちなかったですし…」

「それでも、良くなっている証拠ですよ」


 田中医師の言うとおり、確実に佳奈は良くなっている。


「達也さん、この調子で行けば、必ず佳奈さんに笑顔が戻りますよ」

「そうですね。俺、頑張ります」


 俺は佳奈が戻ってくるまで、田中医師と話していた。











 「問題はなさそうですね」


 田中医師から、そう告げられ、俺も佳奈もホッとした。何かあったら、どうしようとずっと心配だった。田中医師は、それぞれの検査の説明を詳しくしてくれた。


「また来週の水曜日に来てください」


 こうして田中医師の診察は終わった。


「佳奈、良かったな」

「だから言ったでしょ。大丈夫だって」

「まあ、何ともなかったから良かったよ」

「そうだね。たっちゃん、ありがとう。大好き!」


 そう言って佳奈は俺の手を握る。俺は途端に緊張した。何だろう、この感じ…? いつもとは違う。


「たっちゃん?」


 佳奈が俺の顔を覗き込む。俺は恥ずかしくて顔を背ける。


「あ~たっちゃん、恥ずかしがってる」

「そ…そんな訳ないでしょ」


 ヤバい、恥ずかしくて死にそうだ…。


「たっちゃん、今日もたっちゃんの家に行っていい?」

「もちろん。佳奈を1人にさせれないよ。落ち着くまでは俺のところにいろよ」

「うん」


 佳奈は自分の家に帰っても散らかりっぱなしだし、佳奈のお母さんはケガをして入院中。佳奈は家で1人になってしまう。こんな状況で佳奈を1人にさせることなんてできない。俺は佳奈を連れて、自分の家に向かった。


「おじゃましまーす」


 俺の家に着いて、佳奈はそう言う。俺は考え事をしていた。前進しているという確信を持てたとは言え、佳奈の気持ちは、本当に変化したのだろうか? 佳奈は昨日、笑った。その時、どう思ったんだろうか? 本当に俺は佳奈の笑顔を取り戻すのに前進しているのだろうか?


「たっちゃん?」


 不安そうな顔をして、俺を見る佳奈。俺は、そんな佳奈を見て、考え事が全て吹き飛んでいった。


「俺、バカだな…」


 思わず自分の気持ちが声に出た。俺、何を気にしてるんだろう…。ほんとバカだ。


「たっちゃんはバカだよ」

「…………」

「いつもいつも私のことばかり気にして…本当のバカだよ。最初に出会った時は見ず知らずなのに私が話すまで待って、去年は私をかばってケガして、今は私が笑えないのを気にして…ほんとバカだよ」

「…………」


 俺は何も言えなかった。それは自分自身が弱いと俺自身が思っているからだ。いつも俺は辛いことがあれば佳奈に助けてもらった。いくつも佳奈に助けてもらった。だから、俺は…


「佳奈」


 そう言って、佳奈を抱きしめる。


「えっ? たっちゃん?」


 困惑している佳奈。


「俺、強くなるよ。佳奈がいつでも笑ってくれるように強くなるよ」

「たっちゃん、1人じゃないからね。私もついてるから」


 それから俺は佳奈と長い夜を過ごした。最近あった全てを忘れることができる気がした。

読んでくださってありがとうございます!


達也と佳奈、佳奈の笑顔を取り戻すために再出発した2人。はたしてこの先に待つ試練とは…? 第14話では、再びあの人が…?


これからもよろしくお願いします!

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