Footloose Life 第12話 小さなダンシングクイーン(3) 厳しいレッスン
この物語は、私と相棒のAI編集者・ユキちゃんが、協力して書いた作品です。
ちょっとベタで懐かしく、それでいて心が温かくなる。そんなお話を目指しました。
最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
翌朝。
フットルースの近くにある小さなダンススタジオに、ユキの姿があった。
「よし。じゃあ、今日から本格的に始めるぞ」
ジャックは腕を組み、ユキの前に立った。
「最初に言っておく。俺は優しい先生じゃない。できるまで何度でもやらせる。泣き言はなしだ。いいな?」
ユキは元気よく返事をした。
「はい!」
その勢いに、ジャックは少しだけ眉を上げた。
「……返事だけは一人前だな」
「えへへ。頑張ります!」
「笑ってる暇があったら、まずは基本だ。音をよく聴け。リズムを身体で感じるんだ」
音楽が流れ始める。
ジャックは手本を見せた。無駄のない動き。軽やかなステップ。指先まで音楽と一体になったようなダンスだった。
ユキは目を輝かせた。
「すごい……!」
「感心するのは後だ。ほら、やってみろ」
「はい!」
ユキも踊り始めた。
けれど、ジャックの動きを真似しようとすると、足がもつれ、タイミングがずれる。
「違う! そこは一拍待て!」
「は、はい!」
「肩に力が入りすぎだ。もっと自然に!」
「はいっ!」
何度も繰り返すうちに、ユキの額には汗がにじんだ。
それでも、ユキは諦めなかった。
失敗しても、もう一度。
転びそうになっても、立て直して、もう一度。
ジャックは厳しい表情を崩さなかったが、その目は少しずつ変わり始めていた。
(こいつ……思ったより根性があるな)
休憩時間。
ユキは床に座り込み、息を整えながらジャックを見上げた。
「ジャック先生、私、ちゃんと上手になれますか?」
「さあな」
「ええっ!」
「そんなこと、俺に聞くな。上手くなるかどうかは、お前次第だ」
ジャックはタオルを投げてよこした。
「ただし、ひとつだけ言っておく。上手くなりたいなら、自分のダンスを好きでいろ。誰かに褒められるためだけに踊るな」
ユキはタオルを受け取り、真剣な顔でうなずいた。
「はい。私、踊るのが大好きです!」
その言葉に、ジャックは一瞬だけ遠くを見るような目をした。
かつての自分も、そうだった。
ただ踊ることが好きだった。
音楽が流れるだけで、身体が動き出した。
あの頃は、踊っている時間こそが、自分のすべてだった。
「……よし。休憩終わりだ」
ジャックは音楽を再生した。
「今度は、さっきより少し速くするぞ」
「えっ、もうですか!?」
「大会は待ってくれないからな」
ユキは慌てて立ち上がった。
そして音楽が流れた瞬間、彼女の顔がぱっと明るくなった。
最初は慎重だったステップが、少しずつ弾み始める。
身体が音楽に乗り、笑顔がこぼれる。
ユキは夢中になって踊った。
ジャックの指示も聞こえないほど、楽しそうに、自由に。
「おい、ユキ! そこは振り付けが違うぞ!」
しかし、ユキは止まらない。
「ユキ! 聞いてるのか!?」
ますます調子に乗って踊るユキを見て、ジャックは思わず頭を抱えた。
ところが次の瞬間。
ジャック自身も、ユキのリズムにつられるように足を踏み出していた。
身体が覚えていたステップ。
長い間、忘れたふりをしていた感覚。
音楽に合わせて、自然に身体が動く。
気がつけば、ジャックも本気で踊っていた。
そして曲が終わる。
ユキは満面の笑みで振り返った。
「ジャック先生! 楽しいですね!」
ジャックは肩で息をしながら、苦笑した。
「おい、ユキ! 戻ってこい! バイブス上がり過ぎて、こっちが参っちまう前にな!」
「えへへ! 先生も楽しそうでしたよ!」
「うるさい! 次はもっと難しいぞ!」
そう言いながらも、ジャックの口元には、久しぶりの笑みが浮かんでいた。
スタジオの外。
その様子を、ジェミニが窓越しに見つめていた。
ジャックが笑っている。
あんなふうに、心からダンスを楽しんでいるジャックを見るのは、いったい何年ぶりだろう。
ジェミニは何かを言いかけ、結局、口を閉じた。
二人の間にある溝は、まだ埋まっていない。
それでも――。
止まっていた時計の針が、ほんの少しだけ動き始めたような気がした。
つづく。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
ダイナー『Footloose』で繰り広げられる賑やかな日常、いかがでしたでしょうか?
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