第十五話:佐世保の変則、リミッター解除
GIII・九十九島賞。健吾にとって初めての「重賞」の舞台が開幕しました。
検車場は、これまでの一般戦とは一線を画す殺気と熱気に包まれていました。S級のトップレーサーたちが、重厚な音を立てる「からくり自転車」と共に並んでいます。
1. 源さんの「禁じ手」
発走直前、健吾は源さんから送られてきた最終調整プログラムをスーツ『炎』に読み込ませました。
「いいか健吾、これは調整じゃねぇ。**『暴走の許可』**だ」
源さんの通信音声が、ヘルメットの中で響きます。
新ギミック:【噴火連鎖】
コアマブイ2500の出力を一気に解放するのではなく、あえて「不規則に爆発」させることで、403mという変則リズムに強制的に同期させる。
リスク: 爆発の衝撃が脊髄に直接伝わるため、レース後は数日間まともに歩けなくなる可能性がある。
「やってやるよ、源さん。計算通りに回るだけが、からくりじゃねぇってところを見せてやる」
2. 算盤の「鉄壁ライン」
対する算盤陣は、京王閣のベテラン選手二人を従え、完璧な三車ラインを形成していました。
「速水、君は403mの『死の3m』を理解していないようだ。このわずかな距離が、君のような無計画な加速を絶望に変える。僕の計算は、すでにゴールまでの全回転数を弾き出しているよ」
算盤の背後には、厚い壁のような番手選手。健吾は、またしてもたった一人の「単騎」です。
3. 発走:403mの迷宮
「構えろ!」
号砲と共に、六台のからくりが爆音を上げて飛び出しました。
健吾は定石を無視し、スタート直後から**【噴火連鎖】**を起動。
「ドッ! ドッ! ドォォォン!!」
心臓の鼓動に合わせてスーツが脈動し、不規則な加速が算盤のラインを揺さぶります。
「なっ……加速のタイミングが読めない!? センサーがバグを起こしているのか!?」
算盤の精密な予測が、健吾の「不規則な熱」によって攪乱されます。
4. 佐世保の「403m」の罠
残り一周。健吾は単騎で先頭を奪いました。
しかし、ここからが佐世保の恐ろしさです。400mバンクだと思って踏み込めば、最後の直線で「あと3m」が届かずに力尽きる。
「……ここだ。速水、君の熱が尽きる瞬間を計算していたよ!」
算盤がラインを崩し、一気に捲りにかかります。
背後の風を味方につけた京王閣ラインの突進。
健吾の視界は、過給による熱で白く染まり、耳元では「脊髄負荷限界」のアラートが鳴り響いています。
(兄貴……まだだ、まだ熱は残ってる……!)
健吾は、ハンドルを強く握りしめ、自分自身のコアマブイそのものをギアに叩き込みました。
もはやスーツを壊すのではなく、自分自身を燃やして回す。
5. 激突の直線
最終コーナー。
算盤の白銀のスーツが健吾の横に並びます。
「終わらせてあげるよ、速水!」
「――うるせぇ、もっと熱くなれよ、算盤ァ!!」
健吾の『炎』から、これまでにない真紅の閃光が放たれました。
403mの終着点。ゴール板を真っ先に切り裂いたのは――。




