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自転車泥棒の言い分

作者: きつねあるき
掲載日:2025/12/22

 私が、少年野球をしていた頃のお話になります。


 練習に行く時は、ボロボロで傷だらけの子供用自転車に乗っていました。


 その自転車は、前輪錠(ぜんりんじょう)が固着していて開錠されたままだったのですが、盗む人がいなかったのでそのままにしていました。


 しかし、野球の練習をしている時に、私の自転車が盗まれたのです。


 野球仲間は、必死になって探してくれたのですが見付かりませんでした。


 家に帰ると、私は両親にこっ(ぴど)(しか)られました。


 数日後、グラウンドの(すみ)で、私の自転車に乗っている青年を発見しました。


 私は、野球仲間を呼んで取り返しに行く事にしました。


「これは私の自転車なので返してもらえませんか」


「この傷が証拠ですから」


 私は、勇気を振り絞ってそう言ったのですが、


「いいえ、これはうちの自転車ですよ」


 という返答でした。


 それを聞いた時、野球仲間が青年を取り囲みました。


「そんな訳ないだろ!」


「そうだ、さっさと返しやがれ!」


 野球仲間は、口々に言いました。


「だったら、このカゴは君のだって言うのかい」


 よく見ると、自転車のカゴだけが違っていたのです。


 そこで、少年野球の監督(かんとく)警察(けいさつ)を呼んでくれたのです。


 ただ、警察官の反応は(かんば)しくありませんでした。


 それは、青年が主張しているカゴのせいでした。


 自転車の傷も、偶々(たまたま)同じ所に付いたんだろうと言って、取り合ってくれませんでした。


 それから1週間後、野球の練習をしようとグラウンドに行くと、私の自転車が横たわっているではありませんか。


 近寄ってみると、自転車は砂塗(すなまみ)れになっていました。


 野球仲間の1人は言いました。


「これはお前の自転車だよ」


 私は、前輪錠を掛けなかった事を()いて、早々に自転車屋に行く事にしました。


「すいませーん、(かぎ)を替えて(もら)えませんか」


 店の奥から、おじさんが出て来ました。


 そして、驚きながらこう言ってきました。


「おや、随分(ずいぶん)(ほこり)を被っているね」


「つい最近まで盗まれていたんです」


「警察には言ったのかい」


「はい、でも話を聞いてくれませんでした」


「そうかい、それはお気の毒に」


「自転車のカゴが変わっていたからなんですよ」


「へ~、普通はカゴなんか(いじ)らないんだけどね」


「ん、このカゴはベースが動かされているね」


「多分、放置自転車のカゴと入れ替えたんじゃないかな」


「そんな…」


「それより、今度自転車泥棒を見掛けたら俺に言いなよ」


「警察がダメなら、おじさんが捕まえてあげるから」


 おじさんは、真剣な表情でそう言いました。

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