表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

年上の彼氏

作者: 蓮の花

冷たい部屋でスマホを開く。

遠距離恋愛。画面越しの彼

「なにしてるの?」――低いのに、どこか無邪気な子どもみたいな声。


毎晩こうして声を聞くのが、二人の約束だった。


仕事の愚痴、今日見た夢、くだらない冗談。

そのどれもが、私の一日を終わらせる魔法だった。


「また明日ね」

「うん、また明日」

通話を切ったあと、部屋に残る冷たさだって許せた。


1人で寝るには広すぎるベッドは

いつも私をアラームより早く目覚めさせた。

夜を思い出して、寂しくなる事にも少しは慣れた。


夜になると、またスマホを開く。

「なにしてるの?」――低いのに、どこか無邪気な子どもみたいな声。

昨日と同じ声、同じ調子。

あなたは私が何をしても怒らない。


その変わらなさに、もうどうしようもなく胸が詰まる。

「ねえ、いつ会えるのかな」

漏れた本音に返ってくるのは、いつもと同じ言葉。


「かわいいね~?」

「いつ?」

「怒ってる?」

「誕生日なんだけど」

「だいすきだよ」

「誰もいないの」

「ごめんって!ケーキ食べなよ!!」


言葉は交わされているのに、どこかかみ合わない。

私はスマホを閉じ、深く息を吐いた。


深夜。

目が覚めてしまった私は、またアルバムを開く。

三年前、あの頃は暖かくて幸せだった。

息の合った二人で、よく近所のカフェに通った。


ケーキを食べる彼を隠し撮りした動画を見つけ、指が止まる。

再生すると、あの日と同じ声が部屋に広がった。


「なにしてるの?」――低いのに、どこか無邪気な子どもみたいな声。


画面の中の彼は笑ったまま、変わらない。

もう私の方が、年上になってしまったのに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ