表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/47

第4話:王宮書庫に封じられた禁忌の記録

 ――王宮の記録が、改ざんされている。


 それは、単なる書き損じや記録ミスではない。意図をもって“誰か”が、王妃毒殺未遂事件の核心情報をすり替えている。

 私は今、その“中枢”に迫ろうとしていた。


 目的地は、王宮書庫の最奥――禁書庫。


「クラリス嬢、お前……本気であそこへ入るつもりか?」


 夜の回廊。

 私に付き従うのは、セラス副長。


「禁書庫は王族とごく一部の上級官吏しか入れぬ。入館には“二重の封印”がある。もし見つかれば……」


「私はもう一度処刑された人間よ、セラス。今さら、死を恐れても始まらないわ」


 セラスは短く息を吐き、手にした鍵束を掲げた。


「……ならば、俺が“偶然落とした”ということで、これを渡しておこう。俺は何も見ていない。……そういうことにしておく」


「……ありがとう」


 禁書庫の扉は、まるで墓石のように重々しく、無言で私を拒んでいた。


 錠前を二重に外し、扉を押し開けると、埃と紙の香りが混ざり合った古びた空気が全身を包み込む。


 この部屋には、王宮の中でも“闇に属する記録”が封じられている。


 私は、薄明かりのランタンを頼りに、書棚を一つずつ読み漁っていった。


(私が探しているのは、事件当日の記録……ではない。前提を疑え。“動機”を探すの)


 王妃を殺す理由。

 私を嵌める意味。

 それらを統合するには、“事件以前”の記録を洗う必要がある。


 やがて、私は一冊の革表紙の記録簿に手を止めた。


『王妃選定議事録――第五王子派による反対声明と、婚姻調整案の争点について』


 中身を読み進めるにつれて、私は背筋が凍るのを感じた。


 ――現王妃アナスタシア・レントハイムは、第一王子派が推した候補。

 一方、第五王子派はこの決定に強硬に反対していた。

 “派閥間の争い”は王妃選定の裏で激しく火花を散らしていたのだ。


(つまり、王妃毒殺は、“第一王子派”を潰すための策略……?)


 そしてもう一つ、私はある一文に目を見開いた。


「万が一、王妃の座が空位になった場合、王位継承資格は“再協議”され、現時点では第五王子派が優勢と見られる」


 (王妃を殺せば、継承順位が再調整され、“第五王子”が……)


 そうだ。

 王妃が生きていては、王太子とその支持派が勢力を拡大する。

 逆に王妃がいなくなれば、バランスが崩れ、権力構造が書き換わる。


 動機はあった。

 そして、その計画の中で、王妃に近しく“邪魔な存在”がもう一人いた。


「……私」


 私は王太子の婚約者であり、王妃陣営の象徴だった。

 その私に濡れ衣を着せて処刑すれば、まさに一石二鳥。

 事件は“政治的な暗殺”であり、私は“計画に利用された駒”だった。


 だが、それだけでは足りない。

 私を罪人に仕立て上げるには、確実な“証拠”と“操作”が必要だった。


 私はさらに奥へと進み、事件操作に関する記録簿を探した。


 そして、そこにあったのは――


『人事局・記録操作許可ログ(極秘)』


 開いた瞬間、私は息を呑んだ。


 そこには明確に記されていた。


【命令者】リード・クロイス男爵

【対象】バート(禁衛詰所)/ルース(厨房)/厨房長の名義使用

【目的】「令嬢クラリスを事件に関与させるための記録工作」

【備考】第五王子派直属の命令であることを秘匿


「……これが、決定的な証拠」


 名が挙がった――リード・クロイス。

 彼は、前回の人生でも私の断罪時に証言台に立っていた男だ。


「セラス……これを見て……!」


 私は禁書庫を飛び出し、急ぎセラスのもとへと向かおうとした。だが、そのとき。


 カツ……カツ……と、石畳を踏み鳴らす足音。


「禁書庫に、誰が入っている?」


 仄暗い廊下の向こうから、複数の兵士の影が現れる。


「見つかった……っ!」


 私は咄嗟にランタンの灯を吹き消し、闇に身を沈めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ