第2章 帝都への突入
アカズハは男の腕を掴み、体を持ち上げた。
「チッ、ここに置いておくのは良くないわね。」
サクラの側でアカズハを見ていた。
サクラが転生した場所はエクゾディアと呼ばれ、彼女の調査によると、地球の500倍の大きさの惑星だった。この惑星には数百もの超大陸があり、それぞれの超大陸には数億もの領域があり、あらゆる種族の生物が暮らしていた。
中でも特に、30体以上の強力な魔族がおり、彼らは三十魔王と呼ばれていた。
彼らは強力な魔族であり、超自然的な存在であり、その実体は神に匹敵するほどだった。
シャシキ・アカズハは、この世界の三十魔王の中でも有名な魔王だった。
しかし、人々に知られているのは、彼が非常に弱い魔王だということだった。
そうだ、魔王と呼ばれているとはいえ、Cランク冒険者でも倒せるほどの力だ。
「なあ、アカズハって言うんだな?」
アカズハはその人物の死体を太陽に向かって投げ上げ、サクラの方を向いた。
「ああ。」
「どうしたんだ?」
「お前が魔王か。」
「ああ。」
アカズハはサクラの手に手を伸ばし、彼女を引き上げた。
「それで、魔王様、どうしてここにいるんだい?」
「もちろん、その仕事を辞めたからさ。」
「まあ、誰かに引き継がれたんだろうけど。」
彼が手を差し出すと、サクラの体に無数の魔法陣が浮かび上がった。
すると、奴隷にされていた頃から今までのサクラの傷はすべて癒えていた。
サクラが体を見回すと、傷はすべて癒えていた。
サクラは自分の体を見回した。 「どんな魔法を使っているの?見たことないわ」
「ただの古い魔法よ。炎魔法とか透明魔法とか治癒魔法とか、そんな呼び方じゃ単調すぎるわ」
「ありきたりすぎるわ」
アカズハは馬車に向かって歩きながら、まだ少し言葉を続けた。
「だから魔法の名前を変えたの。口に出す時に分かりやすくするためよ」
アカズハはピンク髪の少女を引き離し、ゆっくりと地面に置いた。
「彼女を治してくれる?」
「治せないの?」
「治癒魔法は使えるわ」
「もちろん使えるわ」
彼は落ち込んでいるようだった。
「魔王を辞めてから、世界中を旅するという夢があって、城にあるものを持って冒険に出たの」
「でもね、この世界を冒険して疲れ果ててしまって、魔力もほとんど枯渇しちゃったの」
「だから、この子を治せないのよ」
「失礼します」
アカズハの言葉を聞いて、サクラはため息をつき、少女に近づき、杖をピンク色の髪の少女の前に差し出した。
「ああ、生命の母よ、どうか私に全てを癒す力を与えてください」
青い光が現れ、ピンク色の髪の少女の全身を覆い、そして消えた。傷はすべて消えていた。
傍らにいたアカズハも少し驚いた。
「エルフが魔法を使うのを見るのは初めてです」
「見たことありませんか?」
「私はいつも城にいたので、こういうことはよく知りません」
「あなたは魔王ではないのですか?」
「すべての魔王が強いわけではなく、すべての魔王が超人的な知性を持っているわけでもありません」
「私がその職業だと思うのは、この世界に対する理解が不足しているからです」
「そんな風に去ったら、王国はどうなるの?」
「国が?」
アカズハは笑った。
「他の魔王たちのように王国を持っていないので、戦争に参加した記録はほとんど、いや全く残っていないんです。」
「では、なぜそんなに優秀な魔王になれたのですか?」
「それは、継承のおかげですよ。」
「継承?」
アカズハは頷いた。
「カミカゼって知ってる?」
「雷の魔王、カミカゼのことですか?」
「ええ、私の父です。」
サクラは呆然とした。最弱魔王に分類されるアカズハが、どうして五番目に強い魔王の子なのだろうか。
「マジですか?」
「そう言うだろうと思っていました。」
アカズハは苦笑した。
「父が英雄アーサーに殺されたことはご存知でしょう。父の死後、魔王カミカゼの王子であり息子である私が、父に代わって王位に就かなければなりません。」
「問題は、父が圧制的な統治をしていたことです。民衆は私が父のようになることを恐れ、皆国を去り、誰も留まりませんでした。」
「ああ、なるほど。」
「君とは話しやすいね。」
「まあ、失礼なことは好きじゃないんだけど。」
「母はそんなことを教えてくれなかった。」
サクラは彼の悲しそうな表情を見て、すぐにそれ以上聞かないことにした。
「でも、サクラ、この子は誰だか知ってるの?」
サクラは突然驚いた。まだ名前も言っていないのに、どうして彼が自分の名前を知っているというのだろう。
「どうして私の名前を知っているの?」
アカズハはただ答えた。
「もちろん、メルヴィスタ・エルノアの魔法を使ったわ。」
「わからないなら、それは読心術よ」
「勝手に読心術を使ったのか?」
「確かに私の責任は認める。君の心を読むべきではないのは分かっているが、あまり心配するな。今の私の魔力では、ほんの少しの情報しか得られない」
「まあ、かなりたくさんいるけどね」
突然、遠くから物音が聞こえた。鉄の鎧をまとった兵士たちの集団だ。
「誰だ?」
さくらはしばらく見回し、彼らが領主の兵士だと気づいた。
「しまった、今の二人が領主に密告したようだ」
アカズハはそれを聞いて、すぐにピンク髪の少女を肩に担いだ。
「じゃあ、行こう」
さくらは頷き、二人はその場から逃げ出した。
二人はまっすぐ前を歩いていた。赤ずはの肩にはピンク髪の少女が乗っていた。爆発の際、馬車に頭を強くぶつけて気絶してしまったためか、まだ目覚めていない。
二人はそのまま進み、森の出口へと続く道を渡った。赤ずははピンク髪の少女を肩に担ぎ、まるで体重など気にしていないかのように軽やかに運んでいた。さくらは彼の隣を静かに歩き、かすかな風が吹くたびに長い耳をかすかに震わせていた。
辺りは静まり返っていた。聞こえるのは、枯れ葉が擦れる音と、枯れ葉が敷き詰められた地面を踏む足音だけだった。
さくらは何かを考えているように目を揺らしながら、かすかに赤ずはを見上げた。そして、ようやく口を開いた。
「ありがとう。」
赤ずはは返事をせず、ただ軽く首を傾げた。まるでそのお礼は不要だったかのように。
さくらは自分の靴を見下ろした。奇妙な感覚が彼女の胸を満たした。 彼女が初めて心から…自由を感じたのはその時だった。もはや、彼女を縛る目に見えない紐はなかった。しかし、そのせいで、彼女の心には大きな空虚感が生まれ始めた。
家族…故郷…連れ去られた人々…それら全てを、彼女はまだ取り戻すことができなかった。
風が吹き、徐々に深まる夜の冷気を運んできた。
「それで…あれが衝撃帝都?」アカズハは遠くからその場所を眺めながら、サクラに尋ねた。
「ふむ。」
アカズハは遠くから衝撃帝都を眺めた。街は灰色の空に届きそうなほど高い巨大な城壁に囲まれていた。松明や魔法陣の光が闇を照らし、難攻不落の要塞のように見えた。
「あの素敵な場所、昔知ってたのに。」
「もう、なくなってしまった。」
サクラは物憂げな目で言った。
「もう入れないわ。」
「入るには師匠と一緒に行かなきゃいけないの。でも、逃げ出した今、もうその方法は使えないわ。」
アカズハは考えにふけりながら、顎をこするために手を上げた。
「それなら、別の道を探さなきゃ。」
サクラは頷いた。
「別の道を知っているわ。ついてきなさい。」
サクラはアカズハを街道から引き離し、城壁近くの深い森へと導いた。木々が空を覆い、かすかな光が差し込むだけだった。二人の足元では、枯れ葉や折れた枝が、歩くたびにカサカサと音を立てていた。
「どうしてこの道を知っていたの?」アカズハは辺りを見回しながら尋ねた。
「以前、私が奴隷だった頃、衛兵たちが秘密のトンネルについて話しているのを聞いたの。」
サクラは説明した。
「このトンネルは密輸品を首都へ運ぶために使われていたらしいわ。でも、その後、侵入者が多すぎるので、兵士たちが岩で塞いだの。」
「だから、まだ使われている可能性もあるのね。」
サクラは頷き、アカズハの言う通りだったことを証明した。
「ええ。でも、まだ安全かどうかわからないんです。」
二人は黙って歩き続け、サクラは苔むした大きな岩の前で立ち止まった。
「着きました。」
彼女はひざまずき、手で岩の下にある枯れ葉や土を払い落とすと、地面に埋もれた古い鉄の扉が現れた。表面にはかすかな魔法の記号が刻まれており、ここが封印されていることを物語っていた。
「ええと…かなり頑丈ですね。」
アカズハはかがんで確認した。
「開けられますか?」
サクラが尋ねた。
アカズハはすぐには答えなかった。彼は扉の封印に軽く触れ、残っている魔力を感じた。唇に小さな笑みが浮かんだ。
「大したことない。」
そう言うと、彼は手を上げて力強く振り下ろした。
ドカン!
魔力が爆発し、封印が吹き飛び、扉が激しく揺れた。サクラは驚きで目を見開いた。
「終わった」
アカズハは静かにそう言うと、取っ手に手をかけ、重い扉を押し開けた。下の暗闇から冷たい空気が吹き出し、まるで二人を招き入れるかのように感じられた。
「行こう」
「それで…どこへ行くんだ?」
「この腐った王都の中に、貧民のための病院がある。そこに私の友人がいる」
二人がトンネルを抜けると、アカズハは輝く街灯、壮麗な家々、そして何千人もの貴族たちが行き交う壮観な光景に迎えられた。
「行こう、ここはこの国で最も腐敗した場所だ」
二人は歩き続け、ゴミが散乱する場所に着いた。
帝都の壮麗な景色は、メインエリアを離れ、細い路地に入ると、たちまち消え去った。
そこはアカズハが見たものとは正反対だった。壁は苔とカビに覆われ、空気中にはカビ臭が漂っていた。路上にはゴミが無造作に捨てられ、足元には腕ほどもあるネズミが走り回っていた。痩せこけ、虚ろな目をした人々が影にうずくまり、激しく咳き込む者もいれば、ただ運命を待つだけの屍体となっていた。
「帝都が弱者を捨てる場所よ」
サクラは静かな声で言った。
「私が話していた病院はこの辺りの奥にあるのよ」
アカズハは何も言わず、苦しむ人々を一瞥した。裏切られ処刑された彼にとって、これは珍しい光景ではなかった。
「行こう」
サクラが先導し、暗い路地へと入った。
二人は、腐った扉と破れた布で覆われた窓のある古い建物の前で立ち止まった。周りの廃墟と見た目は変わらないが、中からはかすかな魔法の光を感じ取った。誰かが治癒魔法を使っている兆候だった。
「ここが病院?」
サクラは尋ねた。
「ああ、まだ病院と呼べるならね」
サクラはため息をついた。
「行こう」
サクラはそっと扉を開けて中に入ると、すぐに血の匂いに混じった漢方薬の匂いが二人の鼻をついた。
「キバキさん」
右腕を失った男に治癒魔法をかけていた男は、サクラの声に驚いた。
「サクラさん!」
「ヒバキさん、まだ話はしません。まずはあの人を治しましょう。」
ヒバキは頷き、薄青色の魔法で手を光らせながら、男の傷口に治癒魔法をかけ続けた。しかし、魔法は効いているにもかかわらず、傷口からは出血が止まらず、傷口の周りの皮膚はやや壊死しているように見えた。
「壊死?」
アカズハが口を開いた。
ヒバキは額に玉のような汗をかきながら頭を上げた。
「そうです…この傷は壊死が長すぎて治らないんです。中和しようとしたんですが…」
アカズハは一歩近づき、傷口を少し見てから呟いた。
「これはひどく壊死しています。」
彼はためらうことなく手を掲げ、指先から放たれた魔力の流れが、たちまち傷口へと流れ込んだ。瞬く間に壊死は徐々に消失し、傷口からの出血も止まった。ヒバキとサクラは、唖然とした目でその光景を見つめた。
「え……?」
ヒバキはどもりながら言った。
「何を…したんですか?」
アカズハは手を払いながら立ち上がった。
「ただ、汚れを落としただけです。」
ヒバキはまだショック状態だったが、サクラが口を挟んだ。
「それはさておき、ヒバキさん。病院の状況はどうですか?」
ヒバキは深呼吸をして気持ちを落ち着かせ、眼鏡を外し、疲れたようにこめかみをこすってから答えた。
「ひどくなっています。毎日、怪我人や病気の人が運ばれてくるのですが、薬が不足していて、私の魔力では全員を治療しきれません。」
アカズハは狭い部屋を見回した。そこには、何十人もの人々が古いベッドに横たわっていた。軽傷の者もいたが、多くは瀕死の状態だった。
「誰がこんなことにしたのですか?」
アイマスクの奥の目が冷たくなりながら、彼は尋ねた。
ヒバキは苦笑した。
「他に誰が来るっていうんだ?帝都の貴族や役人。この貧しい人たちのことなんて気にも留めない。彼らにとって、この貧しい人たちはゴミ同然なんだ。」
アカズハは少しの間黙り、それからサクラの方を向いた。
「この子を椅子に座らせましょうか?」
サクラは頷き、木の椅子を近づけた。アカズハはピンク色の髪の少女を、ぐらつかないようにそっと座らせた。彼女はまだ完全に意識を取り戻していないが、呼吸は以前より落ち着いていた。
ヒバキは少女を一瞥したが、それ以上は尋ねなかった。様々な傷、様々な過去を抱えた虐げられた人々がここに現れるのを見るのは、彼にとって慣れ親しんでいた。
「それで、あなたは誰なの?」
ヒバキがアカズハに尋ねると、サクラが口を挟んで答えた。
「彼はシャシキ・アカズハ。帝都の民から奴隷の呪いを解くのを手伝ってくれた人です。」
それを聞いたヒバキは心から感謝し、アカズハの手を握った。
「ありがとうございます、アカズハさん。私の友人を奴隷から解放してくれてありがとう。」
青年がそう言うのを聞き、ヒバキは答えた。
「はい。」
彼はサクラの方へ振り返り、低い声で尋ねた。
「彼は私が魔王だと知らないんですよね?」
「いえ、彼はこのスラム街の人々を治療するのに忙しくて、外の世界のことを知らないこともあるんです。」
ヒバキは微笑んだが、その目にはまだ少しの不安が残っていた。彼はサクラをちらりと見てから、再びアカズハの方を向いた。
「あなたが都に来た目的が何なのかは分かりませんが、サクラを助けたということは、悪い人ではないのでしょう。」
アカズハは何も言わず、目の前の青年をただ見つめていた。
「それでも…」
ヒバキはためらった。
「もしここに長く留まるつもりなら、気をつけろ。貴族たちは、彼らに逆らう者を決して許さない。特に、外で問題を起こしていたなら。」
サクラは唇を歪めた。
「問題を起こすのは確実ではないが、少しの破壊なら確実だ。」
ヒバキはため息をついた。
「こうなるのは予想できた。」
「でも…」
ヒバキはピンク髪の少女を見た。
「革命軍副長のマサヨシか?」
「そうだと思う。」
アカズハは困惑して首を傾げた。
「革命軍って、一体何なの?」
ヒバキは耳を疑ったように、目を大きく見開いてアカズハを見た。
「革命軍って、知らないの?」
アカズハは肩をすくめた。
「私は帝都の人間じゃないわ。」
サクラは顎に手を当て、少し考えてから説明した。
「革命軍は、インパクト帝国の腐敗した政府に反対する集団よ。彼らは、貴族や王族によって抑圧され、全てを失った人々を集め、現体制の打倒を目指しているの。」
ヒバキは続けた。
「マサヨシは彼らの副リーダーで、この運動で最も影響力のある人物の一人よ。彼女がここにいるということは、革命軍が帝都で何かを企んでいるってことね。」
アカズハは椅子の上でまだ意識を失っているピンク色の髪の少女を見て、ヒバキの方を向いた。
「それで、彼女は善人?それとも悪人?」
ヒバキは少し間を置いた。
「…それは見方次第ね。」
サクラはかすかに微笑んだ。
「貴族や王族にとって、革命家はテロリストだ。だが、私のような人間にとっては希望なのだ。」
アカズハは少し沈黙し、それから頷いた。
「分かりました。」
「実は、何度か会ったことがあるんです。彼らもあの呪いを解こうと申し出てきたのですが、迷惑をかけるからと断ったんです。」
アカズハはそれを聞くとサクラを一瞥した。
「では、なぜ今解かせてくれたのですか?」
サクラは少し沈黙し、それから低い声で優しく答えた。
「だって…他に選択肢がないんです。このままでは、私は永遠に奴隷のままです。あの野郎どもに頭を下げるのはもううんざりなんです。」
ヒバキは少し哀れそうな表情でサクラを見たが、それ以上何も言わなかった。
アカズハは腕を組み、ゆっくりと頷いた。
「そういうことか…」
彼はまだ意識を失っている正義の方を見た。
「彼女が革命軍の副リーダーということは、あの組織がこの帝都で何か大きなことを企んでいるということか?」
ヒバキは少し眉をひそめた。
「…詳しくは知らないけど、何か計画があるみたいだ。正義がここまで来たとしたら、それは決して小さなことではない。」
サクラはヒバキを見た。
「助けてあげたらどうだい?」
ヒバキは首を横に振った。
「私はただの医者だ。人を救うのが仕事であって、政治や戦争に関わることではない。」
アカズハは小さく笑った。
「でも、たとえ嫌でも、この病院は既に政府に追われている人たちのシェルターになっている。外でうろうろなんてできない。」
ヒバキは何も答えず、疲れたため息をついた。
「ヒバキさんを責めないでください。彼はかつて貴族に仕える医者だったのですが、民衆の苦しみを目の当たりにして、貴族の治療を諦めてこの貧しい民衆の街に来たのです。」
「ああ…それで、いつお会いになったのですか?」
「貴族に仕えていた頃、主人を治療していた時にお会いしました。」
アカズハはそれを聞いて眉を上げた。
「そうなんですか。」
サクラは少し遠くを見つめながら頷いた。
「あの頃は、私はまだ奴隷で、逃げ出す術もありませんでした。貴族に仕える人々の中で、まだ人間らしさを保っているのは、ヒバキさんだけです。」
ヒバキは苦笑した。
「人類? 見たものを無視するわけにはいかない。貴族だろうと平民だろうと、皆人間なのに、貴族は貧乏人の命をゴミのように扱うなんて…」
彼は拳を握りしめた。
「このまま何も見なかったふりを続けるわけにはいかない」
アカズハはヒバキを少しの間見つめ、それからサクラの方を向いた。
「それで、これからどうするの? 自由になった今、何か計画はある?」
サクラは少し黙り、それから優しく言った。
「わからない…でも、彼らにされたことへの仕返しをしたいの」
ヒバキは眉をひそめた。
「まさか革命軍に入るつもり?」
サクラはすぐには答えず、ベッドと椅子の上でまだ意識を失っている正義を見つめた。
「わ…」
バン!
扉が蹴破られ、兵士が一人入ってきた。その後ろには16体のゴーレムが続いていた。
「何だって?どうやって来たんだ?」
サクラは慌てて言った。
「サクラ、もうそれ外したの?」
サクラは驚いた。この国の奴隷は皆、逃げ出したとしても貴族が追跡できるよう、魔石が体に埋め込まれていたのだ。サクラはそれを忘れていた。
ヒバキの顔が青ざめた。
「ちくしょう…追跡されたのか!」
兵士が入ってきた。暗い部屋の炎の光に、輝く鎧が反射していた。サクラを見ると、兵士はニヤリと笑い、軽蔑の眼差しを向けた。
「逃げられるとでも思っているのか?奴隷には必ず痕跡が残ることを忘れるな。」
サクラは歯を食いしばり、拳を握りしめた。
「ちくしょう…こんなに早く来るとは思わなかった…」
アカズハはただ立ち止まり、兵士の背後にいるゴーレムたちを視線で見渡した。ゴーレムたちは魔法で操られる戦闘機械で、石と金属でできた巨大な体躯に、頭部に埋め込まれた魔石が光り輝いていた。
「あんたと遊んでいる暇はない」
兵士が顎を上げると、たちまち16体のゴーレムが動き出し、一歩一歩が地面を揺らした。
「あの奴隷を捕らえて、他の奴らを殺せ」
ヒバキは汗を噴き出させながら後ずさりした。
「ちくしょう…奴らに対抗できる武器がない!」
アカズハはサクラを一瞥した。
「奴らを殺したいのか、それとも立ち去ってほしいのか?」
サクラは彼の言葉の意味が分からず、瞬きをした。しかし、アカズハの無表情な瞳を見つめると、彼が冗談を言っているのではないことが分かった。 背筋に寒気が走った。
「…できれば、消えてほしい。」
アカズハは頷いた。
「わかった。」
彼は二人に近づいた。
サクラは彼を止めようと肩を掴んだ。
「焦るなよ。B+ランク冒険者並みの強さだ。」
アカズハはそれを聞いて、サクラの手をそっと肩から引き離した。彼はサクラを見つめ、微笑んで自信たっぷりに言った。
「心配するな。俺が勝つ。」
第二章終了
ついに来ました、私の大好きな、人間とロボットの戦いです、ふふふ。