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寡黙な婚約者に婚約解消を願い出た結果、様子がおかしいです

作者: 桃井夏流

短いです。異世界転生モブものです。


 この『世界』は私が前世でプレイしていた『野花は可憐に花咲く』と言う乙女ゲームの世界なのだと私が確定するのには、結構な時間がかかった。


だって、私がこの世界を認識した時には既にこの世界はおかしくなってしまっていたんだもの。


例えば犬猿の仲であるはずの王太子殿下と悪役令嬢の仲睦まじい姿とか。


ヒロインの姿を探し回っても王立魔法学園に入学すらして来ない。そもそも町に行っても存在自体が確認出来ない。


それなのに何故この世界が乙女ゲームの世界と似通っているのかと確定したのかと言えば、まぁ、前世の私の間違える筈が無い人が居た訳です。


因みに私。ただのモブであるはずのシフォン・アーテル伯爵令嬢は。


何故か悪役令嬢の兄君のカルティス・モルデハイド様の、婚約者である。婚約八年目です。


所謂、彼は妹溺愛の悪役令息の筈、だったのだが。現在彼にはそう言う兆候は見られない。


因みに妹であるマルローネ様と私は親友であったりする。これもおかしい要因の一つではあるのだけど他が奇抜過ぎて、あぁそう言われたらそこもおかしかったかしら?位の内容だ。


それはだから良い。ただ、カルティス様に何故だか望まれて婚約を申し込まれたらしい八年前の私。しかし現在、今もなお、何故か、彼は私に滅茶苦茶冷たい。無口と言ってもいい。あぁ、とかそうか、とかテンプレ返答のみ。


もう嫌。キャッチボール出来ない会話もう嫌。これはただの壁打ちなのよ。もう嫌です!もう、こんな愛の無い婚約は解消を申し出ます!私だって元、乙女ゲームプレイヤー端くれ。甘い思いがしたい!甘くなくても最悪普通に会話がしたい!そんな訳で今!ここ!!



「ご機嫌ようカルティス様」

「あぁ」

「本日はお呼び立てしてしまい、申し訳御座いません」

「構わない」

「それで早速なのですが、私との婚約解消していただきたく」

「は?」

「どちらの不義でも御座いませんので、破棄より穏便に解消をお願いしたいのですが。どうしても私に責任があるとお思いになるのでしたら、私の有責に…」

「断る」

「え?」

「何故私が可愛いシフォンと婚約解消、破棄などしなくてはならない。君は不義は無いと言った。なら他に婚約を解消したい理由があると言う事だな。言ってみてくれ、全力で事に当たらせてもらう」


まぁ、まぁまぁまぁまぁ、キャッチボールです。会話が成立しましたわ。しかも可愛いとまで。どうかなさったのかしら?無くなりそうになると惜しくなると言った感じでも無さそうですし。


此処は正直に白状してしまいましょう。


「愛の無い結婚に耐えられないのです。愛が欲しいのですわ」

「愛ならある。溢れる程ある」

「ですが、カルティス様は私と話してもあぁ、とかそうか、とかしか仰って下さらないから私独り言の気分でしたわ」

「それは君が幼い頃、寡黙な男性が好きだとか、冷たい態度にドキドキするとか言っていたからで!だから私は君と話したいのを我慢して接していたんだ。本当なら三分おきに可愛いと言いたい!」


寡黙な男性が好き?冷たい態度にドキドキする?それは前世の私の性癖じゃないか。ただそれはそこに確かな愛があってこそで。しかもキャラクターな訳であって、実際結婚相手とするなら嫌だ。


「カルティス様、幼い私の言った事はもう忘れて下さい。流石に三分おきで無くて構いませんが、私は可愛いと言って下さる方の方が旦那様には好ましいです」

「ではこれからは遠慮なく言っても良いんだな、あぁ、困った顔も可愛いな、シフォンは」


困った事に、前世の私の推しは、カルティス様だったりするのです。性格云々は置いておいて、だが、顔が良い、と言うやつなのです!

そんな彼を見て、あ、これ確定だわ、しちゃった私が蕩ける様な顔で可愛いと言われ平気な訳もなく。


「あの、そんなに見られると、恥ずかしいです」

「赤くなるシフォンも格別に可愛い!あれかな?天使かな?駄目だよ飛んで行っては」

「背中に羽根など無いので擦らないで下さい!」

「でも君は私の愛を感じた事が無かったんだろう?これからはグイグイ伝えていく方向で生きていくよ。素直に気持ちを伝えられるって素晴らしいね」


寡黙な婚約者に婚約解消を願い出た結果。


どうやら妹溺愛が婚約者溺愛にジョブチェンジしていたと言う、ちょっと知りたくなかった現実が出てきた。


「そんな訳で、ずっと我慢していた私にご褒美を貰っても良いだろうか?」

「………ご褒美、ですか?」

「そう。シフォン、君の頬に口付けても?」


はい、と素直に頷くには照れくさくて、私は、そっと目を閉じた。


「可愛いシフォン。君をずっとずっと守って生きていくよ」


頬に触れた感触にドキドキしながらも、頬にキスしたくらいでなんて重たい決意をする人だろうと思っていたのだけど。


既に彼は私をずっと守って生きてきていたのだった。

居なかったヒロインだけれど、子供の頃に私がヒロイン怖いです、マルローネ様の破滅断固拒否です…!とカルティス様に言っちゃった結果、その当時には既にマルローネ様溺愛系だった殿下までその私の前世話を危惧し、ヒロインは早々に隣国に留学していったそう。なんかごめんなさい。


え?もしかして全ての起点私だったりしないよね?モブだもんね??そんな重責耐えられないよ…。


まぁ、兎も角、この世界線は何処かおかしいけれど、何だかんだ幸せです。

読んで下さってありがとうございました。

4/10、加筆修正

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― 新着の感想 ―
世界観おかしくなってるの間違いなくシフォンの所為じゃんねコレwwww
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