第9話 遭遇
「めぐるんさー、私のことを危険視してるでしょー。その反応はあながち間違いじゃないけど、共犯関係結んだんだから怖がんなくてもいいじゃん」
家への帰り道、繋いだ手を前後にぶんぶん振りながら言ってくる。横を通る人に見られるからやめてほしい。たしかそろそろ家に着くはずだ。あと少し我慢すればいい。ここは心を無にして歩こう。
「まあ、めぐるんがどうであろうと私はめぐるんのことを大切にするよ? あ、そうだ。家なんだけど、最上階は入んないで。詳しくは言わないけど、ただ入んないでね。信じてるよ」
「最上階? 分かったよ。あそこの階には入らない」
「約束ね。まあ、入ってもめぐるんだったら怒んないけど。なるべくなら入らないで」
最上階に何を隠しているんだろう。見られてもいいと言っているし、大したものじゃないのだろう。もう家の前まで着いた。これで手を離せる。
「じゃあ、これから一週間くらい観察しなきゃだからそれまで自由ね。この家にいてもいいし、めぐるんの家に帰っても良い。そう言えばめぐるんを連れ出しちゃったけど、親に心配されてない?」
「俺の親は両方死んでる。だから一人暮らしだし、心配する人も居ない。でも、一回家から服とか必要なもんを持ってくるわ」
「了解。めぐるんの部屋は昨日寝たあそこね。何してもいいから。そうなると一旦ここで解散だね」
「それじゃ。夜あたりには帰ってくる」
俺は自分の家に向けて歩き始めた。
*
「パソコンに、一週間分の服、タオルに、歯ブラシ、財布、と一旦このくらいでいいか。帰ってこれないわけでも無いし」
一日くらい家に来ていなくても変わるようなことはなにもない。鞄に諸々を詰めて、学校に向かう。自転車を回収していないからだ。足が無いのは何かと不便だし。この時間なら授業中のはず。誰にも会わないといいが。
*
お、あったあった。しっかりと駐輪場に自分の自転車がとまっている。周りに人影も無いし、無事に戻れるかな。鍵を差して自転車にまたがる。さて出発しよう――
「あれ、こんな時間に登校ですか。学校抜け出した不真面目な祝部く〜ん」
声の方を見ると、利琥とその取り巻きたちがいる。授業中なら平気だと思っていたが、こいつらは真面目に授業受けるタイプじゃなかった。失敗した。
「はっ、この時間は授業のはずだろ。それなのにここにいるって、不真面目なのはお前たちもだろ?」
「言い返すじゃねえか。俺らがちょーっと遊んでやっただけなのに逃げた野郎がさ」
ここで言い返していても、時間の無駄だ。さっさと撤収しよう。
「祝部くんはもう帰るんか。いつもどーりに尻尾巻いて逃げるんか」
ああ、こいつらの声を聞いているといらいらする。もう聞いていられない。自転車を飛ばす。後ろから声が聞こえるが気にしない。このままいるのは耐えられない。ヒスイの家までスピードを出して向かう。