第6話 決定
「はあ、どうしたもんかな」
人を殺すことを一緒にしないか、という誘いを受けた後。ヒスイに、もう遅いから三階にある部屋で寝な、と言われて、三階の部屋のベッドの上で寝っ転がりながら考える。人を殺す。その行為の重みは計り知れない。この返事次第で人生が変わる。ベッドから起き上がって、ベランダに出てみる。澄んだ空に星が瞬いている。それぞれが周りより目立つように、光っている。
夜風にあたっていると、火照っていた頭が冷やされていく。眠気も同時に湧き上がってきたので、ベッドに戻って眠りにつく。
*
「おはよー、めぐるん。起きてるー?」
扉の方から騒がしい声が聞こえてくる。
「今、その声で起きた」
「起こしちゃったか。まあ良いよね。もう十時過ぎてるし」
「え、もうそんな時間なの。もう学校には行けないな」
「学校行きたいの? いじめられているのに?」
「いや、学校は行ったほうが良いと思ってるし」
「真面目だねー。でもたまにはズル休みをするべきだよ。ほら、これでも食べな」
ヒスイから鮭おにぎりを渡される。お腹が空いていたのでありがたくいただく。
「それで、君の心は決まったかい?」
鋭い目線を向けられる。
「本当に殺せるかどうかはわからない。でも、やってみたい。君について行ったほうが楽しそうだからな」
「はははっ。いいねいいね、君は面白い。楽しそうというだからと人殺しの旅に着いていこうなんて。やっぱり見込んだだけあったよ」
手をこちらに差し出してくる。なんだろう、と不思議に思っていると
「握手だよ、握手。これから共にするんだからね」
合点がいって、握手を交わす。これで、共犯を結んだようなものだろう。これから人生が変わる、そう思うと胸が高まってくる。
「これからの話は後にしようか。一旦めぐるんはご飯食べたり準備をしなよ。あ、洗面台なら二階の一番奥の部屋にあるよ。支度が終わったら、昨日の部屋に来て。待ってるから」
そう残して、ヒスイは出ていった。さて、飯を食べてさっさと準備を終わりにしてしまおう。
*
「ヒスイー、来たぞー」
扉を開けると、奥にヒスイがソファーに寝転んでスマホをいじっている。こちらに気づいて、顔だけを動かして俺のことを見る。
「おー、きたきた。隣座る?」
「座んない。そこの椅子でいい」
「つれないなー。こんな美少女が言ってるんだから、ありがたく隣に座ればいいのに」
「そんな冗談言ってないで、これからの話するんだろ」
「しようと思ったけど、めぐるんが隣に座ってくれないからなー。座ってくれれば話すんだけど」
ちらちらこちらを見てくる。はあ。これは座らないと進まないやつだな。
「分かったよ。座るから」
俺は、座り直したヒスイの隣に腰を下ろす。心做しか満足そうな表情を浮かべている。
「それじゃあ、これからどうするかについて話をしようじゃないか」