第4話 掃除と話
「それにしてもゴミが多いな」
ゴミを種類別に分けながら呟く。マスクも頼んでおくべきだった。掘っても掘ってもゴミが出てくる。どれだけ溜めているんだか。
ゴミを掘っていると、だんだん家具が姿を見せてくる。タンスのようだ。使えるのか?
「ただいまー。買ってきたよー」
扉の方から声が聞こえる。大きく膨れたレジ袋が一つ、ヒスイの手にぶら下がっていた。
「おい、何をそんなに買ってきた。ゴミ袋しか頼んでないぞ」
「何をそんなにって、お菓子とおにぎりとジュースとか諸々。あ、ちゃんとゴミ袋もあるよ?」
「もしかしてそんなもんばっか食ってるのか?」
「もちろん。料理なんてできないし」
「よくそれでその体型維持できるな……」
「あ! 乙女に向かって体型の話は厳禁!」
はいはいわかりましたよ。適当に返事をして片付けを続ける。ゴミ袋が来たからこれで一気に片付くな。
終わりまでの見立てを立てていると背後から
「やべっ」
嫌な予感がする。恐る恐る振り向くと、せっかく種類分けしてまとめられていたゴミがぐちゃぐちゃになっている。その横にヒスイが座り込んで
「えへへ、ちょっとつまずいて山が崩れちゃった」
「ちょっと崩れちゃった、じゃねえよ! 人が時間かけて仕分けたってのに。ヒスイ、お前もう動くな。そこに座ってろ!」
てへっ、みたいな効果音がなりそうな感じに言ってくる。はあ。ため息が止まらない。……これじゃ、終わるのはもっと時間が掛かりそうだな。
*
「ようやくゴミが無くなったー。こんなにこの部屋広かったんだな」
「でしょでしょ。いい部屋なのよ」
「いい部屋だけどゴミのせいで最悪だったけどな」
「まあまあ、それは良いとして。話が聞きたいんでしょ?」
「そうだよ。片付けに来たわけじゃない。変身できることとか、この世界の住人じゃないとか、俺のオーラとか、色々聞かせてもらうぞ」
ヒスイはペットボトルの蓋を開ける。カーテンが揺れて、暗くなった空が見えた。
「まず、向こうの世界についてね。あの世界は、ここの世界に馴染めなかった人たちの集まりの世界。いつからあの世界があるのかは知らない。あそこは、この世界から来た人もいれば元々向こう生まれの人もいる、って感じかなあ」
「つまり、この世界に溶け込めなかった人とか向こう生まれの人の世界ってことか」
「そうなの。それで向こうの世界の住人は皆一つ特殊能力を持ってる。個人個人で違うものをね」
「てことは変身できるのは、ヒスイの能力?」
「うーん。間違ってはない。けど、変身能力は私のママが持ってた能力かな」
「持っていた?」
「そう。ママは死んじゃったし」
思わず黙ってしまう。デリケートなところを聞いてしまったかもしれない。紛らわすように窓の方を見る。
「ああ、そんなに気を使わなくていいよ。だいぶ昔の頃のことだし。私はママから能力を貰ったの。だから、私の能力では無いかな」
「それだったらヒスイの特殊能力は何だよ」
「破壊、消滅かな。いろいろなことをなかったことにできる。物でも記憶でも何だってね」
少しヒスイと距離を取ってしまう。
「そんなに怖がんなくて大丈夫だよ。消すのだってそんなに簡単じゃないし、めぐるんのことなんて消さないよ」
「そういうなら、まあ」
元の場所に座り直す。でも、ヒスイはなかなか恐ろしいことをするかもしれない。少し警戒はしておこう。
「それで、君のオーラの話だね。これが一番大事だ。君を連れてきた理由でもある」