第27話 観光
「ここの通りは私がよく行く商店街。ここはなんでも売ってるんだよね」
ヒスイが指差したのは、ちらほらと人が見える通り。まるで自分の世界と変わらない。
「案外同じもんなんだな」
「能力の有無の違いだけで所詮は人だからね」
昔のことを思い出しているかのように、目を細めている。こっちの世界の人はまるで現世の人と違って、人と全く馴れ合わないような性格だと思っていたのに違うらしい。
「元の世界で馴染めないからこっちに来たのに、同じような空間を作ったら意味なくないか?」
「ここの世界の人たちは向こうの世界の人みたいに変に馴れ合ってきたり、無駄に人に立ち入ってこないの。お互いはぐれものだし、ある程度境界線が決まっていてここのほうがまだ心地が良いんだよ」
それなら元の世界でも場所を選べばよかったのではないだろうか。それとも能力を持つというのはそれだけで居づらくなるものなのだろうか。まあ、似た者同士は集まりやすいなんて言うし、そういうことなんだろう。だが、俺にはどうしてもこの光の足らなさがどうも肌に合わなそうだ。
「ところでここに売ってるものってどこから仕入れてるの?」
「この世界で採れるものもあるし向こうの世界から持ってきてるのもあるよ。向こうじゃ違法のものも普通に売ってるけど、それはこっちの世界でも高いよ」
「違法のものって薬とかか? はぐれものってそういう系統もあるのか」
「最近はね。昔はほとんどいなかったんだけど、ここ数年で増えてきた印象かな。まだここはマシは方だけど、私は変わったのがどうも悲しいよ」
ため息混じりにヒスイが話す。その姿にはまるで何十年も生きてきたかのような哀愁が漂っていた。
「前に言ってた世界を変えることの理由ってもしかして?」
「それは後で話そうかな。向こうに帰って落ち着いたらね。といっても縁のあるような思い出の場所はここくらいなんだよね」
「え? 追いかけられるくらい色々なところに行ってたんじゃないのか」
「行ったことは行ったけどほぼ記憶に残ってないよ。能力を得ることだけが目的だったからね。だから追手が何を因縁につけてきているかすらわからないよ」
あっけからんとそう言う。一体どのくらいの場所に行って、どのくらいの人と接して、どのくらいの殺人をしたのだろうか。ヒスイが死体の山の上に立っていることを改めて感じさせられ、笑っているヒスイが少し怖くなった。だが、それと同時にその山の上で冷静でいられるヒスイを尊敬していた。
「どうする? 他に行くところも無いから、向こうの世界に戻る?」
「啖呵切った割に平和な場所巡りだったな。少し日を浴びたくなったから戻るのがいい」
「わかったよ、めぐるん。じゃあ、また着いてきてね」
揚々と歩き出したヒスイの背中を、俺は追いかけた。




